神経ネットワークからみた高次脳機能障害

 石合純夫先生の講演「神経ネットワークからみた高次脳機能障害−言語と空間性注意の神経基盤と障害−」が面白かった。巣症状、functional MRI、tractographyなどの研究が進むなかで、興味深い知見が明らかになってきている。局在論とネットワーク論の論争は過去のもので、両者が統合され論じられる時代となっているという感想を抱いた。
 例えば、Brocaが報告した症例は脳標本が保存されているが、MRIなどを用い詳しく検討すると、Broca野だけでなく、より広い範囲で深部まで及んでいることがわかる。発語失行が関係する中心前回、発話の自発性低下をもたらす補足運動野からのネットワークの障害が示唆されており、皮質領域の障害と神経ネットワークの障害が、総体としてBroca型失語症の症状をもたらしているとのことだった。
 講演では、失語症の病型ごとの違いや、右半球損傷に伴う左半側無視についても詳しい説明がなされた。左半側無視に関しては、角回・縁上回(下頭頂小葉)、下前頭回後部とそれらを結ぶ上縦束III、下前頭後頭束が重要との指摘がされた。
 講演の内容については、下記書籍に詳しく説明されているとのことだった。明快なわかりやすい講演であり、本書を購入して、復習をすることにしたい。


高次脳機能障害学第2版

高次脳機能障害学第2版


 なお、来年度の専門医会は、石合純夫先生が主催者となり、11月9日、10日に札幌で行われる。こちらも楽しみである。