認知症が脳血管障害を抜いて要介護原因の第1位に

 厚労省が行っている主要統計調査のひとつに、国民生活基礎調査|厚生労働省がある。国民生活基礎調査では3年に1回大規模調査が行なわれるが、その中で介護の状況についての調査が必ず実施されている。

 グラフでみる世帯の状況の平成25年調査結果平成28年調査結果 を比べてみると、要介護別にみた介護が必要となった主な原因の構成割合順位に変動があったことがわかる。

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 平成25年(2013年)調査では、第1位脳血管疾患18.5%、第2位認知症15.8%となっている。

 

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 一方、平成28年(2016年)調査では、第1位認知症18.0%、第2位脳血管疾患16.6%と逆転している。

 平成13年(2001年)以降の大規模調査をもとに、介護が必要となった主な原因の構成割合推移をグラフにまとめた。

 

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 脳血管疾患割合が一貫して低下している一方、認知症は調査ごとに比率を増していることがわかる。高齢による衰弱、骨折・転倒、関節疾患は調査ごとに順位の変動はあるもののほぼ同じような比率となっている。

 

 平成13年(2001年)以降、国民生活基礎調査における介護が必要となった者とは、要介護認定を受けている者という定義となっている。

 平成29年度 介護保険事業状況報告(年報) | 厚生労働省をみると、要介護(要支援)認定者数は年度を経ることに増加している。

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 要介護(要支援)認定者数に、要介護別にみた介護が必要となった主な原因の構成割合を乗じ、以下のようなグラフを作成した。

 

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 脳血管疾患がほぼ横ばいとなっているのに対し、認知症は 3.6倍と右肩上がりになっていることがわかる。高齢による衰弱、骨折・転倒、関節疾患も認知症ほどではないが確実に増加している。

 

 2019年度に行われた国民生活基礎調査大規模調査の結果は、2020年6月頃に公表される予定である。脳血管疾患治療の進歩、および、高齢化社会の進行をふまえると、介護が必要となった主な原因の構成割合の順位には大きな変化がないと予想する。

 私が行っているリハビリテーション専門職の講義では、毎年、要介護の原因に関する試験問題を出している。日本では、要介護の原因の第1位は認知症であり、その次が脳血管疾患である、という事実は理解してもらっているものと思っている。