P4P導入、リハに国レベルで導入したのは日本が初めて

 医学書院/週刊医学界新聞 第2805号 2008年11月10日、(『総合リハビリテーション』第36巻11号より)  2008年の医療制度改革を語るより、「医療の質に基づく支払い」(pay for performance;以下,P4P)に関する二木立氏の発言を紹介する。


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  • P4P導入の本当のターゲットは療養病床
    • 厚労省は,医療保険の対象を急性期と亜急性期の医療に純化する方向。
    • まずリハで試行して,問題がなければ次の改定で在宅等退院率,回復度などを用いて医療療養病床をランク分けする,あるいはそれを通して医療療養病床をできるだけ介護保険施設に誘導しようとしている。
  • 国際的にみると,P4Pを入院医療で,なおかつリハに国レベルで導入したのは日本が初めて
    • イギリスは外来のみ。
    • アメリカはメディケアの試行事業を入院医療で行っているが,評価基準をエビデンスに基づいて十分に説明できないため,リハとナーシングホームは除外されている。
  • 海外で使われている指標の大半は,ストラクチャーかプロセス指標
    • アウトカムの指標というと,唯一手術後の死亡率を使っているものが一部にあるぐらい。*1
    • 医療には不確実性があるため,アウトカムを前面に出してしまうと,医療者側が責任を負わされる。現在の医療サービス研究や医療経済研究からみて,アウトカムを前面に打ち出すのは難しい。
    • 本来,P4Pは,プロセスをきちんと管理しようというもの。
  • 質を担保するための導入
    • 医療費は増えるか,財政中立。
    • 日本の場合は,医療費抑制と結びつけたので,話がすごくこじれている。
  • 大事なのは,これが「試行」だということ
    • DPCに見習って,質の担保された病院で厳格にモデル事業を行い,その後,順次に対象を広げていくべきだった。


 回復期リハビリテーション病棟に対する成果主義導入は、英米におけるP4Pの動向と比しあまりにも稚拙である。本施策は、医療の質を向上させるために導入されたものではない。医療費抑制のために実施された。二木立氏は、同じような枠組みが今後療養病棟にも導入され、病院から費用が安い介護施設への変更が促されるだろうと指摘する。要医療の長期入院患者の居場所が今後もますます減っていく。
 2008年診療報酬改定では、疾患別リハビリテーション料が削減された一方、回復期リハビリ病棟入院料Iには重症者回復加算が新設された。回復期リハビリテーション病棟を運営するうえで、厚労省が示した条件をのまない限り、経営的には大きなダメージを受けることになった。このため、成果主義導入に対し表立った反対論は広がらなかった。リハビリテーション医療関係者は毒まんじゅうをあえて喰らった。
 亜急性期医療を回復期リハビリテーション病棟に集約させる流れは今後も強まる。その中で、在宅等復帰率を引き下げる重症患者、家族介護力がない患者が回復期リハビリテーション病棟から排除される惧れが強まる。リハビリテーション医療の適応を広げ、重症者を拒まず数多く受け入れている病院の方がペナルティーを受けることになる。異常事態が常態化しようとしている。

*1:「P4Pのすべて −医療の質に対する支払い方式」 第4節 米国公的医療保険におけるP4P、111ページに表1がある。この表に載っている5領域34指標中、アウトカムの項目は次の7指標である。急性心筋梗塞:院内死亡率、心臓バイパス手術:院内死亡率、術後出血・血腫、術後の生理的異常・代謝異常、股関節・膝関節置換術:術後出血・血腫、術後の生理的異常・代謝異常、退院後30日以内の再入院。