要介護5大要因のなかで認知症の割合が増加中

 国民生活基礎調査|厚生労働省において、3年に1回、要介護者の状況に関する調査が行われている。

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 平成10年(1998年)から平成22年(2010年)までの5回分のデータ(厚生労働省平成13年国民生活基礎調査の概況厚生労働省:平成16年国民生活基礎調査の概況厚生労働省:平成19年国民生活基礎調査の概況の訂正について平成22年国民生活基礎調査の概況|厚生労働省)をもとに、要介護5大要因の推移を表にまとめてみた。

1998年 2001年 2004年 2007年 2010年
脳血管障害 29.3% 27.7% 25.7% 23.3% 21.5%
認知症 10.1% 10.7% 10.7% 14.0% 15.3%
高齢による衰弱 12.1% 16.1% 16.3% 13.6% 13.7%
関節疾患 6.6% 10.4% 10.6% 12.2% 10.9%
骨折・転倒 10.4% 11.8% 10.8% 9.3% 10.2%


 脳血管障害、認知症、高齢による衰弱、関節疾患、骨折・転倒が要介護の要因として比率が高い。介護予防の主要ターゲットはこの5要因であることが示されている。いずれの時期の調査でも他の原因は主要5要因と比べかなり少ない。なお、介護保険施行以前の調査(1998年)と施行後の調査(2001年〜2010年)とでは対象が異なっている。後者は要介護認定を受けている者が対象であることに注意が必要である。
 要介護要因の変化を見てみると、脳血管障害の比率が次第に低下していることがわかる。一方、2007年以降、認知症の比率が高くなってきている。逆に、高齢による衰弱は、2007年度に割合が低下している。関節疾患と骨折・転倒は両者とも10%前後で推移している。認知症が伸びている原因としては、人口の高齢化が進んでいることもあるが、認知症に対する関心が高まり、より正確な診断がつけられるようになったことがあるのではないかと推測する。
 国民生活基礎調査は、要介護になった主因しか調べていないため、複合的要因を持つ者の状況はわからない。例えば、もともと認知症があった高齢者が、転倒・骨折をきっかけに要介護状態が悪化した場合、どちらに分類すべきかという問題が出てくる。厚労省の調査では、65歳以上の高齢者における認知症の発生率は約10%となっている。要介護者の比率が高齢者人口の約2割であることを考慮すると、要介護者の半数に認知症が関係していると考えることもできる。
 要介護の原因として、認知症の重要性が高まっていることは間違いない。認知症はcommon disease であるとの認識にたち、対応することが必要である。