回復期リハ病棟に転院できない理由

 日本リハビリテーション医学会社会保険等委員会が行った調査、急性期病院における回復期リハビリテーション病院への患者転院および回復期リハビリテーション病院における患者受け入れについてのアンケート調査の結果報告がWeb上に公開されている。
 日本リハ医学会認定研修病院の指導担当のリハ科専門医のいる急性期病院と回復期リハ病棟に対してアンケート調査が行われた。リハ科専門医が「専門的リハ施設の転院と集中的な専門リハが医学的に適当」と判断しながら転院できなかった症例と、回復期リハ病院に入院依頼があったが入院ができなかった症例の検討が行われている。


# 「回復期リハ病院に転院できなかった理由」(急性期病院) n=835人

  • 医学的管理(酸素投与、高価な内服薬、内科疾患、リスク等)が困難であるため (35%)
  • 疾患の治療または併存疾患・合併症の治療のため2ヶ月以内に転院できなかった (29%)
  • 自宅退院の目途が立っていないなど社会的理由があるため (14%)
  • 頸髄損傷・類似状態を受け入れ可能な回復期リハ病棟のベッド数が極めて少ないため (4%)
  • その他の理由による (18%)


# 回復期リハ病院に入院不可能だった理由(回復期病院)(147病院の複数回答)

  • 医学的管理が困難なので (22%)
  • 入院から転院までが2ヶ月を超えていたので (18%)
  • 満床であったため (16%)
  • 機能回復が困難と判断したので (13%)
  • 自宅復帰などゴール設定に難渋しそうなので (8%)
  • 介護・看護度が大きく手間がかかりそうなので (5%)
  • その他 (18%)


 急性期病院でリハ科専門医が担当し『専門的リハ施設の転院と集中的な専門リハが医学的に適応』と判断したが、回復期リハ病棟を有する病院へ転院できなかった症例は全体の22%だった。一方、回復期リハ病棟を有する病院で入院依頼のあった症例のうち、入院ができなかった症例が約24%いた。

このことから、急性期病院から回復期リハ病棟を有する病院への転院困難例が20%以上存在することが推測された。そして、急性期病院から転院できなかった理由と回復期リハ病棟を有する病院へ転院できなかった理由の上位の2つは共通した事項であり、リスク管理などの医学的管理の問題と発症から2カ月超えの制度上の問題であった。


 本報告はリハ科専門医でかつ指導医がいる施設に対するアンケート調査である。したがって、リハ適応の基準についてはかなり厳格なものとなっているはずである。リハ科医師は需要に比し少ない。急性期病院においても回復期病院においても、リハ適応に対する適切な判断がされないために回復期リハ病棟に転院できない症例は、本報告が示した20%以上という数値よりかなり多いのではないかと危惧する。


 なお、本報告が載った「リハビリテーション医学1月号」に、回復期リハビリテーション病棟における気管切開患者の転帰という興味深い論文が掲載されている。初台リハビリテーション病院では気管切開患者の受け入れ制限はしておらず、全患者の2.5%に気管切開を有している患者がいたとのことである。


 気管切開、吸引、酸素投与などの呼吸器管理、経管栄養、中心静脈などの栄養管理、インスリン等の高価薬使用、認知症のBPSD対応など、回復期リハ病院側における医学的管理能力向上が求められる。なお、日常生活機能評価(看護必要度)を用いなくても、これら医学的管理の必要性がある患者の実数を調査するだけで、重症患者の受け入れ状況は十分調査可能である。