「不慮の事故死亡統計」にみる転倒・転落、窒息対策の重要性
2010年3月4日、厚生労働省:平成21年度「不慮の事故死亡統計」の概況が公表された。
「不慮の事故死亡統計」について
「不慮の事故死亡統計」は、毎年公表している人口動態統計をもとに、日本において発生した日本人の不慮の事故による死亡の動向について時系列分析や新たに多面的な分析を行い、人口動態統計特殊報告として取りまとめたものである。
なお、この「不慮の事故死亡統計」は、昭和59(1984)年度「不慮の事故及び有害作用死亡統計」に続いて今回で2回目である。
医療機関や介護施設でのリスク管理上、興味深い点をピックアップして紹介する。
本統計で取り扱われている「不慮の事故」として、交通事故、転倒・転落、溺死、窒息、火災、中毒、その他がある。
年次推移をみると、交通事故が大幅に減少していることが分かる。既に1位は窒息となっている。転倒・転落、溺死もほぼ交通事故と同水準になっている。
年齢階級ごとにみると、高齢になればなるほど「不慮の事故」による死亡が増える。平成7年と平成20年を比較すると、交通事故でほぼ全ての年齢階級で死亡率が半減しているが、転倒・転落、溺死、窒息ではわずかな低下にとどまっている。
月別にみると、6月、9月に少なく、12月、1月に多い。窒息と溺死は冬場に多い。
年齢階級と不慮の事故の種類との関係をみると、年齢が高くなるにつれて、転倒・転落や窒息が多くなっている。溺死は70〜84歳では、20%を超えるがその後比率は減少する。
発生場所別にみた交通事故以外の不慮の事故による死亡数の年次推移は次のとおりである。なお、病院は公共の施設、介護施設は居住施設に含まれる。
交通事故以外の不慮の事故について傷害の発生場所別に平成7年以降の死亡数の年次推移をみると、総数では阪神・淡路大震災があった7年を除くと増加傾向にあるが、居住施設は7年の544人から20年の1,452人まで一貫して増加しており、家庭は8年の10,500人から20年の13,240人まで、増減を繰り返しながら増加傾向にある。一方、公共の地域は平成7年の1,639人から20年の1,295人まで、工業用地域は7年の1,304人から20年の668人まで、その他は7年の3,588人から20年の2,966人まで、それぞれ増減を繰り返しながら減少傾向にある。
平成20年の交通事故以外の主な不慮の事故の種類別死亡数構成割合を発生場所別にみると、構成割合が高いのは、家庭では溺死と窒息、居住施設では窒息、公共の地域では転倒・転落と窒息となっている。