維持期リハビリテーションは介護保険で行うもの?

 中医協答申を読むと、厚労省は、維持期リハビリテーション介護保険でという考えを推し進めようとしていることが伺われる。

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 厚生労働省:第169回中央社会保険医療協議会総会資料の中に資料(総−1)(PDF:2,050KB)がある。この中に、「平成22年度診療報酬改定における主要改定項目について(案)」が示されている。143ページに次のような記載がある。

3.維持期のリハビリテーションについて


 維持期のリハビリテーションについては、平成21年度介護報酬改定において充実が図られたが、その実施状況に鑑み、今回の診療報酬改定においては、介護サービスとしてのリハビリテーションを提供することが適切と考えられる患者に対して介護サービスに係る情報を提供することを要件として、維持期における月 13単位までのリハビリテーションの提供を継続する。


 おりしも、日本リハビリテーション医学会社会保険等委員会から、介護保険におけるリハビリテーションについてのアンケート調査が届いていた。「アンケート結果は分析の上、平成24年の診療報酬・介護報酬同時改定に向けての学会からの提言などにも役立てていきたい」とのことだった。


 「閉じこもり」による低活動状態を生じやすい高齢障害者の場合、通所サービスの方がなじむ。当院では、通所リハビリテーション通所介護両方にリハビリテーション専門職を配置している。定期的に評価を行い、機能低下を起こしていないかどうかをチェックする。10m歩行速度、TUG、6分間歩行距離、片脚立位時間、MMSEなどの臨床指標を用いている。電子カルテに結果が記載されているため、外来での診察時に説明している。数値データで示されるので、利用者にも分かりやすい。痙性変化などで装具不適合があった場合には、リハビリテーションスタッフから連絡があり、装具外来で診察する。
 訪問リハビリテーション利用者と通院リハビリテーション継続者に関しては、月に1回必ずカンファレンスを開き、チェックしている。自宅に訪問して、ADLの指導をすることが適切な場合には、短期集中型サービスを提供する。失語症患者は通院での言語療法が中心となっている。
 長期にリハビリテーションサービスを提供する必要がある方は間違いなくいる。それが医療保険で提供されようと、介護保険で行うと私はどちらでも構わない。サービスの種類を豊富に備え、最も適切だと思われる手段で提供する。自前のサービスにもこだわらない。地域全体の力量が上がり、任せることができる事業所も増えている。
 介護保険には、いくつか見過ごせない問題がある。一つは、通所および訪問リハビリテーション利用者が医療保険リハビリテーションを利用できないことである。もうひとつは、介護保険には区分限度支給額があり、低い要介護度だとヘルパーや通所介護が優先され、リハビリテーションが二の次になる。医療保険介護保険併用禁止規定を廃止し、通所リハビリテーションと訪問リハビリテーションを区分限度支給額枠外にすることだけは、是非とも実施して欲しいと考えている。
 月13単位制限で維持的リハビリテーションを実施できるという規定が、平成24年度診療報酬・介護報酬同時改定時に廃止される可能性は捨てきれない。医療保険のサービスが適当な場合や介護保険リハビリテーションが普及していない場合には、行き場を失う要介護者が大量に産み出されることになる。