リハビリテーションに関する次回診療報酬の概要
リハビリテーションに関する次回診療報酬の概要が明らかになった。中央社会保険医療協議会 総会 (第211回) 議事次第 平成23年12月7日(水)、医療提供体制(その4:院内体制、リハビリテーション/病院従事者負担軽減、チーム医療、院内感染対策、リハビリテーション、薬剤師の病棟業務等)、資料(総−1−1)(PDF:5271KB)の142〜186ページに該当資料がある。
結論部分を引用する。
課題と今後の方向性 (リハビリテーション)
- 回復期リハビリテーション病棟について、重症(日常生活機能評価の得点が高い)の者ほど改善率や在宅復帰率が悪くなること経鼻経管栄養や膀胱留置カテーテル等何らかの医学的処置の必要がある者が15%程度いることがしめされている。
- 重症の者を受け入れている病棟で、看護職員、リハビリ職員の配置と在宅復帰率を比較すると、配置が平均より厚い病棟の方が低い病棟よりも在宅復帰率がよい。
- 発症早期からのリハビリテーションについて、現在45日間、一律の評価しているが、発症後1週間、2週間の超早期リハの介入効果は大きく、急性期病棟の病室等でリハビリテーションが提供されている。
- 外来リハビリテーションはリハビリテーション提供前の診察を必須としているが、専門医が一定の頻度の診察でリハビリテーションの効果を評価可能と考える患者が約9割いる。
- 標準算定日数上限以内でリハビリテーションを終了した者は92%、維持期のリハビリテーションを提供後、終了した者は4.3%で、制度の変更を勘案する必要はあるが、平成18年の同様の調査と比較すると、標準算定に数を超えて医療保険で維持期リハビリのニーズは減少する傾向にある。
- 維持期のリハビリテーションが介護に移行できない理由として、「自院・近隣で通所リハビリを提供していないから」は5.3%で、「維持期のリハビリは現行の13単位内で提供できるから」は62.2%であった。
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【今後の方向性】
- 回復期リハビリテーション病棟について、より充実した体制で医学的処置の必要のある者や、より重症な者を受け入れ、状態改善や在宅復帰を十分行っている場合の評価について検討してはどうか。
- 発症早期からのリハビリテーションについて、より早期からのリハビリテーションを重点的に評価してはどうか。
- 外来リハビリテーションについて、リハビリテーション提供早期など患者の状態が安定せず、リハビリテーション計画の検証、変更が必要な場合は、医師の診察を要するものの、状態が安定している場合は医師の包括的な指示のもと、PT等リハビリテーションスタッフが患者の観察を行いながら、リハビリテーション計画に基づくリハビリテーションを提供し、医師は患者の急変時には速やかに対応できる体制は維持しつつ、カンファレンス等でリハビリテーションの効果や進捗状況を確認することを可能としてはどうか。
- 急性期、回復期リハビリテーションは主に医療保険、維持期リハビリテーションは主に介護保険、という医療と介護の役割分担を勘案し、維持期の脳血管疾患等リハビリテーション、運動器リハビリテーションについては、医療から介護へ円滑な移行を促進する措置を講じながら、維持期にふさわしい評価とするとともに、要介護等認定者に対するこれらは原則次回改定までとするが、次回改定時に介護サービスの充実状況等を確認することとしてはどうか。
回復期リハビリテーション病棟再編、早期リハビリテーション加算の段階化(超急性期リハビリテーションの評価)、外来リハビリテーション時の診察義務条件変更、そして、算定日数上限超リハビリテーションを介護保険に移行させるための対策強化が検討されている。
# 回復期リハビリテーション病棟再編
回復期リハビリテーション病棟でいう「より充実した体制で医学的処置の必要のある者や、より重症な者を受け入れ、状態改善や在宅復帰を十分行っている場合の評価」とは、資料をみる限り、下記項目が検討されているように思える。
- より充実した体制: 看護職員数、専従リハビリテーション職員数
- 医学的処置の必要のある者: 気管切開、胃瘻、経鼻経管栄養、膀胱留置カテーテル、点滴・IVH、褥瘡処置がある患者数
- より重症な者: 日常生活機能評価点数に基づく重症患者比率、(+ 病棟全体の平均日常生活機能評価点数?)
- 状態改善: 重症患者改善率
- 在宅復帰を十分行っている: 在宅復帰率
# 早期リハビリテーション加算の段階化(超急性期リハビリテーションの評価)
発症または術後2週間までの評価とそれ以降(45日目まで?)の評価の2段階化することが案として出されている。2006年にいったん廃止された規定への先祖帰りである。なお、資料では現行の早期加算は45日目まで対象となっているが、30日の誤りである。加算点数45点に引きずられたのではないかと推測する。
# 外来リハビリテーション時の診察義務条件変更
カンファレンスの義務化、状態変化時にはいつでも診察可能な体制とのセットとしたうえで、一定の頻度で診察を行う体制への移行が検討されている。
# 算定日数上限超リハビリテーションを介護保険に移行させるための対策
介護保険との同時改定に関わる部分である。結論のところだけみても、何が言いたいかは良くわからない。資料の途中には次のような表現がある。
維持期のリハビリテーションについては月13単位まで医療保険で算定可能としているが、介護サービスによる受け皿作りが困難な心大血管疾患・呼吸器リハビリテーションは引き続き評価を行いつつ、脳血管疾患等・運動器リハビリテーションについては、維持期としてふさわしい評価とし、診療報酬改定毎に介護保険におけるリハビリテーションの充実状況を踏まえながら縮小を検討していく。
医療保険と介護保険の併給期間を毎月移行への計画を策定した場合には、現在の1か月から例えば2か月に延長し、円滑な移行を図ってはどうか。
世論の反発を浴びた経験をふまえながら、少しずつ維持期リハビリテーションを介護保険に移行させたいという厚労省の意向が見え隠れする。
診療報酬の伸び率がゼロ%前後で検討されている状況で、リハビリテーションが単純にプラスとなることはない。特に回復期リハビリテーション再編に関していうと、高い基準が作られたら従来の基準の病棟はマイナス改定となる。医療機関経営を左右しかねない重大な問題である。看護職スタッフ確保は必須となる。また、改善の可能性があるが早期であるため医療処置を継続している患者の奪い合いが起こるのではないかと危惧する。