在宅復帰を促進する条件が網の目のようにはりめぐらされた改定
平成26年度診療報酬改定説明会(平成26年3月5日開催)資料等についてにある平成26年度診療報酬改定説明(医科・本体) をみると、今回の診療報酬改定の最重要課題が、「医療機関の機能分化・強化と連携、在宅医療の充実等」であることがわかる。このことは、資料の10ページ、11ページに簡潔に図としてまとめられている。
医療機関が3群にまとめられ、お互いに重なりあっている。役割はそれぞれ以下のようになる。
- 高度急性期、急性期
- 高度な医療の提供
- 退院支援 等
- 地域包括ケア病床等 地域に密着した病床
- 在宅復帰困難な患者の受入
- 緊急患者の受入
- 在宅、生活復帰支援 等
- 長期療養
- 長期療養が必要な患者の受入
注意すべきは、高度急性期・急性期は、高度な医療が必要な患者の受入が中心であり、軽症だが緊急性のある患者に関しては、地域包括ケア病床等の地域に密着した病床が対応することになっていることである。このような病床を持っている医療機関は、さらに高度急性期・急性期から在宅復帰な患者を受入し退院調整を行なう役割と、在宅患者への支援を行なうという、複数の役割が期待されている。いわゆる保健・医療・福祉複合体としての機能をもっている、地域の中小病院が想定されている。
在宅復帰に関わる要件として、高度急性期・急性期(自宅等退院患者割合)、地域包括ケア病棟(在宅復帰率)、長期療養・病床(在宅復帰率に係る加算)が新たに導入された。回復期リハビリテーション病棟も含め、在宅復帰を促進する条件が網の目のようにはりめぐらされている。
各種要件をまとめると、次のようになる。
- 7対1入院基本料: 自宅等に退院した患者の割合 75%以上(30ページ)
- 地域包括ケア病棟入院料(入院医療管理料)1: 在宅復帰率7割以上 (39ページ)
- 回復期リハビリテーション病棟1: 在宅復帰率7割以上(2は6割以上) (39ページ)
- 療養病床 在宅復帰機能強化加算 10点(1日につき)の要件:在宅に退院した患者(1ヶ月以上入院していた患者に限る)が50%以上(37ページ)
- 老健: 在宅復帰率(介護保険) 在宅復帰支援型の老健>5割 上記以外(在宅復帰・在宅療養支援機能加算を算定する場合 >3割 (資料1−2平成24年度介護報酬改定の概要(PDF:675KB)34〜35ページ)
- (算定日が属する月の前6月間において)入所者の退所後30日以内(当該入所者が要介護4又は要介護5である場合は14日以内)に、当該施設の従業者が居宅を訪問し、又は居宅介護支援事業者から情報提供を受けることにより、退所者の在宅における生活が1月以上(当該入所者が要介護4又は要介護5である場合は14日以上)、継続する見込みであること。
7対1入院基本料に関しては、平成26年度診療報酬改定関係資料 III-1 通知 の702/1,573ページに、次のような規定が明記されている。
(1) 7対1入院基本料(一般病棟入院基本料、専門病院入院基本料及び特定機能病院入院基本料(一般病棟に限る。))に係る自宅等に退院するものとは次のア、イいずれにも該当しない患者をいう。
ア 他の保険医療機関(地域包括ケア病棟入院料(入院医療管理料を含む)、回復期リハビリテーション病棟入院料及び療養病棟入院基本料1(在宅復帰機能強化加算を算定するものに限る)を算定する病棟及び病室を除く)に転院した患者
イ 介護老人保健施設(介護保険施設サービス費(I)の(ii)若しくは(iv)、ユニット型介護保険施設サービス費(I)の(ii)若しくは(iv)又は在宅復帰・在宅療養支援機能加算の届出を行っているものを除く)に入所した患者
7対1入院基本料を算定している病院にとっては、自宅等に退院した患者の割合75%以上を確保するためには、単なる転院ではダメであり、地域包括ケア病棟入院料(入院医療管理料を含む)や回復期リハビリテーション病棟入院料を算定する病棟など以外は忌避される可能性があることである。例えば、転院時に一般病棟に入院させ、その後に地域包括ケア病棟や回復期リハビリテーション病棟に転棟させるというやり方をとっている場合には、問題となる。
地域の医療機関相互の連携を高めるためには、複雑な診療報酬体系を理解しないといけない。余計な仕事がまた増えたという思いと同時に、少ない準備期間で対応をしなければいけないという焦燥感を感じる。