ベッカムはイングランドを救えるか
サッカーW杯日本対オランダ戦は、惜しくも0対1という結果になった。オランダは決勝トーナメント進出を決め、カメルーンが敗退した。E組の残り1つの席は、6月24日に行われる日本対デンマーク戦の結果次第となる。他会場の結果を気にすることなく、目の前の勝負に集中できる。得失点差で1点上回る日本は、引き分けでもOKとやや有利な立場にいるが、実質的に負ければ終わりというトーナメントの初戦と考えた方が良い。
下馬評とは異なり、日本が健闘している要因のひとつとして、チームとしての一体感がある。TV画面をみても、まとまりの良さを感じる。スペインに対して歴史的勝利をあげたスイスにも同じ匂いがする。逆に、強豪といわれる国でも瓦解寸前の状態となっているところがある。大会が始まる前から、カメルーンは内紛状態であることが報道されていた。グループリーグ突破が絶望視されているフランスは、試合中に監督に反抗したFWアネルカが強制送還された。
優勝候補イングランドも、2試合を終えて勝ち点2と低迷している。アルジェリア戦後、悪童ルーニーは暴言を吐いて、マスコミの餌食となった。結果が出ないことで個性派集団が瓦解する可能性がある。代表チームの不調に対し激したファンの乱入事件が起こった。
[ヨハネスブルク(南アフリカ) 19日 ロイター]
サッカーのワールドカップ(W杯)南アフリカ大会に出場しているイングランド代表の控室に一人の男性ファンが侵入した件で、同代表に帯同中のデービッド・ベッカムが19日、暴徒の乱入ではなかったとコメントした。
(中略)
ベッカムによれば、そのファンはスタジアム内の控室に気軽に入ってきて、ベッカムに声をかけ、出て行ったという。「小競り合いも、暴力的な行為もなく、プレーに対する感想すら言わなかった。とにかく入ってきてあいさつしただけだ」と説明した。
サッカー=ベッカム、ファンの控室侵入は「暴徒ではない」 | ロイター
イングランドはフーリガンの本場である。厳戒な警備体制をくぐり抜け、チームの控室に来たファンがただの挨拶だけに来た訳でないだろう。その場にいたベッカムの機転で何事もなかったように取り繕われただけである。直前までウィリアム王子とヘンリー王子がいた。へたをすると、外交問題にも発展しかねない事態となっていた。
アキレス腱断裂で試合に出場できないベッカムは、チームの助言役として帯同している。ベッカムは、1998年のフランスW杯準々決勝で退場となり、「10人のライオンと1人の愚かな若者」という標語をつけられ、戦犯扱いとなった。2002年日韓W杯直前に左足中足骨の骨折を起こしたが、驚異的な回復を見せ、本番で活躍した。ベッカムヘアは一世を風靡した。2006年ドイツW杯でも、決勝トーナメント中に体調を崩し、途中交代後にチームはPK戦で破れた。ワールドカップの難しさを最も良く知る選手の1人である。
ファン乱入事件で、ベッカムは事態収集能力をみせた。窮地に立たされた代表チームに、余計な雑音が入ることを防いだ。精神的支柱としてベッカムを招集したイングランドチームの判断は正しかったように思える。
6月23日から始まる最終節で決勝トーナメント進出チームが確定する。日本代表とともに、イングランド代表の戦いぶりからも目が離せない。