地域包括ケア病棟・病床の主な対象は整形外科疾患

 地域包括ケア病棟入院料・入院医学管理料の調査において、主な対象は整形外科疾患であることが明らかになった。

 中央社会保険医療協議会(中央社会保険医療協議会総会) |厚生労働省、第489回(2022年9月22日)資料総-2-2(PDF:16,913KB)に、次のようなグラフがある。

 

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 全体をみると、大腿骨転子部骨折・大腿骨頚部骨折が多く、あわせて26.2%となっている。ついで、腰椎圧迫骨折が13.0%となっている。腰部脊柱管狭窄症も9.2%となっており、約半数が整形外科疾患である。自宅等と一般病棟とを比べてみると、大腿骨転子部骨折・大腿骨頚部骨折は一般病棟からの移動が、腰痛圧迫骨折は自宅等からが多い。地域包括ケア病棟・病床でも手術・麻酔は出来高払いとなっているためか、大腿骨転子部骨折・大腿骨頚部骨折でも直接自宅から入院するものも少なからずいる。

 誤嚥性肺炎・肺炎、うっ血性心不全・慢性心不全、尿路感染症廃用症候群といった病名が残りを占める。治療後の廃用症候群に相当する群である。なお、脳血管障害はこのリストには含まれておらず、きわめて少数と推測する。

 

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 回復期リハビリテーション病棟の疾患構成の年次推移は上図のとおりである。脳血管系は減少傾向にあるが約45%となっている。整形外科系とあわせ、90%以上を占めている。

 上記2つの調査結果をみると、回復期リハビリテーションが必要な患者のうち、脳血管系患者は回復期リハビリテーション病棟へ、整形外科系は回復期リハビリテーション病棟と地域包括ケア病棟・病床へ分かれて移動している現状がわかる。

 

 それでは、回復期リハビリテーション病棟と地域包括ケア病棟・病床が両方ある病院の場合、整形外科疾患をどのように割り振るのが適切なのだろうか。両者の大きな違いは、疾患別リハビリテーション料が出来高かどうかということと入院期間の上限である。

 地域包括ケア病棟・病床では、疾患別リハビリテーション料が包括となっている。病棟全体で平均して1日2単位以上行うことが求められているが、この数値を大きく超えて実施されることは経営上困難である。入院期間の上限も、回復期リハビリテーション病棟で骨折術後が90日であるのに対し60日となっている。したがって、疾患別リハビリテーション料を集中的に行う必要がある患者は利用しにくく、次のような両極端の群が対象となる。

  • 受傷前自立度が高い。手術後早期にリハビリテーションを開始でき、認知機能が保たれていて自主訓練も可能である。
  • 受傷前自立度がベッドサイドレベル以下で、歩行が自立していない。リハビリテーション効果が期待できず、ベッド上要介助レベルにとどまる。

 一方、運動機能や認知機能に低下していて屋内生活レベルだった高齢者が、尻もちのような軽度外力で大腿骨頚部骨折を起こした場合、再転倒対策も含めリハビリテーションに時間や手間がかかる。このような患者はやはり回復期リハビリテーション病棟の方が望ましい。

 上記のような患者の割振りは、紹介元医療機関でも考慮すべきである。ただし、急性期病院で在院日数短縮化が迫られている状況からすると、集中的なリハビリテーションが必要な患者も包括性病棟に転院となってしまう可能性がある。なかなか難しい問題である。