実績指数管理に関する留意事項

 今回は、実績指数管理について検討する。

 平成29年10月25日に行われた中央社会保険医療協議会総会審議会資料 |厚生労働省の個別事項(その5)について(PDF:2,048KB)のなかに、リハビリテーションに関する検討事項がまとめられている。なお、元になった資料は、平成30年1月25日に行われた中央社会保険医療協議会総会審議会資料 |厚生労働省内にある、(6)回復期リハビリテーション病棟におけるアウトカム評価の導入の影響、維持期リハビリテーションの介護保険への移行状況等を含むリハビリテーションの実施状況調査報告書(PDF:1,310KB)である。なお、本資料の調査用紙は、中央社会保険医療協議会診療報酬改定結果検証部会審議会資料 |厚生労働省内にある、平成28年度診療報酬改定の結果検証に係る特別調査(平成29年度調査)の調査票案について検-1(PDF:12,396KB)である。

 

 実績指数の評価については、以下の図のとおりである。

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 回復期リハビリテーション病棟に関する課題と論点(案)は、以下のようにまとめられている。

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 一番上にアウトカム評価(実績指数)の課題が記載されている。それぞれの項目について、該当する資料がある。

 

 入院料1算定病棟の約8割が一定のリハビリテーション提供実績(1日6単位以上等)があり、そのほぼ全てが実績指数27以上であったことは下図に示されている。

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 回復期リハビリテーション病棟の平均在院日数、在宅復帰率、日常生活機能評価の改善割合がいずれも平成27年より改善していたことは、以下に示されている。

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 実績指数が高いほど、平均在院日数は短く、在宅復帰率は高くなる傾向が認められたことに関しては、下図に示されている。

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 実績指数の値と患者の平均年齢、入棟時FIM(運動項目)の平均値とには相関関係が認められないとの記載に関係する図は以下のとおりである。

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 回復期リハビリテーション病棟にアウトカム評価を導入したことを検証したが、効果があったという結論となっている。ただし、中医協の調査は、多変量解析ではなく交絡因子の調整が行われていない。したがって、因果関係の有無について留保する必要がある。

  いずれにせよ、本調査をふまえ、よりアウトカム評価を推進するために、新回復期リハビリテーション病棟入院料1では、実績指数の平均値に近い37が新たな基準として、設定された。この実績指数をクリアするために、どのような管理をすべきかが問題となる。

 

 まとめでは言及されていない図が2つある。

 同一月に入院した患者でも、短期間で早く改善する者と時間をかけて良くなる者がいる。前者を多く集めている病棟だと実績指数は上がりやすいが、後者が多いと実績指数は低めに出ることが予想される。

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 疾患群ごとにも特徴がある。箱ひげ図を見ると、廃用症候群で実績指数が低値となっている。廃用症候群の患者にはもともと要介護のものが多いためではないかと推測する。疾患群内でも幅があり、患者によって差があることを認識する必要がある。

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  経験的には、実績指数管理に関しては次のような留意事項があると考えている。

  •  リハビリテーション適応が適切に判断されているか。
  •  急性期病院との連携がスムーズに行われ、リハビリテーション効果が上がりやすい早期に入棟しているか。
  •  集中的なリハビリテーションが提供されているか。
  •  退院調整がスムーズに行われ、早期退院が図られているか。
  •  在宅復帰の場合、適切な在宅サービス提供がなされているのか。

 上記が総合的に行われていれば、FIM運動項目増加が図られ、かつ、在院日数が短縮するため、実績指数は高くなる。

 一方、リハビリテーションの質がさほど高くなくても、実績指数を上げることはできる。例えば、次のような場合である。

  •  リハビリテーション適応があっても、FIM運動項目が上がりそうではない場合には選別してとらず、上がりそうな患者だけ選んでとる。
  •  退院調整を十分せず、機械的に入院期間を決め、短期間で退院させる。

 

 実績指数が高い病棟=リハビリテーションの質が高いとは一概には言えない。どう考えても、実績指数を引き下げる可能性があるが、専門的施設の矜持にかけて受け入れざるをえない患者はそれなりにいる。必要に応じて、除外規定を上手に使いながら、経営を守る視点から高めに設定し直された実績指数をクリアするために工夫をする必要がある。