2008年度診療報酬改定に関する日本リハ医学会理事のコメント

 m3ニュースに、2008年度診療報酬改定に関する日本リハ医学会里宇理事のコメントが掲載された。引用する。

 2008年度 診療報酬改定 現場はどう見る/日本リハ医学会・里宇理事 リハ医療と報酬体系のあるべき姿検討へ 学会内で検討、関連学会・団体にも議論を拡大 リハ提供・利用者の視点に立った改定に


記事:Japan Medicine
提供:じほう
【2008年3月12日】


 日本リハビリテーション医学会社会保険等委員会の里宇明元担当理事(慶応大リハビリテーション医学教室教授)は7日、本紙の取材に対し、今後、リハビリ医療の診療報酬体系の在り方について中・長期的展望に立って検討する必要があるとの考えを明らかにした。里宇理事は、現実に運用されている現行の疾患別リハビリ体系について、「本来、障害を総合的にとらえアプローチしていくリハビリ医療の評価体系は、どのような姿が望ましいのか。診療報酬としてどう落とし込むのかなどを検討したい」と話す。社会保険等委員会で検討を進める計画だ。


 学会としてリハビリ医療の在り方に関する考え方をまとめ、関連学会・団体などとの協議も進めながら、今後のリハビリ医療の報酬体系を考える基盤にしていきたい意向だ。里宇理事は、「診療報酬改定のたびに繰り返される施設基準などの変更は、医療現場に大きな影響を与えていることも事実だ。基準の変更によって改善される点もあるが、リハにおける診療報酬改定に対する中・長期ビジョンを示すことも必要ではないか」と指摘している。


 リハビリテーション医療再生を目指してというエントリーで、日本におけるリハビリテーション医療の歴史をまとめた。めまぐるしく変わるリハビリテーション医療の施設体系に現場は振り回されている。特に、2006年以降はその傾向が著しい。

  一方、2008年度のリハビリ医療に関する診療報酬改定に対して里宇理事は、各医療機関の患者の疾患構成・病期などで影響度が変わるとした。今後、学会として同改定に対する会員施設のアンケート調査などを踏まえて検証作業を実施し、結果を学会誌に公表したいとした。また、里宇理事は「今回は、疾患別リハビリ料Iの減点や回復期リハビリ病棟料における質の評価の導入など、リハビリ医療に大きな影響を与える改定が行われた。その点についても十分検証していく必要がある」とした。さらに、回復期リハビリ病棟については、9月から質の評価が導入される。点数設定そのものも厳しいとの現場の声が多い。この点について里宇理事は、「質の評価については、答申に盛り込まれていたように検証が不可欠と考えている」と強調。「医師を専従から専任にするなど回復期リハビリの施設基準が緩和されている。これは、回復期リハビリを普及させるという観点からは、現実的な判断ではないか」との認識を示した。

 正確には、「回復期リハビリテーション病棟への質の評価」は、9月からではなく既に始まっている。遅くとも4月からは始まる。学術団体であるため、どうしても奥歯に物がはさまった発言しかできない。しかし、「質の評価については、答申に盛り込まれていたように検証が不可欠と考えている」と強調、という部分や、点数設定そのものも厳しいとの現場の声が多い、という記載をみる限り、リハビリテーション医学会としても、「回復期リハビリテーション病棟への質の評価」をリハビリテーション医療の本質に関わる大問題と捉えていると信じる。

厚労省との協議の場は今後も堅持


 里宇理事は今回の改定では、リハビリ関連学会からの要望を踏まえて、早期リハビリ加算の算定のほか、疾患別リハビリ料逓減制の撤廃、算定除外対象以外の対象者に対する月13単位までのリハビリ料の算定など、医療機関がリハビリ医療を提供しやすくなった部分も少なくないとの認識も示した。
  中でも、今回の心大血管リハビリの引き下げ幅が大きく、慶応大病院においても、一定の影響を受けるという。里宇理事は、「これまで普及が著しく遅れていた心大血管リハビリは、施設基準を緩和することで、国内における心リハビリの普及を図ることをまず優先するということではないか」との見方を示し、今後も継続して心リハビリを提供していく考えを示した。
  さらに、脳血管疾患リハビリについても、施設基準・点数を現行の2階建てから3階建てにすることで、これまで低い評価であった医療機関が、リハビリを提供しやすくなることが予測されるという。また、呼吸器リハビリについても、作業療法士の関与や術前リハビリが認められるとし、「リハビリ医療の提供者・利用者の視点に立った改定を行っていることでは評価したい」と述べた。
  ただ、今後、今回の改定に伴い医療現場として不都合な点があれば、改善していかないといけないとも述べ、学会で実施するアンケート調査結果を重視していく考えだ。さらに、里宇理事は「今回の改定では、リハビリ関連学会などと厚生労働省間でリハビリ診療報酬について議論できる場ができていたのではないか。双方向での議論は、今後も継続できれば意義があると考えている」との認識を示した。


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 早期リハビリ加算の算定のほか、疾患別リハビリ料逓減制の撤廃、算定除外対象以外の対象者に対する月13単位までのリハビリ料の算定の3つに関しては、積極的な評価がなされている。厚労省通知を見る限り、算定日数除外規定は残っている。疾患別リハビリテーション医学管理料撤廃の代わりに月13単位までの制限が導入されたようだ。リハビリテーション実施計画書記義務化載の問題もふまえ、患者に対する不利益が生じないのかどうか、確認していきたい。
 心大血管リハビリテーション料の引き下げは、施設基準緩和による普及を目指しているとのことである。実際、心大血管リハビリテーションを行っている施設の先生に聞いたところ、同意見だった。脳血管リハビリテーション料の3段階化、呼吸器リハビリテーション基準の変更も同様に高く評価されている。
 こうしてみると、脳血管疾患等リハビリテーション料Iの引き下げがやけに厳しくみえる。代償なしでの引き下げである。脳血管疾患が医療費削減のターゲットにされているという印象を強く持つ。