福岡空港の小型機専用車椅子リフト

 日本リハビリテーション医学会学術集会から帰る際、福岡空港で車椅子搭乗用リフトの使用場面に遭遇した。

小型機専用車椅子リフト

 バリアフリー:公共交通関係のガイドライン - 国土交通省内に公共交通機関の旅客施設・車両等・役務の提供に関する移動等円滑化整備ガイドラインバリアフリー整備ガイドライン)がある。このガイドラインの旅客施設編、第3部 個別の旅客施設に関するガイドライン4.航空旅客ターミナルに航空機旅客搭乗橋が物理的制約のため利用できない時の代替設備例が掲載されている。

空旅客搭乗用の代替設備の例

 福岡空港で見たのは、小型機専用車椅子リフトである。なお、このリフトにはJALのロゴが載っているが、使用されていたのはANA系列の飛行機である。会社の枠を超えて利用されている。

 東京パラリンピックに向けて準備する過程で、バリアフリー化が推進された。車椅子ユーザーの飛行機搭乗問題もそのひとつである。福岡空港の場合、発着便数がかなり多いため小型機の搭乗には旅客搭乗橋が使用できないことが少なからずある。その場合、バスでターミナルの外れまで移動しタラップを昇降し小型飛行機に登場する必要があるが、この小型機専用車椅子リフトが大活躍している。

 

 飛行機の出発時、車椅子用リフトも一緒にお見送りをしてくれていた。空港スタッフの一員として誇り高く働いているかのように見えた。

2022年の超過死亡、大幅に増加

 超過死亡に関し、以下の内容で共同通信が記事を配信した。

 ギョッとする内容の見出しである。「厚生労働省に新型コロナ対策を助言する専門家組織の会合」とあったので、新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボードの資料等(第101回以降)|厚生労働省のことと判断し、元の資料を探してみたところ、第120回新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボード(令和5年4月5日)の資料3-2 鈴木基先生提出資料、80〜98ページに超過死亡に関するデータがあった。その中で、84ページの表が記事の元ネタであることがわかった。

 2022年の超過死亡数は、47330-113399と記載されている。記事本文を読むと、「超過死亡」が、2022年に最大約11万3千人に上ったとの推計、とある。この記載自体は間違いではない。しかし、見出しには「最大」の文字がない。なぜ「最大」というたった2文字を節約したのか。見出しをセンセーショナルにして閲覧数を稼ぐことを意図しているのであれば姑息である。

 

 おおまかな傾向を把握するために超過死亡予測値の中央値を並べると、次のようになる。

 さらに、超過死亡予測値と過少死亡予測値の中央値の差分を見ると、以下のとおりになる。

 

 新型コロナウイルス感染拡大以前から超過死亡があることがわかる。下記関連エントリーにも触れたが、インフルエンザで超過死亡が発生することが知られている。この20数年間で最も超過死亡が多かったのは、1998/1999年シーズンの35,000人超である。学童に対するインフルエンザ予防接種が任意接種になったことが要因と考えられている。その後、高齢者に対するインフルエンザワクチンが開始されたことや、医療機関・高齢者施設における感染対策が奏功し、最近は減少していた。

 2017〜2019年の超過死亡数と過少死亡の差分は、近年のインフルエンザによる超過死亡予測値と大差はない。

 一方、新型コロナウイルス感染拡大後を見ると、2020年は過少死亡数の方がかなり多くなっている。2021年は1998/1999年と匹敵する水準となり、2022年は大幅に凌駕している。

 死因ごとのデータを見ると、さらに興味深いことがわかる。老衰が増えている。

 感染者数が爆発的に増え、高齢者施設でクラスターが発生し、そのことを契機として体調を崩し亡くなるといった場合、新型コロナウイルスが死因と判定されず、老衰という病名で死亡診断書が記載されているのではないかと推測する。

 データからわかる-新型コロナウイルス感染症情報-オープンソースを見ると、各年の死亡者数は以下のとおりである。

  • 2020年 3,459人
  • 2021年 14,926人(累計 18,385人)
  • 2022年 38881人(累計 57,266人)
  • 2023年4月6日まで 16763人 (累計 74,029人)

 超過死亡のデータと比較すると、2021年、2022年とも、新型コロナウイルス感染を死因とする者の約2倍の超過死亡を認める。2023年の死亡者数増加のペースは2022年を上回っていることを計算に入れると、今年の超過死亡はさらに増えることになると予測せざるをえない。

 

令和4年診療報酬改定説明資料に見る疾患別リハビリテーション料の見直し

 厚労省のHP内に、令和4年度診療報酬改定についてのサイトが設けられた。2.令和4年度診療報酬改定説明資料等についてにPDF資料がまとめられている。

 同資料、12  令和4年度診療報酬改定の概要 個別改定事項Ⅲ(小児・周産期、がん・疾病・難病対策、リハビリテーション)【2,666KB】に疾患別リハビリテーション料の見直しに関する資料がある。

 

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 まず取り上げられたのが、標準的算定日数超えた場合におけるFIM測定の要件化である。1ヶ月に1回以上FIMを測定したうえで、報告が義務づけられた。

 「特掲診療料の施設基準及びその届出に関する手続きの取扱いについて」の「別添2」の様式は、2.令和4年度診療報酬改定説明資料等について、第3関連法令等(4)2 特掲診療料の施設基準等及びその届出に関する手続きの取扱いについて(通知)、令和4年3月4日 保医発0304第3号、PDF[16,761KB]にある。

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 ちなみに、FIMの点数のつけ方の例で126点満点で1点→2点になっているが、FIM総計最低点が18点であることを知らない者が作ったことがわかる。

 回復期リハビリテーション病棟に入院中の患者に関しては、FIM測定は容易だが、外来患者は難しい。さらに、FIMの改善が認められない場合には、減点・返戻の対象になり得る。算定日数上限患者に対し、医療保険を用いた疾患別リハビリテーションを差し控えることを意図した改定である。

 

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 リハビリテーション計画書等のサインについては、患者の家族が遠方に住んでいる等の理由について署名を求めることが困難の場合、説明と同意の内容を診療録に記載すれば、初回をのぞき署名を求めなくても構わないことになった。

 

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 運動器リハビリテーション料に、糖尿病性足病変等も含まれることになった。脳血管疾患等リハビリテーション料の場合には糖尿病性神経障害でリハビリテーションを行うことが多いが、運動器リハビリテーション料しか届出していない医療機関でも対応できることになった。

 

令和4年診療報酬改定説明資料に見る地域包括ケア病棟入院料・入院医療管理料の見直し

 厚労省のHP内に、令和4年度診療報酬改定についてのサイトが設けられた。2.令和4年度診療報酬改定説明資料等についてにPDF資料がまとめられている。

 

 地域包括ケア病棟入院料の見直しは、下記エントリーで取り上げた。

 

 地域包括ケア病棟入院料に関し、04  令和4年度診療報酬改定の概要 入院Ⅱ(回復期・慢性期入院医療)【2,874KB】内で次のようにまとめられている。

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 青字・下線の部分が変更された箇所である。回復期リハビリテーション病棟入院料と比べると変更箇所が多い。

 重症度、医療・看護必要度I、同IIがそれぞれ、14%→12%、11%→8%になっているが、評価項目の見直しに伴うものである。

 実績要件のうち、自宅等から入棟した患者割合及び自宅等からの救急患者の受入数の見直しも大きいが、なんと言っても、在宅復帰率が70%以上から72.5%に微妙に上がったことが厳しい。

 

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 実績要件が厳しくなった埋め合わせの意味もあると思うが、初期加算は引き上げとなっている。

令和4年診療報酬改定説明資料に見る回復期リハビリテーション病棟入院料の見直し

 厚労省のHP内に、令和4年度診療報酬改定についてのサイトが設けられた。2.令和4年度診療報酬改定説明資料等についてにPDF資料がまとめられている。

 

 回復期リハビリテーション病棟入院料の見直しは、下記エントリーで取り上げた。


 回復期リハビリテーション病棟入院料に関し、04  令和4年度診療報酬改定の概要 入院Ⅱ(回復期・慢性期入院医療)【2,877KB】内で次のようにまとめられている。

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  入院料6が入院料5にまとめられただけでなく、新たに入院料5の算定を開始した場合には2年間に限り算定できるとなっている。すなわち、2年以内には実績要件を満たし入院料1〜4のいずれかに移行しなければならない。

 

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 今回の変更箇所は青字・下線の部分である。新規入院患者のうちの重症患者の割合が引き上げられたことが最大の変更点である。

 その他、回復期リハビリテーションを要する状態について、「急性心筋梗塞狭心症発作その他急性発症した心大血管疾患又は手術後の状態」が加わったこと、特定機能病院リハビリテーション病棟入院料が新設されたことに関する資料がある。

地域包括ケア病棟・病床の主な対象は整形外科疾患

 地域包括ケア病棟入院料・入院医学管理料の調査において、主な対象は整形外科疾患であることが明らかになった。

 中央社会保険医療協議会(中央社会保険医療協議会総会) |厚生労働省、第489回(2022年9月22日)資料総-2-2(PDF:16,913KB)に、次のようなグラフがある。

 

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 全体をみると、大腿骨転子部骨折・大腿骨頚部骨折が多く、あわせて26.2%となっている。ついで、腰椎圧迫骨折が13.0%となっている。腰部脊柱管狭窄症も9.2%となっており、約半数が整形外科疾患である。自宅等と一般病棟とを比べてみると、大腿骨転子部骨折・大腿骨頚部骨折は一般病棟からの移動が、腰痛圧迫骨折は自宅等からが多い。地域包括ケア病棟・病床でも手術・麻酔は出来高払いとなっているためか、大腿骨転子部骨折・大腿骨頚部骨折でも直接自宅から入院するものも少なからずいる。

 誤嚥性肺炎・肺炎、うっ血性心不全・慢性心不全、尿路感染症廃用症候群といった病名が残りを占める。治療後の廃用症候群に相当する群である。なお、脳血管障害はこのリストには含まれておらず、きわめて少数と推測する。

 

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 回復期リハビリテーション病棟の疾患構成の年次推移は上図のとおりである。脳血管系は減少傾向にあるが約45%となっている。整形外科系とあわせ、90%以上を占めている。

 上記2つの調査結果をみると、回復期リハビリテーションが必要な患者のうち、脳血管系患者は回復期リハビリテーション病棟へ、整形外科系は回復期リハビリテーション病棟と地域包括ケア病棟・病床へ分かれて移動している現状がわかる。

 

 それでは、回復期リハビリテーション病棟と地域包括ケア病棟・病床が両方ある病院の場合、整形外科疾患をどのように割り振るのが適切なのだろうか。両者の大きな違いは、疾患別リハビリテーション料が出来高かどうかということと入院期間の上限である。

 地域包括ケア病棟・病床では、疾患別リハビリテーション料が包括となっている。病棟全体で平均して1日2単位以上行うことが求められているが、この数値を大きく超えて実施されることは経営上困難である。入院期間の上限も、回復期リハビリテーション病棟で骨折術後が90日であるのに対し60日となっている。したがって、疾患別リハビリテーション料を集中的に行う必要がある患者は利用しにくく、次のような両極端の群が対象となる。

  • 受傷前自立度が高い。手術後早期にリハビリテーションを開始でき、認知機能が保たれていて自主訓練も可能である。
  • 受傷前自立度がベッドサイドレベル以下で、歩行が自立していない。リハビリテーション効果が期待できず、ベッド上要介助レベルにとどまる。

 一方、運動機能や認知機能に低下していて屋内生活レベルだった高齢者が、尻もちのような軽度外力で大腿骨頚部骨折を起こした場合、再転倒対策も含めリハビリテーションに時間や手間がかかる。このような患者はやはり回復期リハビリテーション病棟の方が望ましい。

 上記のような患者の割振りは、紹介元医療機関でも考慮すべきである。ただし、急性期病院で在院日数短縮化が迫られている状況からすると、集中的なリハビリテーションが必要な患者も包括性病棟に転院となってしまう可能性がある。なかなか難しい問題である。

地域包括ケア病棟入院料の要件厳格化

 今回は、2022年度診療報酬改定の中医協答申のうち、地域包括ケア病棟入院料に関わる改定内容について検討する。中央社会保険医療協議会(中央社会保険医療協議会総会) |厚生労働省の第516回(2022年2月9日)資料総-1(PDF:4,287KB)に個別改定項目についてがある。また、総-2別紙1-1(PDF:5,107KB)に医科診療報酬点数表がある。地域包括ケア病棟入院料に関しては、総-1(PDF:4,287KB)、63〜76ページに該当する改定項目が示されている。

 まず、中央社会保険医療協議会(中央社会保険医療協議会総会) |厚生労働省、第489回(2022年9月22日)資料総-2-2(PDF:16,913KB)より、病床数の推移に関するグラフと地域包括ケア病棟入院料及び入院医療管理料に概要に関する表を引用する。

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 地域包括ケア病棟入院料・入院医療管理料を算定する病床が急速に拡大していることがわかる。特に許可病床数400床以上の医療機関を対象とする入院料2の占める割合が大きい。

 

1. 在宅復帰率の要件の変更

 在宅復帰率に関しては、中央社会保険医療協議会 (中央社会保険医療協議会診療報酬調査専門組織(入院医療等の調査・評価分科会))|厚生労働省、第4回(2022年7月8日)資料入-1(PDF:6,316KB)にある図がわかりやすい。

 

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 この在宅復帰率が、次のように変更されている。

・ 入院料・管理料1及び2: 70%以上 → 72.5%以上

・ 入院料・管理料3及び4: 要件なし → 70%以上(要件を満たしていない場合は90/100に減算)

 

2.自院の一般病棟からの転棟した患者割合に係る要件の変更

・ 入院料2及び4において、許可病床数400床以上の医療機関において60%未満であること → 許可病床数200床以上の医療機関に拡大(要件を満たしていない場合は90/100に減算 → 85/100に減算)

 

3.自宅等から入院した患者割合などの実績要件の変更

・ 入院料・管理料1及び3: 自宅等から入院した患者割合15%以上 → 20%以上、自宅等からの緊急の入院患者の3月の受入れ人数について、6人以上 → 9人以上(10床未満の場合は、3月で6人以上 → 8人以上)

・ 入院料・管理料2及び4: 以下のいずれか1つ以上を満たすことを追加する。

 ア 自宅等から入棟した患者割合が2割以上であること

 イ 自宅等からの緊急患者の受入れが3月で9人以上であること

 ウ 在宅医療等の実績を1つ以上有すること

(要件を満たしていない場合は90/100に減算)

・ 在宅医療等の実績における退院時共同指導料2の算定回数の実績の要件について、外来在宅共同指導料1の実績を用いてもよいこととする。

 

4.入退院支援加算1に係る届出要件追加

・ 入院料・管理料1及び2: 許可病床数が 100 床以上のものについて、入退院支援加算1に係る届出を行っていない場合はは90/100に減算

 

5.救急対応要件の追加

 一般病床において地域包括ケア病棟入院料又は地域包括ケア入院医療管理料を算定する場合については、第二次救急医療機関であること又は救急病院等を定める省令に基づき認定された救急病院であることを要件とする。ただし、200 床未満の保険医療機関については、当該保険医療機関に救急外来を有していること又は 24 時間の救急医療提供を行っていることで要件を満たすこととする。

 

6.急性期患者支援病床初期加算及び在宅患者支援病床初期加算についての見直し

・ 急性期患者支援病床初期加算: 150点(14日限度)→ 400床以上 150点(ないし50点)、400床未満 250点(ないし125点)

・ 在宅患者支援病床初期加算: 300点(14日限度)→ 老健から 500点、介護医療院・特養・軽費老人ホーム・有料老人ホーム・自宅から 400点

 

7.療養病床ベースの地域包括ケア病棟入院料・入院医療管理料引き下げ

 地域包括ケア病棟入院料・入院医療管理料を算定する病棟又は病室に係る病床が療養病床である場合には、所定点数の 100 分の 95 に相当する点数を算定することとする。ただし、当該病棟又は病室について、自宅等からの入院患者の受入れが6割以上である場合、自宅等からの緊急の入院患者の受入実績が前三月で 30 人以上である場合又は救急医療を行うにつき必要な体制が届出を行う保険医療機関において整備されている場合においては、所定点数(100 分の 100)を算定する。

 

 地域包括ケア病棟入院料・入院医療管理料算定病床は、自院で急性期医療を終えた患者の受け皿として使われていることが多い。今回の改定の狙いは、自宅や介護施設からの重症度が比較的低い急性期患者を治療する病床としての機能を強化することにある。今回改定された各種要件は達成困難なレベルではない。急性期患者支援病床初期加算及び在宅患者支援病床初期加算の引き上げもあり、厚労省の思惑に乗った形での運用を転換する医療機関が増えるものと予測する。