脳からみた認知症

 認知症患者が急増している。認知症はcommon disease である。転倒・骨折で入院する患者で、治療が長引く主要な原因は認知症である。肺炎などの内科疾患で入院する高齢者の多くに認知症がある。医師および関連職種が認知症に関する基礎的知識をどのように習得するのが問題となっている。

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 本書は、脳神経外科専門医であり、かつ、認知症サポート医でもある著者が、各地の講演会での認知症に関する話をした経験をふまえてまとめたものである。認知症を「脳の病気」としてとらえることで、医療関係者や家族が、認知症を診断や治療の対象として向き合う姿勢が生まれることを強調している。脳の機能、認知症の概念と分類、主要症状(記憶障害、気分や感情の障害、見当識障害、行動・心理症状)、診断、治療とリハビリテーションなどが平易に記載されている。初心者にとって、格好の入門書といえる。既に、認知症をある程度勉強している者にとっても頭の整理となる。認知症の全体像をわかりやすくまとめた好著である。