書評

天平時代のパンデミック

黄金週間だが、どこにも行かず"Stay Home"中である。折角なので自宅にある本、特に感染症と歴史に関する書物を読み返している。 病が語る日本史 (講談社学術文庫) 作者:酒井 シヅ 発売日: 2008/08/07 メディア: 文庫 「病が語る日本史」(酒井シヅ著)は、病…

承久の乱 日本史のターニングポイント

日本史に関する国民の関心は昔から高く、テレビ、映画、小説などで繰り返し取り上げられている。ただし、戦国や幕末物に人気が集中することへの反省からか、新しい素材や新鮮な切り口を求める傾向が強まってきているように思える。例えば、応仁の乱 - 戦国時…

モラルの起源

今回は、クリストファー・ボーム著「モラルの起源」を紹介する。本書は、進化人類学者の著者が、「更新世後期タイプの(Late Pleistocene appropriate)」狩猟採集社会に住む「LPA狩猟採集民」の研究を軸に、道徳、良心、利他行動はどのように進化したのかを…

サイコパスの脳

前エントリーに引き続き、中野信子著「サイコパス」の話をする。サイコパス (文春新書)作者: 中野信子出版社/メーカー: 文藝春秋発売日: 2016/11/18メディア: 新書この商品を含むブログ (12件) を見る 中野信子氏は、共感性の欠如仮説の立場より、サイコパス…

あなたの隣のサイコパス

難しい脳科学をわかりやすく解説することで定評がある中野信子氏の著書「サイコパス」について紹介する。なお、本エントリーの表題「あなたの隣のサイコパス」は、本書の「はじめに」から引用したものである。サイコパス (文春新書)作者: 中野信子出版社/メ…

友達の数は何人?ダンバー数とつながりの進化心理学

ネットを見ていたら、人間心理学。人間はこういう風にできているということがわかる、25の心理学的事実 : カラパイアというエントリーが人気となっていた。 25の心理学的事実それぞれ興味をひくものばかりだが、そのなかで、NO.2にあげられている「友人の数…

野蛮な進化心理学

「殺人とセックスが解き明かす人間行動の謎」という扇情的な副題はついているが、人間行動の基本的な原則を丁寧に説明した良書である。重要と感じた点をメモする。野蛮な進化心理学―殺人とセックスが解き明かす人間行動の謎作者: ダグラス・ケンリック,山形…

幼少期という発明

「人類進化700万年の物語」という本を読んだ。著者のチップ・ウォルターは科学ジャーナリストであり、ヒト族に分類される人類のなかで、なぜ、私たちホモ・サピエンスだけが生き残れたのかということを、最新の研究結果をふまえ、分かりやすい語り口で紹介し…

「悪意の情報」や「ダメな科学」を見破る大まかな指針

科学的な装いをもった「デタラメ」な情報が飛び交っている。マスメディアの影響力は大きい。識者の意見で権威づけながら、あらかじめ描いていたストーリーに従って強引に結論に持っていくような番組、報道、雑誌が幅をきかせている。 インターネットで情報を…

「影響力の武器」にみる認知バイアス

「影響力の武器」を久しぶりに読んだ。内容が多岐にわたるため、頭の整理のために内容をまとめた。 【関連エントリー】 一流のプロは「感情脳」で決断する(2011年8月6日) ゼロリスク幻想が生まれる背景とリスクコミュニケーション(2011年11月22日) 影響…

ずる 嘘とごまかしの行動経済学

ダン・アリエリーの最新作、「ずる 嘘とごまかしの行動経済学」を読んだ。【関連エントリー】 「予想どおりに不合理」その1 「予想どおりに不合理」その2 製薬業界とのつきあい方 ずる 嘘とごまかしの行動経済学作者: ダンアリエリー,櫻井祐子出版社/メー…

ヒトの睾丸の大きさと育児との関係

睾丸の大きさと育児参加に関連性、「大きいほど良く」はない 米研究 写真1枚 国際ニュース:AFPBB Newsという記事を読んだ。 米エモリー大学(Emory University)の研究チームは、男性の睾丸の大きさを計測し、同じ男性たちの子育て習慣を調査した。 対象と…

リハビリテーションの歩み その源流とこれから

日本リハビリテーション医学会は創立50周年を迎え、先日、http://www.congre.co.jp/jarm2013/が行われた。その際、特別企画として、「記念すべき年1963年−日本リハ医学会創立をめぐって」という題で、上田敏先生の講演があった。講演の内容は、上田先生の最…

地震の日本史

本書に巻かれた帯に刻まれていた次の文言にひかれ、本書を購入した。 「平安時代に起きた東北巨大地震の18年後には、南海大地震が起きている!」 地震の日本史―大地は何を語るのか (中公新書)作者: 寒川旭出版社/メーカー: 中央公論新社発売日: 2011/05/01メ…

神社は警告する

「神社は警告する-古代から伝わる津波のメッセージ」という本が面白く、一気に読み終えてしまった。 【関連エントリー】 末の松山浪こさじとは(2013年4月13日) 浪分神社(2011年4月6日) 蛸薬師(2011年4月6日) 震災直後の2011年4月6日、神社の名前に託し…

山本覚馬失明の原因は白そこひ

先日放映されたNHK大河ドラマ「八重の桜」にて、主人公八重の兄山本覚馬が医師の診察にて白そこひと診断されていた場面があった。白そこひとは白内障のことである。禁門の変(1964年)での眼外傷が原因と暗示されている。Wikipediaを見ると、山本覚馬は1928…

脳からみた認知症

認知症患者が急増している。認知症はcommon disease である。転倒・骨折で入院する患者で、治療が長引く主要な原因は認知症である。肺炎などの内科疾患で入院する高齢者の多くに認知症がある。医師および関連職種が認知症に関する基礎的知識をどのように習得…

河原ノ者・非人・秀吉

服部英雄著「河原ノ者・非人・秀吉」を読んだ。【関連エントリー】 日本の歴史をよみなおす 畏怖と賎視(2012年8月18日) 河原ノ者・非人・秀吉作者: 服部英雄出版社/メーカー: 山川出版社発売日: 2012/05/01メディア: 単行本購入: 2人 クリック: 8回この商…

神経ネットワークからみた高次脳機能障害

石合純夫先生の講演「神経ネットワークからみた高次脳機能障害−言語と空間性注意の神経基盤と障害−」が面白かった。巣症状、functional MRI、tractographyなどの研究が進むなかで、興味深い知見が明らかになってきている。局在論とネットワーク論の論争は過…

講演「リハビリテーション医学におけるマネージメント」推薦書籍

第7回リハビリテーション専門医会学術集会において、藤田保健衛生大学の才藤栄一先生が「リハビリテーション医学におけるマネージメント」という題で教育講演を行った。推薦された書物をメモする。【関連エントリー】 講演「チームワークとリーダーシップ」…

ヤバい経済学

Amazonのお勧めで、「ヤバい経済学」という本を読んだ。ヤバい経済学 [増補改訂版]作者: スティーヴン・D・レヴィット/スティーヴン・J・ダブナー,望月衛出版社/メーカー: 東洋経済新報社発売日: 2007/04/27メディア: 単行本購入: 34人 クリック: 437回この…

実践!早期離床 完全マニュアル

脳卒中急性期リハビリテーションに関する実践的なテキストはないかと思っていたところ、Face book上で本書が勧められていたので、病院図書として購入した。実践!早期離床完全マニュアル―新しい呼吸ケアの考え方 (Early Ambulation Mook)作者: 曷川元出版社/…

日本の歴史をよみなおす 畏怖と賎視

網野善彦氏の「日本の歴史をよみなおす」という文庫本を読んだ。その中の、「畏怖と賎視」の章で被差別者に対する歴史的背景について興味深い論述がされていたので、まとめた。日本の歴史をよみなおす (全) (ちくま学芸文庫)作者: 網野善彦出版社/メーカー: …

脱原発、再生可能エネルギー中心の社会へ

日本環境学会会長和田武氏の講演を聞いた。脱原発、再生可能エネルギー中心の社会へ―福島原発事故を踏まえて日本の未来を考える作者: 和田武出版社/メーカー: あけび書房発売日: 2011/06/01メディア: 単行本 クリック: 4回この商品を含むブログ (2件) を見る…

医療従事者のための自動車運転評価の手引き

今年のリハビリテーション医学会で行われたシンポジウム「脳障害者の自動車運転」で言及されていた本を購入した。脳損傷者に対する自動車運転リハビリテーションに関するアメリカの研究書である。【関連エントリー】 脳障害者の自動車運転(2012年6月3日) …

伯牛の疾はハンセン病か?

下村湖人著「論語物語」をしばらくぶりに読んだ。論語物語 (講談社学術文庫)作者: 下村湖人出版社/メーカー: 講談社発売日: 1981/04/08メディア: 文庫購入: 12人 クリック: 70回この商品を含むブログ (50件) を見る 本書の中に「伯牛疾(やまい)あり」とい…

「疫病と世界史」

以前、本ブログでもとりあげたウィリアム・H・マクニールの「世界史」とジャレド・ダイアモンドの「銃・病原菌・鉄」がベストセラーとなっている。【関連エントリー】 「世界史」と「土の文明史」(2011年12月27日) 銃・病原菌・鉄(2010年5月2日) カナダ…

大規模災害リハビリテーション対応マニュアル

大規模災害リハビリテーション対応マニュアルが出版された。大規模災害リハビリテーション対応マニュアル作者: 東日本大震災リハビリテーション支援関連10団体『大規模災害リハビリテーション対応マニュアル』作成ワーキンググループ出版社/メーカー: 医歯薬…

スティグマの社会学

スティグマという言葉を学術用語として初めて用いたアーヴィング・ゴッフマン著「スティグマの社会学」を読んだ。スティグマの社会学―烙印を押されたアイデンティティ作者: アーヴィングゴッフマン,Erving Goffman,石黒毅出版社/メーカー: せりか書房発売日:…

仙台ぐらし

仙台在住の人気作家、伊坂幸太郎の新著「仙台ぐらし」が、地元出版社荒蝦夷から発行された。仙台ぐらし作者: 伊坂幸太郎出版社/メーカー: 荒蝦夷発売日: 2012/02メディア: 単行本 クリック: 8回この商品を含むブログ (27件) を見る 荒蝦夷の雑誌「仙台学」連…