回復期リハビリテーション病棟入院料における重症患者割合の見直し

 中央社会保険医療協議会(中央社会保険医療協議会総会) |厚生労働省が行われ、2022年度診療報酬改定の概要が明らかになってきた。第514回総会(2022年1月28日)資料、個別改訂項目(その2)について 総-5(PDF:381KB)の75〜85ページが、回復期リハビリテーション病棟に関わる部分である。具体的な内容は以下のとおりである。

 

<回復期リハビリテーション病棟入院料の評価体系及び要件の見直し>

1.回復期リハビリテーション病棟入院料5を廃止し、現行の回復期リハビリテーション病棟入院料6を新たな回復期リハビリテーション病棟入院料5として位置付ける。(経過措置あり)

2.回復期リハビリテーション病棟入院料1から4までに係る施設基準における重症患者の割合を見直し、回復期リハビリテーション病棟入院料1及び2については●●割以上、回復期リハビリテーション病棟入院料3及び4については●●割以上とする。

3.回復期リハビリテーション病棟入院料1又は3について、公益財団法人日本医療機能評価機構等による第三者の評価を受けていることが望ましいこととする。

 

<回復期リハビリテーションを要する状態の見直し>

・「回復期リハビリテーションを要する状態」について「急性心筋梗塞狭心症発作その他急性発症した心大血管疾患又は手術後の状態」を追加し、算定上限日数を●●日以内とする。(心大血管疾患リハビリテーション料に係る届け出を行っている保険診療機関が対象)

 

<特定機能病院においてリハビリテーションを担う病棟の評価の新設>

・令和4年3月 31 日をもって廃止予定であった特定機能病院における回復期リハビリテーション病棟入院料について、現に届出がなされている特定機能病院の病棟において一定程度の役割を果たしていることが確認されることから、特定機能病院におけるリハビリテーションに係る役割を明確化することとし、「特定機能病院リハビリテーション病棟入院料」と位置付け、当該入院料に係る施設基準を見直す。(当分の間は、令和4年3月 31 日において現に回復期リハビリテーション病棟入院料に係る届出を行っているものに限る)

 

 上記改訂中、回復期リハビリテーション病棟入院料5、6はそもそも施設数が少ないため、統合されたと考えても良い。また、日本医療機能評価認定医療機関は、回復期リハビリテーション病棟協会の回復期リハビリテーション病棟の現状と課題に関する調査報告書(2020年版)では有効853病院中計47%しかなかった(参照:実態調査報告書|一般社団法人 回復期リハビリテーション病棟協会)が、現時点ではまだ努力規定にとどまっているので影響は小さい。心大血管疾患リハビリテーション料を算定している医療機関で、急性心筋梗塞を回復期リハビリテーション病棟対象疾患に含めるのは妥当であり、特定機能病院リハビリテーション病棟入院料創設は現状追認である。

 以上のことを考えると、今回の診療報酬改定において、回復期リハビリテーション病棟を抱える一般病院において問題となるのは、重症患者割合の見直しのみとなる。

 

 中医協では、中央社会保険医療協議会 (中央社会保険医療協議会診療報酬調査専門組織(入院医療等の調査・評価分科会))|厚生労働省、第4回(2022年7月8日)資料で検討後、中央社会保険医療協議会(中央社会保険医療協議会診療報酬基本問題小委員会)|厚生労働省、第205回(2022年9月22日)資料論議され、最後に中央社会保険医療協議会(中央社会保険医療協議会総会) |厚生労働省、第489回(2022年9月22日)資料で報告という流れになっている。明確に重症患者割合の見直しに影響を与えたデータはないが、関連資料としては以下のものがある。中医協総会資料、総-2-2(PDF:16,913KB)より引用する。

 

f:id:zundamoon07:20220130110749p:plain

f:id:zundamoon07:20220130110804p:plain

 回復期リハビリテーション病棟入院料におけるアウトカム指標の達成度を見たグラフである。難易度は、実績指数>重症患者割合>在宅復帰率>重症患者回復割合の順となっている。今回は実績指数には手をつけず、次に達成が難しい重症患者割合を変更し、入院料1および2算定病床数を調整しようと意図が働いたと推測する。

 

f:id:zundamoon07:20220130110732p:plain

 FIMを用いた場合、重症患者の定義はFIM総得点55点以下となる。一方、本グラフはFIM運動項目得点であり、参考にしかならない。FIM運動項目40点程度が総得点55点前後と粗く見積もると、入院料1、2では40〜50%が重症患者と推定する。

 上記グラフから読みとる限り、入院料1、2で重症患者割合が30%から40%へ、入院料3、4で同20%から30%へとそれぞれ引き上げられるのではないかと予測する。重症患者を獲得するために最も簡便な方策は発症後より早期に患者を受け入れることである。回復期リハビリテーション病棟において状態が不安定な患者への対応がより一層求められるようになってきている。