社会保険料事業主負担増なき法人税引き下げ

 民主党は、参議院選挙公約として、法人税引き下げを掲げた。


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 民主党は11日、党本部で政権公約会議を開き、参院選公約をまとめた。経済成長戦略では国際的に高い水準の法人税の引き下げを明記し、企業の競争力強化を図る。超党派の国会議員による「財政健全化検討会議」の設置も提案。消費税議論に消極的だった衆院選マニフェスト政権公約)の方針を転換する。菅直人首相が掲げる「強い経済、強い財政、強い社会保障」を実現する狙いだ。

民主参院選公約、法人税下げ明記 :日本経済新聞


 http://www.mof.go.jp/genan22/zei001.htmの、はじめに、第3章 各主要課題の改革の方向性、3.法人課税において、次のような分析がされている。

(1)現状と課題
 我が国の国税地方税を合わせた法人実効税率は、国際的にみると高く、国際競争力などの観点から税率引下げの必要性が指摘されるところです。他方で、法人所得課税の負担に社会保険料事業主負担をあわせてみると、国際的にも必ずしも高い水準ではないという見方もあります。また、租税特別措置により、実質的な企業の負担には産業によってばらつきが見られます(資料345参照)。


 日本は他の先進諸国と比し、法人税は明らかに高い。しかし、社会保険料事業主負担はドイツ、フランス、スウェーデンと比べ低い。アメリカは日本より事業主の公的社会保険料負担は低いが、民間医療保険料が重くのしかかる。

 自動車製造業に関するグラフをみると、日本は他の先進諸国と比べ、事業主負担が少ないことがわかる。アメリカは一見負担率が低いように見える。しかし、「なお、アメリカの企業が負担する民間医療費は、自動車製造業15.4%、情報サービス業1.8%、エレクトロニクス製造業2.1%、金融業0.7%であると推計されている。」という付記でわかるように、アメリカの自動車製造業では事業主負担が著しく高い。GMが破綻したのは、退職者にも手厚く民間医療保険料を支払っていたからである。日本の自動車産業では、正規労働者を派遣や請負に置き換えてきている。非正規労働者に対しては、社会保険料を払う義務はない。赤字になれば、税金は支払わなくても良いが、社会保険料は必ず負担しなければならないことを考えると、派遣事業者に多少お金を払ってもお釣りがくる。自動車メーカーが日本から逃げ出さないのは、その方が好都合だからである。
 社会保険料事業主負担増なき法人税引き下げは、企業に対する露骨な利益誘導である。財界の広告に依存しているマスコミも、この世論誘導に加担している。