回復期リハビリテーション病棟におけるFIM測定のあり方についての議論

 中医協総会において、回復期入院医療については、2023年11月10日(第563回)https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/0000212500_00222.html と11月15日(第564回)https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/0000212500_00223.html で取り上げられた。入院(その3)総-2(PDF:6MB) が該当資料である。

 

 この資料では、回復期リハビリテーション病棟におけるFIM測定について、次のような課題があると指摘されている。

  • 平成26年以降、入棟時FIMは年々低下傾向である。
  • 三者機能評価の認定を受けている医療機関は、認定を受けていない医療機関と比較し、近年の入棟時FIMの低下傾向が緩やかであり、FIMの適切な評価に関する取組を実施している割合も高かった。
  • データ提出加算では、FIMについて入退棟時の点数を提出するように求めている。一方で、FIMの変化の大きさは時期によって異なることを示す報告もあった。

 

 平成28年度以降、入棟時FIM評価が経年的に低下しているとあるが、アウトカム指標である実績指数導入の影響が示唆されている。

 第三者評価の認定のない病院では、同じ入院時の日常生活機能点数に対する入院時運動FIM得点が有意に低い。

 

 第三者評価の認定を受けている医療機関においては、FIMの適切な測定に対する取組みを実施している割合が高い。

 より高い基準を満たすため、入棟時のFIMを意識的に低めにつけているのではないかという疑問が中医協で示されている。この解決方法として第三者評価を義務づけるべきという意見が支払い側委員から出されたが、今回の改定では見送られた。その代わりに、FIM測定に関する院内研修を行うことが回復期リハビリテーション病棟入院料1及び3の要件として追加され、かつ、全ての入院料でFIMを定期的に測定することが要件となった。おそらくFIMの点数を毎月提出することがデータ提出加算の要件になり、査定の理由としても使われることになるのではないか。

 

 実績指数を上げる正当な方法は次のとおりである。

  •  適応判定: 集中的なリハビリテーション適応のある患者の見極め
  •  早期受入れ: FIM改善度が高い早期に受入れ
  •  リハビリテーションの質: 質の高いスタッフによる目的志向型チーム医療の実践
  •  退院調整: 退院先を早めに判断し、社会資源を準備したうえで適切な時期に退院

 上記のような条件が不十分であるにも関わらず、実績指数をクリアしようとしてFIMの点数を操作することは、回復期リハビリテーション病棟という制度に負のイメージをもたらすことになる迷惑行為である。

 私としては、やはり第三者評価は義務づけた方が良かったのではないかと考えている。リハビリテーション専門医の配置および専門医研修プログラムへの参加なども質の担保に関係するので、要件として検討しても良いのではないか。

 おそらく、実績指数や重症度割合などにFIMが使われる限り、FIM測定のあり方は診療報酬改定のたびに議論され、次第に要件の厳格化が進められるのではないか。FIMの天井効果や床下効果のため改善度合いが適切に評価されない患者もいる。リハビリテーション医療の質をどのように評価していくのかについては、医療経済的な側面だけからでなく、議論を深める必要がある。