訪問リハビリテーションの提供状況

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 訪問リハビリテーションは、介護保険医療保険両者に制度がある。さらに、提供事業所は、病院・診療所・老人保健施設訪問看護ステーションとに分かれている。
 複雑怪奇な提供制度、提供事業所の少なさ、月1回の診察と指示書記載が義務づけなどが要因となり、介護保険における訪問リハビリテーション提供はきわめて少ない。厚生労働省:平成21年度 介護給付費実態調査結果の概況の中にある統計表介護サービス受給者数,月・サービス種類別をみると、平成22年4月分で訪問リハビリテーション利用者は56.9万人となっており、要介護1以上の介護サービス利用者総数315.57万人の1.8%にとどまっている。
 訪問看護ステーションからの訪問リハビリテーションは、介護保険では訪問看護7という分類になっており、上記統計には含まれない。調べてみると、厚生労働省:介護給付費実態調査月報(平成22年12月審査分)の第15表と第16表の中に、訪問看護ステーションからのPT、OT、STの派遣単位数の資料があった。第10表と第11表をみると、介護予防サービス総単位数は3,453,914(千単位)、介護サービス総単位数は30,738,115(千単位)、合計34,192,029(千単位)となっている。表にすると、下記のとおりになる。

介護予防サービス 介護サービス 合計
訪問リハ  24,358(0.7%)  197,236(0.6%)  221,594(0.6%)
訪問看護7  23,683(0.7%)  207,290(0.7%)  230,973(0.7%)
合計  48,041(1.4%)  404,526(1.3%)  452,567(1.3%)


 訪問リハビリテーション訪問看護7が拮抗している。訪問看護ステーションからのリハビリテーション専門職派遣は看護師の訪問数を超えてはいけないという原則が2008年度に提示された。当院では、介護保険発足当初より訪問看護ステーションからの訪問リハビリテーション提供を行っていたが、新たに訪問リハビリテーション事業所を立ち上げざるをえなかった。調査結果をみる限り、訪問看護ステーションからの訪問リハビリテーションを差し控える動きが全国的に続いているのではないかと推測する。
 訪問看護7を含めても、訪問リハビリテーション提供数はきわめて低い水準にとどまっていることがあらためて確認された。欧米では、脳卒中治療のトピックスとして、Early supported discharge(ESD)が脚光を浴びている。早期自宅退院後、リハビリテーション専門職を含むチームが訪問をし、多角的アプローチをすることで、ADLやIADLの改善を達成している。
 団塊の世代の高齢化に伴い、リハビリテーション対象者は急増する。限られたベッド数を考えると、早期に自宅退院を余儀なくされる要介護者が増加する。訪問リハビリテーションの需要は間違いなく増加する。2012年度診療報酬介護報酬同時改定にあたり、訪問リハビリテーションステーション創立などの案が検討されていると聞く。制度改定論議が今後本格化する中、どのような議論がなされるか注視していきたい。