外来時のリハビリテーションにおける医師診察の見直し
中央社会保険医療協議会 総会 (第186回) 議事次第 |厚生労働省で、リハビリテーションに関する論議がされた。医療と介護の連携(その3:リハビリテーション、退院調整)、資料(総−2−1)(PDF:108KB)にて、次のような問題提起がされている。
医療介護の連携について (リハビリテーション)
1.リハビリに係る医療保険と介護保険の給付について
(基本的な考え方)
○ リハビリに関する医療保険と介護保険の役割としては、急性期から回復期における、心身機能や ADL の改善、向上を目的としたリハビリを医療保険より提供し、生活期(維持期)における、心身機能や ADL、生活機能を維持し、QOL を向上させるためのリハビリを介護保険より提供することとなる。
○ 医療保険によるリハビリは、リハビリを集中的に行うための病棟の入院料(回復期リハビリテーション入院料)と、20 分を 1 単位として、理学療法、作業療法、言語聴覚療法等の個別療法を評価する、疾患別リハビリテーション料の 2つに大 きく分けられる。
○ 介護保険によるリハビリは、介護老人保健施設の入所者に対するリハビリや、短期入所療養介護時のリハビリのほか、通所リハビリや訪問リハビリ等がある。
(診療報酬上の取扱い)
○ 平成 16 年度診療報酬改定時は、理学療法、作業療法、言語聴覚療法について、それぞれ個別療法と集団療法が存在し、算定上限は原則 1 日 4 単位(80 分)とされ、標準的算定日数などの日数の目安は設定されていなかった。
○ それに対し、今後の高齢者のリハビリテーションにあるべき方向性として、個別的な計画に基づき、期間を設定して行われるべきもの、単なる機能訓練を漫然と実施することがあってはならない、との指摘がなされ、平成 18 年度診療報酬改定で 1 人 1 日当たりの算定上限を拡大(4→6 単位)、集団療法の評価の廃止、標準的算定日数の導入を行い、状態の維持を目的とするリハビリは介護保険に移行することとした。
○ この取扱いについて、状態の維持を目的とするリハビリは、平成 18 年度の検証において介護保険において必ずしもニーズに合ったリハビリが実施されていないこと等の指摘があり、平成 19 年度より医療保険で一定の評価を行うこととし、平成 20 年度診療報酬改定において、1 月 13 単位まで算定可能とした。
(介護保険上の取扱い)
○ 一方、介護保険においても、平成 21 年度介護報酬改定時に保険医療機関の通所リハビリテーション事業所の「みなし指定」や、早期の集中的なリハビリに対する評価の引き上げ等、生活期のリハビリに対する充実が図られ、通所リハビリテーションの年間受給者数は増加し、通所リハビリテーションにおける、短期集中リハビリテーション実施加算、個別リハビリテーション実施加算の算定件数は増加している。
○ しかしながら社会保障審議会介護保険部会においては、十分にリハビリテーションが提供されていない状況があることや、現存するサービスを効率的に活用するとともに質の向上について検討すべきとの指摘がなされている。
2.外来時のリハビリテーションについて
○ 入院外のリハビリについては、外来でのリハビリ、訪問リハビリともに、医師による定期的なリハビリ効果の判定やリハビリ計画の策定が求められている一方で、日々のリハビリ提供時には外来でのリハビリでは基本的な診察を前提としているのに対 し、訪問リハビリでは必ずしも診察を要さない。
○ 外来のリハビリと訪問リハビリの患者の ADL をバーセル指数で比較すると、外来のリハビリ患者の 6 割がバーセル指数 60 点以上であるのに対し、訪問リハビリ患者の 3 割がバーセル指数 40 点未満であり、外来リハビリ患者の方が ADLがよい。
○ さらに、外来のリハビリは医療機関内で提供されるのに対し、訪問リハビリは居宅等で提供されるため、急変時における対応は相対的に外来のほうが容易と考えられる。
○ リハビリ提供医療機関に対する、外来における再診の必要頻度についてのアンケートでは、毎回必ず診察を要すると判断される状態の患者は少なく、多くは1 週間~1 月程度の間隔の再診でもよいとの意見がなされている。
3.論 点
(リハビリに係る医療保険と介護保険の給付について)
○ 平成 18 年度のリハビリ提供体制の状況を勘案し、状態の維持を目的とするリハビリについて医療保険で一定の評価を行うことしているが、医療と介護が連携しつつ、医療保険と介護保険の機能の一層の明確化するために、医療保険においてどのような対応が考えられるか。
(外来時のリハビリテーションについて)
○ 外来でのリハビリ提供時には基本的な診察を前提としていることについて、患者の状態像やリハビリ提供時の急変時対応体制等の観点からどのように考えられるか。また、定期的な診察を前提とした医師の包括的指示に基づくリハビリ提供を外来で行うことは可能か。
いわゆる維持期リハビリテーションを、医療保険でみるのか、介護保険を基本とするのか、本資料を読んでも明確な方向性は見いだせない。
一方、外来時のリハビリテーションにおいて、実施前に医師が診察を行うことに関しては見直しの方向で論議が進んでいる。資料(総−2−2)(PDF:1358KB)の22〜27ページに関連する資料が提示されている。訪問リハビリテーションと同じシステムになるとなれば、月1回程度の定期的診察と実施計画書を用いた医師の包括的指示さえあれば、毎回の診察が不要となる。医療機関側からすると、医師労働の軽減につながる。支払い側からすると再診料部分の医療費を減らすことが可能となる。患者側も待ち時間が短縮される。三者とも利益となることを考慮すると、2012年度診療報酬改定で実現の見とおしは高いのではないかと予測する。