訪問マッサージ規制強化は施術者側委員も同意

 本ブログに対するコメントを読んでいて、訪問マッサージに対する規制強化が既定路線になっていることがほとんど知られていないことに気づいた。今回、現状に対する認識を深めていただくために、あん摩マッサージ指圧、はり・きゅう療養費検討専門委員会の関係資料をあらためて提示する。

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 第2回社会保障審議会医療保険部会 あん摩マッサージ指圧、はり・きゅう療養費検討専門委員会配付資料 |厚生労働省の中にある資料 あ−3(PDF:189KB)を見ると、平成 24 年度あん摩マッサージ指圧、はり・きゅう療養費の改定について、次のような記載がある。

2.基本的考え方(案)


○ 療養費の額について、柔道整復療養費や国民医療費全体を上回り伸びている状況。
○ 療養費の支給状況をみると、施術回数や往療回数等に都道府県差があり、あん摩マッサージ指圧について往療料(※)の占める割合が大きくなっている状況にあることから、それぞれの施術の特性を踏まえた見直しを行う。
※ 歩行困難等、真に安静を必要とするやむを得ない理由等により通所して治療を受けることが困難な場合に、患家の求めに応じて患家に赴き施術を行った場合に支給。
○ その他、施術者に施術録の整備を求めるなどの運用見直しを行う。


 厚労省用語で「見直し」とは、規制強化・診療報酬の引き下げを指す。あん摩マッサージ指圧、はり・きゅう療養費検討専門委員会が開催が往療料(訪問マッサージ)見直しを目的としたことであることが、基本的考え方を読んだだけでわかる。
 保険者も不退転の覚悟で臨んでいる。関連エントリーでも紹介したが、高橋委員提出資料1(PDF:1467KB)高橋委員提出資料2(PDF:330KB)を見ると、保険者の怒りの強さが伺える。


 これに対し、第1回社会保障審議会医療保険部会 あん摩マッサージ指圧、はり・きゅう療養費検討専門委員会議事録 |厚生労働省を見ると、施術者代表側も訪問マッサージ見直しやむなしと考えていることがわかる。例えば、公益社団法人日本鍼灸師会会長の仲野彌和委員より次のような発言があった。

○仲野委員 よろしゅうございますか。時間が少しあるようですから、ついでと言うと恐縮ですけれども、ぜひと思うのですが、今、私どもは鍼灸という分野を抱えておりますから、特に医療人との接触といいましょうかね、しっかりとした形で、いいものを残していきたい。世界の中では、統合医療と言われる中で、日本の中で法制化されている唯一のといいましょうか、大事な分野だと思っています。今日の会議を見ていて、ありがたいと思うのですけれども、一方で、こんなレベルで話をしなければいけないことが、私どもはむしろ屈辱に近い形です。
 ですから、どうしたらいい鍼灸師を育て上げられるのかという希望で一杯なのですね。ですから、中・長期にかけることの話が多いのですけれども、療養費に関しても、もう少し適切に、いろいろなものについても、取り扱いをまともにしてほしいなと思うのは、例えば、今日、おもしろいなと思ったのは、10ページの近年発生している療養費の請求に関する問題というので、不正請求という部分のところ。この文章を見ていて、まさに恥ずかしいし、こんなことが実際に横行しているのだとすれば、これは取り締まらなければいけない。実は、これをやっている人は決まっているのですから。私どもでも幾つか仄聞しています。大阪からだとか、県から、こんなものが出ているけれども、どうだろうと。でも、これは今、打つ手がないのですね。私どもはこの人たちに対して何もできないのです。
 ですから、私どもは、規制をかけてもらっても構わない。それは協定で構わないし、どんな形でもいいから、お前たち、これをやれと言われるならやりますから、ぜひそれをお願いしたいと思います。そうしないと、保険者の方は払いたくないのは当たり前だし、私どもの方は、しっかりとやるから、しっかりした人には払ってくれと、こういう話ですから、そのことを明確にしたいと思います。これは今まで厚労省の側が、無資格者問題も一緒ですけれども、マッサージや何かで上がってきていませんけれども、今、マッサージに近いようなマッサージが無資格でどっといるわけです。これはまさにアメニティーですから、あっても構いません。このことだって、そのまま据え置いた結果がこれですから、やはり真剣にやってもらわないと、医療としての鍼灸を残せない。あるいは医療としてのマッサージも残せない。このことは、私ども、自分たちで自分の首を絞めなければいけないことは、幾らでも絞めても構わないですよ。本当にいいものが残っているのですから、それを何とかすれば、私は医療の発掘だと思うし、いいものを残せると思っていますから、ぜひ何とかお願いしたいなと思いますね。


 専門家団体としての統制がきかない現状を率直に認め、「規制をかけてもらっても構わない」、「ぜひそれをお願いしたい」と言わざるをえない施術者側代表に同情を禁じえない。
 厚労省、保険者、施術者側代表に加え、有識者代表もほぼ合意している訪問マッサージの規制強化は、間違いなく実施されることになる。同意書を記載する側の医療機関への規制も強まる。昨年行われた東北厚生局の集団的個別指導でも、安易に訪問マッサージの同意書を記載するなと、わざわざ念を押された。施術者の言うがままに同意書のサインをするということは許されなくなる。
 次回会議日程がまだ決まっていないようだが、そもそも平成24年6月に予定されていた療養費改定であり、少なくとも平成24年度内には結論が出ると判断する。その時点で、当院としても訪問マッサージに対しどのようなスタンスで対応するか意思統一を図ることにしたい。