2020年度診療報酬改定答申における回復期リハビリテーション病棟入院料の見直し

 2020年度診療報酬改定答申が出た。

 回復期リハ病棟入院料の見直しは、総-1(PDF:1,619KB)の332〜337ページにまとめられている。

 主な改定内容は以下のとおりである。

  1. 回復期リハビリテーション病棟入院料1及び回復期リハビリテーション病棟入院料3におけるリハビリテーション実績指数の要件について、それぞれ水準を引き上げる。
  2. 回復期リハビリテーション病棟に入院した患者に対して、入院時FIM及び目標とするFIMについて、リハビリテーション実施計画書を用いて説明し、計画書を交付することとする。また、退院時FIMについても同様の取扱いとする。
  3. 入院患者に係る要件から、発症からの期間に係る事項を削除する。
  4. 回復期リハビリテーション病棟入院料における重症者の定義に、日常生活機能評価に代えてFIM総得点を用いてもよいものとする。
  5. 回復期リハビリテーション病棟入院料1の施設基準である、「当該病棟に専任の常勤管理栄養士が1名以上配置されていることが望ましい」とされているものを専任配置に変更する。
  6. 回復期リハビリテーション病棟入院料2~6について、現状、管理栄養士の配置規定はないが、施設基準に「当該病棟に専任の常勤管理栄養士が1名以上配置されていることが望ましい」旨を追加するとともに、栄養管理に係る要件を設ける。

 

 1.実績指数、3.発症からの期間に係る要件に関する中医協議論については、本ブログで昨年12月時点にまとめた。

 今回の答申では、回復期リハビリテーション病棟入院料1で37→40に、同入院料3で30→35となっている。当初予想していたよりは低めの水準となった。

 発症からの要件廃止に関しては、期限切れのため回復期リハビリテーション病棟に入棟できなかった患者にとっては朗報となる。

  5.および6.の栄養士配置基準の変更は、リハビリテーション栄養の普及を目指したものであり、歓迎すべき内容である。

  ここまでは、中医協の論点より予想できたものばかりである。

 

 一方、2.リハビリテーション実施計画書を用いたFIM説明の強化と4.重症者定義にFIM総得点を使用可能という改定内容は予想外だった。あらためて、中医協資料を調べてみると、中央社会保険医療協議会 (中央社会保険医療協議会診療報酬調査専門組織(入院医療等の調査・評価分科会))|厚生労働省 第11回(同年10月30日)の入-1(PDF:322KB)に次のようにまとめられていた。

  • 入棟時と退棟時のFIMの推移をみると、入棟時の値は平成28年度以降やや低下傾向にあり、退棟時の値はほぼ横ばいから微増傾向であった。また、FIM 得点の変化の推移をみると、平成 28 年度以降増加傾向となっていた。この関係性は、入院料ごとにみても、同様の傾向であった。
  • 入棟時FIMと発症から入棟までの日数の関係を経年的にみると、発症から入棟までの日数によらず、入棟時 FIM が低下傾向であり、他方、入棟時 FIM と FIM 得点の変化の関係を経年的にみると、入棟時 FIM の値によらず、FIM 得点の変化が増加傾向であった。これらの関係性は、疾患区分ごと又は入院料ごとにみても、同様の傾向であった。
  • 入棟時・退棟時FIM及びFIM得点の変化と、入棟時・退棟時日常生活機能評価及び日常生活機能評価の変化との関係については、平均値及び中央値に着目した場合、一定程度、相関関係が見られた。
  • これらの結果を踏まえ、FIM得点の経年的な変化については、FIM測定の精度の担保等を含め、適切な運用を促す仕組みが必要ではないかという意見があった。

 

 入-1参考(PDF:14973KB)の157〜187ページに回復期リハビリテーション病棟に関する資料がまとまっている。

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 本図は、回復期リハビリテーション病棟協会の調査に基づいている。実績指数導入に伴って入棟時FIMが明らかに低下しているが、発症から入棟までの日数の低下が原因の一つと判断されている。ただし、「適切な運用を促す仕組みが必要」となり、退院時にもリハビリテーション実施計画書を用い、FIMの説明をすることになったのだろうと推測する。

 

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 FIMと日常生活機能評価との関係に関しても、回復期リハビリテーション病棟協会の調査が使用されている。確かに、入棟時・退棟時FIM及びFIM得点の変化と、入棟時・退棟時日常生活機能評価及び日常生活機能評価の変化との関係については、平均値及び中央値に着目すると、一定程度の相関関係があるように見える。ただし、FIM運動項目を用いた散布図の方を見るとバラつきが多いこともわかる。さすがに入棟時日常生活機能評価19点にも関わらず、FIM運動項目90点というのはありえないだろうとツッコミを入れたくなる。入棟時日常生活機能評価の度数分布を見ても、重症と判断される10点が突出して多く、9点が極端に少ない。何らかの操作がされていると疑われても仕方がない。

 中医協答申資料を見ても、FIM総得点を用いた場合、何点が重症の基準となるかはわからない。重症者改善の基準も不明である。グラフから読みとる限りでは、日常生活機能評価での重症基準10点に相当するのは、FIMでは30点台前半となる。また、日常生活機能評価10点のFIM利得はおおよそ25点となっている。おそらく、このあたりで基準が設定されるのではないかと予想する。


<追記> 2020年3月7日

 FIM総得点を用いた重症定義の予測がはずれた。紹介した資料をよく見ると縦軸にFIMと記載されているが、目盛の上限が90点となっており、FIM総得点ではなく運動項目だったことに気づいた。FIM運動項目で30点台前半なら、認知項目とあわせて総得点55点以下を基準としても矛盾しない。