月末症候群

 ご家族の意向を尊重し、退院日を決めようとすると、どうしても月末に集中する。私はこの事象を月末症候群と名づけている。
 「あともう少し、せめて月末までリハビリテーションをしてから帰りたいのですが。」と言われると、むげに断れない。医師の方でも、退院困難例を説得する場合、「長くても○月いっぱいですよ。」と言ってしまう。
 類似の現象として、「年末年始症候群」や「ゴールデンウィーク症候群」がある。「せめてお正月くらいは自宅で過ごしたいので、そこを目標として頑張る。」という気持ちはよく理解できるし、医療従事者もはっぱをかけてしまう。
 「異動前症候群」というのもある。「私は○月○日で、次の病院に移るので、一緒に卒業しましょう。」と言うと、何故か本人やご家族も踏ん切りがつく。
 いずれの場合も、急に病棟ベッドが空き、稼動が落ち、病院経営に悪影響を及ぼす。当院では回復期リハビリテーション病棟2病棟で平均して毎週7〜8名の新規患者を受け入れている。医師体制上の問題からすると、これ以上の新規患者を受け入れるのは辛い。したがって、月末症候群などで退院患者が通常以上に多くなると、予算ベッド数回復まで時間がかかる。
 月末症候群という現象があることを理解し、意識的に退院日を決める際に分散するように対策をたてる必要がある。ただ、まとめて退所という現象は老健施設でもある。急に入所が決まる場合もあり、医療機関側の思惑だけでは退院日の調整はできない。
 日本では、病床稼動割合がほぼ100%に近づかないと黒字にならないという経営構造になっている病院は多い。本来なら、多少の空床があっても余裕がある構造にならないといけないのだが、現実的には厳しい。
 今日も、ご家族が仕事を辞め介護する都合から、「今月末に退院します。」と言われ、おもわずOKを出してしまった。毎回反省をしているのだが、なかなかうまくいかない。