看護必要度における判断基準変更

 日本医師会編「改定診療報酬点数表参考資料(平成20年4月1日実施)」が届いた。厚労省の通知では、前回との比較が困難だったが、本資料ではどこが変更されたかがよくわかる。


 驚いたことがある。看護必要度の弊害(まとめ)というエントリーを記載した時、看護必要度には少なくとも以下の5種類があると記述した。


 上記のうち、「重症度に係る評価票」は2002年度から、「重症度・看護必要度に係る評価票」は2004年度から、診療報酬算定に関する基準として既に導入されている。
 診療報酬に係る評価票の記入にあたっての注意事項として、次のような記載がされている。

 評価票の記入は、院内研修を受けたものが行うものであること。なお、院内研修は、次に掲げる所定の研修を終了したもの(修了証が交付されているもの)若しくは評価に習熟したものが行う研修であることが望ましい。


 当然のことながら、厳密さが求められている以上、評価点数や判断基準には変更がない安定したものでなければいけない。しかし、2006年度版と2008年度版を比べてみると、ICU用の「重症度に係る評価票」もハイケアユニット用「重症度・看護必要度に係る評価票」も変更がなされている。


 例えば、ICU用の「重症度に係る評価票」は、2006年度版では、A得点0-18点、B得点0-8点で採点し、A得点が3点以上、またはB得点が5点以下という判断基準となっていた。
 2008年度版では、A得点は0-18点で変化がないが、B得点の採点方法が変更されている。今までは、「寝返り」ができるが2点だったが、2008年度からは「寝返り」ができるが0点となり、重症度点数配分を逆にしている。このため、判断基準もA得点が3点以上、またはB得点が3点以上となっている。


 ICU用の「重症度に係る評価票」もハイケアユニット用「重症度・看護必要度に係る評価票」におけるB得点の判断基準の中に、次のような記述がある。

 評価は、日勤時間帯における患者の状態を観察して行い、推測は行わない。


 この記載は、2008年度版では、次のように改変されている。

 評価は24時間(前日の評価後から本日の評価時刻まで)の記録と観察に基づいて行い、推測は行わないこと。


 患者の状況は、変化しうる。日勤帯だけの評価が24時間での評価に変わっただけで、採点が異なってくる。2006年度に院内研修を受けた者は、2008年度あらためて研修を受けないと、誤った評価をしてしまうことになる。


 診療報酬のたびに、判断基準がころころ変更される評価票に信頼性はない。看護必要度という幻想が、日本の医療に多大な弊害を及ぼしている。