その他のリハビリテーション関連改定項目


 中央社会保険医療協議会 総会(第328回)、平成28年2月10日が開催され、平成28年度診療報酬改定の概要が明らかになった。答申について、総−1(PDF:3,645KB)に個別改定項目が記載されている。「II-3 質の高いリハビリテーションの評価等、患者の早期の機能回復の推進について」(169〜197ページ)が、リハビリテーション関連項目である。
 この中で、「心大血管疾患リハビリテーション料の施設基準等の見直し」(186〜187ページ)、「生活機能に関するリハビリテーションの実施場所の拡充」(188〜189ページ)、「運動器リハビリテーション料の評価の充実」(190ページ)、「リハビリテーション専門職の専従規定の見直し」(191ページ)、そして、「リンパ浮腫の複合的治療等」(192〜194ページ)について検討する。「摂食機能療法の対象の明確化等」については次回取り上げる。

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# 心大血管疾患リハビリテーション料の施設基準等の見直し

第1 基本的な考え方
 心大血管疾患リハビリテーションの普及を図るため、心大血管疾患リハビリテーション料の施設基準の緩和等を行う。


第2 具体的な内容
 心大血管疾患リハビリテーション料(II)の評価を充実するとともに、施設基準において、循環器科、心臓血管外科の標榜を求めている施設基準を緩和し、循環器科又は心臓血管外科の医師等がリハビリテーションを実施する時間帯に勤務していればよいこととする。


【心大血管疾患リハビリテーション 料】
 心大血管疾患リハビリテーション料 (I)(1単位)  205 点
 心大血管疾患リハビリテーション料 (II)(1単位)  105点 → 125 点


[算定要件]
 (略)別に厚生労働大臣が 定める患者(心大血管疾患リハビリテーション料(II)を算定する場合、 急性心筋梗塞及び大血管疾患についてはそれぞれ発症から1か月以上経過したものに限る。)に対して個別療法であるリハビリテーションを行った場合に、(略)所定点数を算定する。


[施設基準]
 心大血管疾患リハビリテーション料 (II)
 届出保険医療機関において、心大血管疾患リハビリテーションを実施する時間帯に循環器科又は心臓血管外科を担当する医師(非常勤を 含む。)及び心大血管疾患リハビリテーションの経験を有する医師(非常勤を含む)がそれぞれ1名以上勤務していること。

 心大血管リハビリテーションを普及させるために、循環器科や心臓血管外科の標榜がなくても実施できるようにするという提案である。具体的には、発症から1ヶ月以上経った心筋梗塞や大血管疾患を想定している。しかし、心大血管疾患リハビリテーション料(II)の方は、引き上げたと言っても1単位125点と極めて低い点数のままである。医師要件を緩和しても、点数が上がらない限り普及はしないのではないかと予想する。


# 生活機能に関するリハビリテーションの実施場所の拡充

第1 基本的な考え方
 社会復帰等を指向したリハビリテーションの実施を促すため、IADL(手段的日常生活活動)や社会生活における活動の能力の獲得のために、実際の状況における訓練を行うことが必要な場合に限り、医療機関外におけるリハビリテーションを疾患別リハビリテーションの対象に含めることとする。


第2 具体的な内容
 医療機関外におけるリハビリテーションを疾患別リハビリテーションの対象に含める。


[算定要件]
(1) 当該保険医療機関に入院中の患者に対する訓練であること。
(2) 心大血管疾患リハビリテーション料(I)、脳血管疾患等リハビリテーション料(I)、廃用症候群リハビリテーション料(I)、運動器リハビリテーション料(I)又は呼吸器リハビリテーション料(I)を算定するものであること。
(3) 以下の訓練のいずれかであること。
 1)移動の手段の獲得を目的として、道路の横断、エレベーター、エスカレーターの利用、券売機、改札機の利用、バス、電車、乗用車等への乗降、自動車の運転等、患者が実際に利用する移動手段を用いた訓練を行うもの。
 2)特殊な器具、設備を用いた作業(旋盤作業等)を行う職業への復職の準備が必要な患者に対し、当該器具、設備等を用いた訓練であって当該保険医療機関内で実施できないものを行うもの。
 3)家事能力の獲得が必要である患者に対し、店舗における日用品の買い物、居宅における掃除、調理、洗濯等、実際の場面で家事を実施する訓練(訓練室の設備ではなく居宅の設備を用いた訓練を必要とする特段の理由がある場合に限る。)を行うもの。
(4) 実施にあたっては、訓練を行う場所への往復を含め、常時従事者が付添い必要に応じて速やかに当該保険医療機関に連絡、搬送できる体制を確保する等、安全性に十分配慮していること。

 こちらは規制緩和であるが、訓練室以外(病棟、階段、病院敷地内の屋外)でのリハビリテーションが普及しているなか、今更ながらという感がする。


# 運動器リハビリテーション料の評価の充実

第1 基本的な考え方
 施設基準において求められる人員要件等を総合的に考慮し、運動器リハビリテーション料(I)の評価を充実させる。


第2 具体的な内容
 運動器リハビリテーション料(I)を増点する。


【運動器リハビリテーション料】
1 運動器リハビリテーション料 (I)  180点 → 185 点
2 運動器リハビリテーション料 (II)  170 点
3 運動器リハビリテーション料 (III)  85 点

 新たな条件はない。単純な増点である。


# リハビリテーション専門職の専従規定の見直し

第1 基本的な考え方
 リハビリテーションの施設基準における専従規定を見直し、各項目の普及を促進する。


第2 具体的な内容
1.難病患者リハビリテーション料において求められる「専従する2名以上の従事者」について、あらかじめ難病患者リハビリテーションを行わないと決めている曜日等において、他のリハビリテーション等の専従者と兼任できることとする。また、当該リハビリテーションを実施していない時間帯は、別の業務に従事できることとする。


2.第7部リハビリテーション第1節の各項目の施設基準のうち、専従の常勤言語聴覚士を求めるものについて、相互に兼任可能とする。ただし、摂食機能療法経口摂取回復促進加算については、前月の摂食機能療法の実施回数が 30 回未満である場合に限る。

 難病患者リハビリテーション料、および、専従の常勤言語聴覚士規定のある摂食機能療法経口摂取回復促進加算などに関する規制緩和である。


# リンパ浮腫の複合的治療等

第1 基本的な考え方
 リンパ浮腫に対する治療を充実するため、リンパ浮腫に対する複合的治療について項目を新設し、またリンパ浮腫指導管理料の実施職種に作業療法士を追加する。


第2 具体的な内容
1.リンパ浮腫に対する複合的治療に係る項目を新設する。
(新) リンパ浮腫複合的治療料
 1 重症の場合  200 点(1日につき)
 2 1以外の場合  100 点(1日につき)


[算定要件]
(1) リンパ浮腫指導管理料の対象となる腫瘍に対する手術等の後にリンパ浮腫に罹患した、国際リンパ学会による病期分類I期以降の患者。II期後期以降を重症とする。


(略)

2.リンパ浮腫指導管理料の実施職種に作業療法士を追加する。

 がんの術後に好発するリンパ浮腫に対するリハビリテーション充実を目指した改定である。