胃瘻造設をめぐる中医協議論
胃瘻造設をめぐり、中医協で議論が行われている。関係するのは、以下の3つの資料である。
- 中央社会保険医療協議会 総会(第313回)平成27年11月18日、診療報酬改定結果検証部会からの報告について、総−5−1(PDF:3,376KB)(胃瘻の造設等の実施状況調査)
- 中央社会保険医療協議会 総会(第316回)平成27年12月2日、個別事項(その5;リハビリテーション)について
- 中央社会保険医療協議会 総会(第319回)平成27年12月11日、個別事項(その6:技術的事項等)について 総−1(PDF:7,358KB)
【関連エントリー】
PEG施行件数は長期低落傾向(2015年11月29日)
平成27年度診療報酬改定の概要は下記のとおりである。
以下の点で改定が行われた。
(1)胃瘻造設術料の大幅な引下げがなされた。特に年間胃瘻造設術件数が50件以上の施設は、より厳しい報酬設定となった。
(2)嚥下造影または嚥下内視鏡検査を行った場合には、胃瘻造設時嚥下機能評価加算が設けられた。
(3)摂食機能療法に、経口摂取回復促進加算が設けられた。
(4)胃瘻抜去術の点数が追加された。
総−5−1(PDF:3,376KB)(胃瘻の造設等の実施状況調査)をみると、平成27年度診療報酬改定が現場に大きな影響を与えていることがわかる。
関連エントリーでも触れたが、PEG施行件数はもともと長期低落傾向にあり、2008年度の年間約10万件が2014年度には約6万件と大幅に減少している。今回の診療報酬改定の結果、胃瘻造設術が減ったと回答したのが、全体では21.1%、年間50件以上施行している施設では30.9%に及ぶことをみると、胃瘻造設抑制の傾向はさらに強まっている。
基本点数の減少を補う意味も含め、胃瘻造設前に嚥下機能検査を行う施設が増えている。特に胃瘻造設件数が50件以上の施設では、胃瘻造設前に嚥下機能評価を行う患者が増えたという質問に、大いにあてはまる、あてはまると答えた施設が46%に及ぶ。また、胃瘻造設時嚥下機能評価加算の届出を行っている医療機関は、全体の46%となっている。しかし、胃瘻造設件数が50件以上の医療機関に限ると、届出を行っている医療機関は全体の13%にとどまっている。
胃瘻造設件数が50件以上と多い医療機関からすると、診療報酬が80/100とならないための規定、全例に嚥下機能評価を行う、経口摂取回復率35%以上という2つの規定は、ハードルが高すぎる。特に、胃瘻・鼻腔栄養とも退院・転院が多く、1年以内の経口摂取回復率を調べることなど到底不可能である。同様の理由で、経口摂取回復加算の届出は、胃瘻造設件数が50件以上の医療機関ではゼロとなっている。
以上をふまえ、今回の診療報酬改定では、胃瘻造設および摂食機能療法に関し、次のような改定が行われようとしている。
「胃瘻造設の際に求められる嚥下機能の回復を評価する指標について、施設における嚥下機能やその回復の見込みを適切に評価できる体制や、嚥下機能の維持・向上に対する取組みに関する視点を取り入れることとしてはどうか。」という記載をみると、アウトカム評価だけでなく、ストラクチャーとプロセスの評価を取り入れることになると予想する。具体的には、多職種が関わって、嚥下評価・口腔ケア・食事工夫などを行うことを評価することが想定されている。
一方、摂食機能療法に関しては、「検査等によって他覚的に存在が確認できる嚥下機能の低下」とあることより、嚥下造影や嚥下内視鏡が義務づけられる可能性が高い。なお、「経口摂取回復促進加算の要件として、経口摂取回復率35%の他、データ取得が比較的容易な短期のアウトカムについての基準等を設け、そのいずれかを満たした場合であれば評価する」に示されている「データ取得が比較的容易な短期のアウトカム」について何を示すのかはわからない。経口摂取と経管栄養を併用している状態でも評価するということかもしれない。