摂食機能療法の対象は「制限」ではなく「拡大」

 中央社会保険医療協議会 総会(第328回)、平成28年2月10日が開催され、平成28年度診療報酬改定の概要が明らかになった。答申について、総−1(PDF:3,645KB)に個別改定項目が記載されている。「II-3 質の高いリハビリテーションの評価等、患者の早期の機能回復の推進について」(169〜197ページ)が、リハビリテーション関連項目である。
 この中で、「摂食機能療法の対象の明確化等」(196〜197ページ)のうち、前半部分、対象者の拡大について取り上げる。

関連エントリー

第1 基本的な考え方
 摂食機能に対するリハビリテーションを推進する観点から、摂食機能療法の対象となる患者の範囲を拡大し、経口摂取回復促進加算の要件を緩和する。


第2 具体的な内容
1.原因にかかわらず、内視鏡下嚥下機能検査、嚥下造影によって他覚的に存在が確認できる嚥下機能の低下であって、医学的に摂食機能療法の有効性が期待できる患者を摂食機能療法の対象とする。


【摂食機能療法】
[算定要件]
 摂食機能療法は、摂食機能障害を有する患者に対して(中略)算定する。なお、摂食機能障害者とは、発達遅滞、顎切除及び舌切除の手術又は脳血管疾患等による後遺症により摂食機能に障害があるもの、及び他に内視鏡下嚥下機能検査、嚥下造影によって他覚的に嚥下機能の低下が確認できる患者であって、医学的に摂食機能療法の有効性が期待できるものをいう。


 関連エントリーにおいて、摂食機能療法に関しては、「検査等によって他覚的に存在が確認できる嚥下機能の低下」とあることより、嚥下造影や嚥下内視鏡が義務づけられる可能性が高いと予想をした。
 しかし、今回の改定案を見る限り、明らかに「患者の範囲を拡大し、経口摂取回復促進加算の要件を緩和する。」と記載されている。「発達遅滞、顎切除及び舌切除の手術又は脳血管疾患等による後遺症により摂食機能に障害があるもの」に加え、「内視鏡下嚥下機能検査、嚥下造影によって他覚的に嚥下機能の低下が確認できる患者であって、医学的に摂食機能療法の有効性が期待できるもの」を追加したという構図になっている。例えば、認知症患者で肺炎後に摂食嚥下障害が増悪した場合でも、医学的に摂食機能療法の有効性が期待できるものは、摂食機能療法の対象となるということである。ただし、内視鏡下嚥下機能検査、嚥下造影などの検査において、治療困難と判断されてしまうと、前者に含まれている脳血管障害等の後遺症者においても、摂食機能療法対象外と判断されかねない。対象者の「拡大」であることは間違いないが、「制限」の要素も含まれている改定と考える。