日本における認知症有病率

 日本における認知症有病率を調べてみた。


 平成20年7月10日に厚労省から報道発表された、厚生労働省:「認知症の医療と生活の質を高める緊急プロジェクト」報告書の公表についてにある認知症の医療と生活の質を高める緊急プロジェクト報告書には次のような記述がある。

 平成15年に厚生労働省老健局長の私的研究会である高齢者介護研究会において、「専門医による医学的判定」とは異なるが「介護に必要な手間」という観点からの情報とされる「認知症高齢者の日常生活自立度」II以上の高齢者数を公表し、平成14(2002)年9月末の日常生活自立度II以上の高齢者は149万人と推計した。この推計データと「日本の将来推計人口」から将来推計を行ったところ、平成17(2005)年には当該高齢者が169万人、平成27(2015)年には250万人になると推計された。しかし、本推計は、医学的に認知症と診断された者ではなく、認定調査員による「認知症高齢者の日常生活自立度」のデータを基に推計したものであり、また、要介護認定申請をしていない人は含まれていないことなどから、当該推計数が我が国における認知症の患者数を正確に反映しているとはいえない。


(中略)


 こうした考え方に立って、今後、認知症患者の実態を正確に把握するため、医学的な診断基準に基づく有病率調査をできるだけ速やかに行うとともに、認知症に対応する医療・介護サービスや、認知症を有する高齢者の生活実態についても調査を早急に行う必要があると考える。


 「「認知症高齢者の日常生活自立度」�以上の高齢者数及び「認知症施策推進5か年計画(オレンジプラン)」の公表について」(平成24年9月6日)PDF(介護保険最新情報vol.298)では、現状と将来推計については以下のようになっている。

 平成22年(2010)で 「認知症高齢者の日常生活自立度」II以上の高齢者数は 280万人であった。



 平成15年(2003年)当時の予測208万人に対し、実際は280万人と跳ね上がっている。今後もその差は広がり、平成37年(2025年)になると、当初の予測323万人が470万人と大幅に上方修正されている。


 一方、認知症|疾患の詳細|専門的な情報|メンタルヘルス|厚生労働省を見ると、次のような記載がある。

 認知症の最大の危険因子は加齢です。65〜69歳での有病率は1.5%ですが、以後5歳ごと倍に増加し、85歳では27%に達します。現時点で、我が国の65歳以上の高齢者における有病率は8〜10%程度と推定されています。


(中略)


 現時点(2010年)では200万人程度といわれてきましたが、専門家の間では、すでに65歳以上人口の10%(242万人程度)に達しているという意見もあります。今後、高齢者人口の急増とともに認知症患者数も増加し、2020年には325万人まで増加するとされます。


 このHPで紹介されている、「朝田隆.厚生労働科学研究費補助金 長寿科学総合研究事業 若年性認知症の実態と基盤整備に関する研究 平成20年度 総括・分担研究報告書、2009」の研究の一部が、第19回新たな地域精神保健医療体制の構築に向けた検討チーム資料 |厚生労働省の資料、朝田構成員提出資料(PDF:733KB)にあった。 本調査は、全国7ヵ所の65歳以上住民約5,000名以上を対象としたものであり、CDR、MMSE、WMSR、Geriatric Depression Scaleを施行した本格的なものである。まとめは次のようになった。

有病率調査のまとめ


• 65歳以上人口における認知症有病率は15.7%(12.4‐22.2)であり、先行研究と比較して高い傾向にあった。
• この理由として、高齢化率の上昇が考えられる。


 認知症の基礎疾患の内訳をみると、アルツハイマー型66.2%、血管性19.6%、レビー小体型6.2%となっており、変性疾患の割合が高い。年齢、性別ごとにみると、85-89歳の女性の4割、90歳以上となると7割以上が認知症となる。


 要介護認定に基づくデータは過小評価だと考えた方が良さそうである。少なくとも、現時点で65歳以上人口の約10%が認知症である。75歳以上の後期高齢者数が急激に増える2025年頃には、さらに認知症患者の割合が増加する。今後、高齢者の治療を行ううえで、あらゆる場面で認知症に対する対応が求められる。認知症は、プライマリケアにおける最重要課題となっている。