有料職業紹介事業を利用して転職を考えている医療従事者が読むべき提言

 有料職業紹介事業紹介事業を利用して、転職活動を行う医師や看護職などの医療従事者が増えている。四病協のうごき:お知らせ | 公益社団法人全日本病院協会から、日本医師会・四病院団体協議会 有料職業紹介事業に関するワーキンググループ報告書~医療分野における人材確保と有料職業紹介事業等の適正化に向けた提言~(日本医師会・四病院団体協議会:2026.3)という提言が出された。なお、同じ文書が、日本医師会プレスリリース、日本医師会・四病院団体協議会有料職業紹介事業に関するワーキンググループ報告書~医療分野における人材確保と有料職業紹介事業等の適正化に向けた提言~ | 日医on-lineに掲載されている。

 

 背景として、はじめにの部分に次のような記述がある。

医療界では、2010 年代初めより、有料職業紹介事業の高額な紹介手数料やお祝い金の提供による早期転職勧奨等の不適切行為を一貫して問題として取り上げ、厚生労働省に対して実態調査の実施や是正の申し入れを行ってきた。一方で、医療・介護現場は慢性的な人手不足にあり、課題があることを認識しつつも、確実性・即応性の点で有料職業紹介事業等を利用せざるを得ない状況が続いている。人材確保の一手段として一定の役割を果たしているが、必ずしも長期的な定着につながっているとは言い難い。

現在、 医療機関の経営は物価高騰や人件費の上昇等により極めて逼迫し、 かつてない危機的状況に直面している。有料職業紹介事業等にかかる高額な紹介手数料は経営悪化に拍車をかけ、 医療機関の持続性を揺るがしかねないほど大きな負担となっている。 現場からは、対応を求める切実な声が相次いでいる。診療報酬という公定価格の仕組みの中では、 十分な処遇改善ができず、 他分野への人材流出が加速している。さらに診療報酬収入の中から有料職業紹介の手数料を支払うことで、十分な賃上げが困難となり、さらなる離職や採用難を招く悪循環に陥りかねない。

 

 具体的な状況として、次の図が示されている。

 

 医師が転職活動を行う理由としては、スキルアップや専門医取得、家庭の事情(結婚、転居など)などやむを得ないものもあるが、激務の緩和、給料への不満など個人的な要件によるものもある。後者の場合、求人側の医療機関とのミスマッチが生じ、早期離職につながることも少なくない。厚生労働省の委託事業として運営されている 「医療・介護・保育分野における適正な有料職業紹介事業者の認定制度」では、早期離職に対する返戻金制度を有することを認定の必須要件としているが、不十分な額にとどまっている。

 

 対策として、日本医師会ドクターバンク | 医師のための無料求人紹介・相談窓口などが紹介されている。ただし、様々な問題があり、病院団体および日本医師会が全国規模で無料・低額の職業紹介事業を新規に実施することは現段階では困難であるという判断になっている。

 

 具体的な対応・提言としては、以下の項目があげられている。

  1. 高額な紹介手数料への緊急的対応

    • 紹介手数料の上限規制の導入

    • 返戻金制度の義務化及び返戻水準の標準化

      • 離職リスクを紹介事業者が適切に分担する仕組みが必要

    • 定着期間に応じた手数料体系の導入(成果型報酬体系)

  2. サービスの質の向上および法令の遵守

    • 高額な紹介手数料に見合った質の高いサービスの提供(マッチング精度の向上)

    • 転職勧奨の禁止と広告ガイドラインの整備

    • 職業安定法上の手数料明示義務の実効性確保

      • 求職者に対し、求人側が支払う手数料率や金額について、個別かつ具体的な金額を記載し、提示することを義務付ける。

  3. 違反や不適切事例に対する指導監督の強化、さらなる情報公開の推進

    • 定期的な指導監督の実施、悪質事例の公表

    • 手数料実績の公表対象の拡大

    • 離職者数のさらなる見える化

  4. 事業者の選別・淘汰につながる活動

    • 「医療・介護・保育分野における適正な有料職業紹介事業者の認定制度」の認知度向上と実効性強化

  5. 求職者に無料職業紹介を活用してもらうために

    • 医療機関が負担する紹介手数料の現状と理解促進

      • 求職者に対して、 医療機関が高額な紹介手数料を負担しており、 そのことが経営を圧迫している実態があること、さらに、保険料や税金を財源とする医療機関の収入は、本来医療機器の導入や職員の処遇改善等に充てられるべきものであることを、 広く広報することが重要である。

        その上で、 ハローワーク等の無料職業紹介事業を利用することが、 医療機関の負担軽減のみならず、 医療現場全体の持続性の確保につながる選択肢であることについて、 理解を深めてもらう必要がある。

    • 有料職業紹介事業者等を通じて不採用になった場合の不利益

    • ハローワーク、日本医師会ドクターバンク、都道府県ナースセンター等の広報の強化

    • 医療機関がすべきこと

    • 学生の就職活動について

 

 制度的な問題への対応には時間がかかる。当面なすべきことは、有料職業紹介事業の”闇"の部分を求職者が知ることができるようにすることである。医療業界の人手不足につけ込み暴利を貪る有料職業紹介事業者はハゲタカのような存在である。医療制度を守る意味で、有料職業紹介事業を安易に利用しないように心がけることも医療従事者の倫理的な責務である。

 なお、私は、有料職業紹介事業を通じて求人があった時に、最初に見るのは頻回に転職を繰り返していないかどうかである。1年前に現在の病院に採用されたにも関わらず、また、求人活動をしている場合には、その医師に問題があるか、病院側の責任かはわからないが、少なくとも長続きはしないだろうと考え、門前払いをすることにしている。求人側から選別される可能性があることをふまえて、無料紹介事業を利用するなり、病院のHPを見て直接面接を申し込んだ方が良い場合があることを、求人側も心すべきである。

 

 

 

急性期病院B一般入院料+急性期総合体制加算5が設定された背景

 ある急性期病院において、今回の診療報酬への対応として、急性期病院B一般入院料+急性期総合体制加算5を算定するということを聞いた。回復期リハビリテーション病棟病床数が1割を超えると急性期総合体制加算は算定できない - リハ医の独白でも指摘したが、許可病床数の1割を超える回復期リハビリテーション病棟を持っている場合、急性期病院A一般入院料をとれたとしても、急性期総合体制加算を算定できないことを理由としてあげていた。一方、急性期病院B入院一般料においては、一般病床数の割合に関する規定はなく、急性期総合体制加算5のみは取得できる。入院料は下がるが、看護・多職種協働加算が取れるから大丈夫とのことだった。

 

 

 

 看護・多職種協働加算については、看護・多職種協働加算では疾患別リハビリテーション料は算定不可 - リハ医の独白では、疾患別リハビリテーション料など特掲診療料が算定できないから普及しないだろうと述べた。しかし、この加算の対象となる職種には看護職員も含まれている。したがって、もともと7対1看護を算定していたところは看護職員を当てるから問題ないという理屈である。それは、多職種協働ではないのではないかと思ったが心の中にしまいこんで反論はしなかった。

 

 

 2025年12月12日に行われた中央社会保険医療協議会 総会(第635回) 議事次第|厚生労働省総-3入院について(その8)[PDF形式:1.9MB]別ウィンドウで開くでは、急性期総合体制加算5が設けられた背景が述べられている。

 

 人口規模の大きな二次医療圏では救急搬送件数も多く、急性期充実体制加算や総合入院体制加算を取得している病院が多い。一方、人口規模の小さな二次医療圏では地域シェア率は高いが、急性期充実体制加算や総合入院体制加算を取得できていない。

 このような状況を勘案して、急性期総合体制加算5が設定されている。

 

 今回の診療報酬改定資料においても、急性期総合体制加算5の説明として、人口20万人未満の二次医療圏で、一定の総合性・集積性を有し、地域での拠点的な役割を担う病院に配慮した要件を設定、とある。

 今回の改定後、人口規模の大きい医療圏において、急性期病院B一般入院料+急性期総合体制加算5を算定する病院が多くなった場合、当初の意図と異なると判断され、絞り込みが行われる可能性がある。例えば、遅くとも2028年までに急性期拠点機能を報告する医療機関を決定 - リハ医の独白で指摘したように、急性期拠点病院の数については20-30万人に1医療機関を目安とするとなっていることをふまえ、大規模医療圏では、急性期病院B一般入院料を算定不可とする、ないし、急性期総合体制加算5を算定不可とするような規制が行われるおそれがある。

 

 私としては、高齢者救急・地域急性期機能を担う病院に関しては、急性期一般入院料1+包括期病棟(特に地域包括医療病棟)が推奨されるのではないかということを伝えた。どちらが正しかったかは、2年後の診療報酬改定時には明らかになる。

 

 

歯科医療機関との連携の推進

 歯科医療機関との連携に診療報酬がついた。

 令和8年度診療報酬改定説明資料等について|厚生労働省06_令和8年度診療報酬改定の概要 6.入院(共通事項)[2.4MB]別ウィンドウで開くにおいて、次のように紹介されている。

 

 

 令和8年度診療報酬改定について|厚生労働省基本診療料の施設基準等及びその届出に関する手続きの取扱いについて(令和8年3月5日保医発0305第7号)[15.8MB]別ウィンドウで開くの139ページに施設基準が記載されている。なお、医科点数表[4.0MB]別ウィンドウで開くの76ページに次のような記述があることに注意が必要である。

(4) 当該保険医療機関と特別の関係にある歯科医療機関による歯科訪問診療が行われた場合は、算定できない。

 関連歯科医療機関に訪問歯科診療をお願いしている場合には算定できないのはいささか残念である。

異なる区分の回復期リハビリテーション病棟入院料の組み合わせの要件

 以前、回復期リハビリテーション病棟収益最大化の条件 - リハ医の独白という話題を出した。回復期リハビリテーション病棟入院料1の施設基準が厳しくなったので、複数ある回復期リハビリテーション病棟入院料1のうちひとつを回復期リハビリテーション病棟入院料2にしたいという相談があった。

 

 令和8年度診療報酬改定説明資料等について|厚生労働省04_令和8年度診療報酬改定の概要 4.包括期・慢性期入院医療[1.9MB]別ウィンドウで開くを見ると、回復期リハビリテーション病棟入院料の施設基準は図のように変更されている。

 

 

 この図を見ると、重症患者割合が同じなら、実績指数が上がりにくい患者を実績指数要件が緩い入院料2に集中させたくなる気持ちはわかる。しかし、入院料1と入院料2は組み合わせできないルールが以前からある。

 

 令和8年度診療報酬改定について|厚生労働省基本診療料の施設基準等及びその届出に関する手続きの取扱いについて(令和8年3月5日保医発0305第7号)[15.8MB]別ウィンドウで開くの254ページに次のような記述がある。

異なる区分の回復期リハビリテーション病棟入院料を組み合わせて届出を行う場合にあっては、別表1のいずれかに該当する組み合わせであること。

 入院料1と入院料3の組み合わせは可能だが、大幅なダウンとなる。頑張って、複数の入院料1を維持するように努めなければならないことを肝に銘じておかなければならない。

 

栄養保持を目的とした医薬品の経口投与では処方箋とレセプトコメントへの記載が必要

 栄養保持を目的とした医薬品を経管栄養ではなく経口摂取として投与することは、目的外使用だがしばしば行われていた。今回の診療報酬改定において適正化が行われた。

 令和8年度診療報酬改定説明資料等について|厚生労働省14_令和8年度診療報酬改定の概要 14.重点的な対応が求められる分野(医薬品適正使用)[1003KB]別ウィンドウで開くを見ると、次のようになっている。

 

 

 必要な栄養を食事により摂取することが困難な患者である場合その他これに準ずる場合であって、医師が当該栄養保持を目的とした医薬品の投与が必要であると判断した患者に投薬する場合は、その理由を処方箋と診療報酬明細書へ記載することが必要となる。

 処方箋を記載する場合、「摂食・嚥下機能障害により低栄養状態となっているため、栄養保持目的で投与」、「認知症による拒食により低栄養状態となっているため、栄養保持目的で投与」といった文言をコメント欄に記載するといった工夫が求められる。

 

急性期病院入院一般料では介護保険施設からの救急搬送は実績から除外

 急性期病院入院一般料では介護保険施設からの救急搬送は実績から除外される。

 令和8年度診療報酬改定について|厚生労働省基本診療料の施設基準等及びその届出に関する手続きの取扱いについて(令和8年3月5日保医発0305第7号)[15.8MB]別ウィンドウで開く、58〜59ページ、「4の 10 急性期病院一般入院基本料及び急性期病院精神病棟入院基本料における急性期医療に係る実績について」の内容を抜粋する。

 

(1) 急性期病院A一般入院料及び急性期病院A精神病棟入院料を算定する病院における、急性期医療に係る実績として、救急用の自動車又は救急医療用ヘリコプターによる搬送件数が、年間で 2,000 件以上であり、かつ、全身麻酔による手術件数が年間で 1,200 件以上であること。

 

(略)

 

(3) 介護老人福祉施設、介護老人保健施設及び介護医療院(以下この項において「介護保険施設」という。)に入所中の患者の救急搬送に関しては、(1)及び(2)の搬送件数に算入しない。ただし、以下のいずれかに該当する場合には、算入することができる。

ア 介護保険施設が協力医療機関に連絡した結果、当該協力医療機関において受入が困難(連絡が取れなかった場合を含む。)であり救急要請した場合

イ 「傷病者の搬送及び受入れの実施に関する基準」に基づく救急搬送の受入れの場合

ウ 急性期病院A又はBで救急搬送受入後3日以内に当該協力医療機関に転院した場合

 

 介護保険施設からの救急搬送は、包括期病床を持つ協力医療機関への搬送がまず求められる。急性期病院入院一般料を算定している病院から介護保険施設からの救急搬送が断られる可能性があることをふまえて対応する必要がある。

回復期リハビリテーション病棟病床数が1割を超えると急性期総合体制加算は算定できない

 以前、急性期拠点機能を有する病院絞り込みの前倒し - リハ医の独白で急性期総合体制加算の話題を取り上げた。

 

 

 本表では、併届出等に係る案件として、「一般病棟の病床数の合計が、当該医療機関の許可病床数の総数から精神病棟入院基本料等を除いた病床数の9割以上」と記載されている。

 令和8年度診療報酬改定について|厚生労働省基本診療料の施設基準等及びその届出に関する手続きの取扱いについて(令和8年3月5日保医発0305第7号)[15.8MB]別ウィンドウで開くの85〜86ページに該当する記述がある。

 

(8) 「A100」一般病棟入院基本料(急性期病院一般入院基本料に限る。)、「A300」救命救急入院料、「A301」特定集中治療室管理料、「A301-2」ハイケアユニット入院医療管理料、「A301-3」脳卒中ケアユニット入院医療管理料、「A301-4」小児特定集中治療室管理料、「A302」新生児特定集中治療室管理料、「A303」総合周産期特定集中治療室管理料、「A303-2」新生児治療回復室入院医療管理料、「A305」一類感染症患者入院医療管理料及び「A307」小児入院医療管理料(以下この項目において「一般病棟」という。)の病床数の合計が、当該医療機関の許可病床数の総数から「A102」結核病棟入院基本料、「A103」精神病棟入院基本料、「A106」障害者施設等入院基本料(7対1入院基本料及び10対1入院基本料に限る)、「A311」精神科救急急性期医療入院料、「A311-2」精神科急性期治療病棟入院料、「A311-3」精神科救急・合併症入院料、「A311-4」児童・思春期精神科入院医療管理料及び「A318」地域移行機能強化病棟入院料を除いた病床数の9割以上であること。

 

 上記施設基準をみると、一般病棟の病床数の合計にも除外される病床数にも、回復期リハビリテーション病棟入院料は入っていない。したがって、許可病床数の1割を超える回復期リハビリテーション病棟を持っている場合、急性期病院A一般入院料をとれたとしても、急性期総合体制加算を算定できない。例えば、350床の許可病床数で45床の回復期リハビリテーション病棟があれば算定不可となる。このような病院では、急性期総合体制加算をとろうとすると、回復期リハビリテーション病棟病床数を削減する必要が出てくる。