地域包括ケア病棟入院料の要件厳格化

 今回は、2022年度診療報酬改定の中医協答申のうち、地域包括ケア病棟入院料に関わる改定内容について検討する。中央社会保険医療協議会(中央社会保険医療協議会総会) |厚生労働省の第516回(2022年2月9日)資料総-1(PDF:4,287KB)に個別改定項目についてがある。また、総-2別紙1-1(PDF:5,107KB)に医科診療報酬点数表がある。地域包括ケア病棟入院料に関しては、総-1(PDF:4,287KB)、63〜76ページに該当する改定項目が示されている。

 まず、中央社会保険医療協議会(中央社会保険医療協議会総会) |厚生労働省、第489回(2022年9月22日)資料総-2-2(PDF:16,913KB)より、病床数の推移に関するグラフと地域包括ケア病棟入院料及び入院医療管理料に概要に関する表を引用する。

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 地域包括ケア病棟入院料・入院医療管理料を算定する病床が急速に拡大していることがわかる。特に許可病床数400床以上の医療機関を対象とする入院料2の占める割合が大きい。

 

1. 在宅復帰率の要件の変更

 在宅復帰率に関しては、中央社会保険医療協議会 (中央社会保険医療協議会診療報酬調査専門組織(入院医療等の調査・評価分科会))|厚生労働省、第4回(2022年7月8日)資料入-1(PDF:6,316KB)にある図がわかりやすい。

 

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 この在宅復帰率が、次のように変更されている。

・ 入院料・管理料1及び2: 70%以上 → 72.5%以上

・ 入院料・管理料3及び4: 要件なし → 70%以上(要件を満たしていない場合は90/100に減算)

 

2.自院の一般病棟からの転棟した患者割合に係る要件の変更

・ 入院料2及び4において、許可病床数400床以上の医療機関において60%未満であること → 許可病床数200床以上の医療機関に拡大(要件を満たしていない場合は90/100に減算 → 85/100に減算)

 

3.自宅等から入院した患者割合などの実績要件の変更

・ 入院料・管理料1及び3: 自宅等から入院した患者割合15%以上 → 20%以上、自宅等からの緊急の入院患者の3月の受入れ人数について、6人以上 → 9人以上(10床未満の場合は、3月で6人以上 → 8人以上)

・ 入院料・管理料2及び4: 以下のいずれか1つ以上を満たすことを追加する。

 ア 自宅等から入棟した患者割合が2割以上であること

 イ 自宅等からの緊急患者の受入れが3月で9人以上であること

 ウ 在宅医療等の実績を1つ以上有すること

(要件を満たしていない場合は90/100に減算)

・ 在宅医療等の実績における退院時共同指導料2の算定回数の実績の要件について、外来在宅共同指導料1の実績を用いてもよいこととする。

 

4.入退院支援加算1に係る届出要件追加

・ 入院料・管理料1及び2: 許可病床数が 100 床以上のものについて、入退院支援加算1に係る届出を行っていない場合はは90/100に減算

 

5.救急対応要件の追加

 一般病床において地域包括ケア病棟入院料又は地域包括ケア入院医療管理料を算定する場合については、第二次救急医療機関であること又は救急病院等を定める省令に基づき認定された救急病院であることを要件とする。ただし、200 床未満の保険医療機関については、当該保険医療機関に救急外来を有していること又は 24 時間の救急医療提供を行っていることで要件を満たすこととする。

 

6.急性期患者支援病床初期加算及び在宅患者支援病床初期加算についての見直し

・ 急性期患者支援病床初期加算: 150点(14日限度)→ 400床以上 150点(ないし50点)、400床未満 250点(ないし125点)

・ 在宅患者支援病床初期加算: 300点(14日限度)→ 老健から 500点、介護医療院・特養・軽費老人ホーム・有料老人ホーム・自宅から 400点

 

7.療養病床ベースの地域包括ケア病棟入院料・入院医療管理料引き下げ

 地域包括ケア病棟入院料・入院医療管理料を算定する病棟又は病室に係る病床が療養病床である場合には、所定点数の 100 分の 95 に相当する点数を算定することとする。ただし、当該病棟又は病室について、自宅等からの入院患者の受入れが6割以上である場合、自宅等からの緊急の入院患者の受入実績が前三月で 30 人以上である場合又は救急医療を行うにつき必要な体制が届出を行う保険医療機関において整備されている場合においては、所定点数(100 分の 100)を算定する。

 

 地域包括ケア病棟入院料・入院医療管理料算定病床は、自院で急性期医療を終えた患者の受け皿として使われていることが多い。今回の改定の狙いは、自宅や介護施設からの重症度が比較的低い急性期患者を治療する病床としての機能を強化することにある。今回改定された各種要件は達成困難なレベルではない。急性期患者支援病床初期加算及び在宅患者支援病床初期加算の引き上げもあり、厚労省の思惑に乗った形での運用を転換する医療機関が増えるものと予測する。