廃用症候群に対するリハビリテーション料が独立した項目へ

 中央社会保険医療協議会 総会(第316回)平成27年12月2日が開催され、リハビリテーションに関する診療報酬改定の議論が行われた。個別事項(その5;リハビリテーション)についてが議論のもとになった資料である。
 今回は、廃用症候群リハビリテーションに係る課題と論点の部分を紹介する。


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 上図の元になった調査は、社会医療診療行為別調査である。社会医療診療行為別調査:結果の概要に、各年度6月分の診療行為がまとめられている。より詳細な資料は、社会医療診療行為別統計(旧:社会医療診療行為別調査) 社会医療診療行為別統計 | ファイルから探す | 統計データを探す | 政府統計の総合窓口にある。例えば、社会医療診療行為別統計(旧:社会医療診療行為別調査) 社会医療診療行為別統計 平成26年社会医療診療行為別調査 閲覧 医科診療 年次 2014年 | ファイルから探す | 統計データを探す | 政府統計の総合窓口内にある、平成26年社会医療診療行為別調査の第1表を開くと、全ての診療行為別の一覧表が呈示される。
 平成25年6月と平成26年6月を比べると、脳血管疾患等リハビリテーション料(廃用症候群)は、131,018件から90,554件(69.1%)へと急落している。平成26年度診療報酬改定の結果、廃用症候群に対するリハビリテーション料算定が抑制されたことが如実にわかる。


 廃用症候群の主な対象は、予備能力の低い虚弱高齢者である。このような患者に対し、リハビリテーション医療を提供できにくくなったことに対し、上図のような理由をつけ、厚労省は軌道修正を図ろうとしている。関連エントリーでも指摘したが、心大血管疾患やがん患者リハビリテーション料は施設基準が厳しく、算定している医療機関が少ないため、リハビリテーションを実施しにくい現状が生まれている。特に注目すべきは、運動器不安定症との関連である。


 廃用症候群に代わって、リハビリテーション医療の現場で多用され始めたのが運動器不安定症である。運動機能低下をきたす疾患のうち、1.脊椎圧迫骨折および各種脊柱変形(亀背、高度脊柱 後弯・側弯など)から9.下肢切断までは、運動器不安定症という病名がなくても、リハビリテーション提供は可能である。したがって、10.長期臥床後の運動器廃用と11.高頻度転倒者が独自の対象疾患となる。また、機能評価基準の1.日常生活自立度:ランクJまたはA(要支援+要介護1,2)も対象となる。歩行不可能であるランクBとCは運動器不安定症の対象ではないことに注意が必要である。
 上記基準のうち、10.長期臥床後の運動器廃用が今回の改定の対象となる。


 論点のうち、「原疾患に対する治療の有無にかかわらず」と「他の疾患別リハビリテーション料等の対象者かどうかにかかわらず」の部分は、廃用症候群に対するリハビリテーション料対象者の拡大であり、歓迎すべき内容である。
 おそらく、疾患別リハビリテーション料のひとつとして廃用症候群リハビリテーション料が加わり、運動器リハビリテーション料の対象となっている運動器不安定症のなかから長期臥床後の運動器廃用が除かれることになると予想する。なお、リハビリテーション関連診療報酬の割合が上昇していることを考慮すると、診療報酬は引下げられ、算定日数上限も運動器リハビリテーション料なみになるのではないかと推測する。