医療の質の公表事業

 医療の質の公表事業が進められている。「厚生労働省:平成22年度医療の質の評価・公表等推進事業の申請受付について」(PDF:222KB)をみると、次のような記載がある。

2.本事業で実施すべき事業内容
臨床指標を選定し、協力病院の臨床データを収集・分析し、臨床指標を用いた医療の質の評価・公表を行い、評価や公表に当たっての問題点の分析等行うために必要な事項として、(1)から(6)までに揚げる事項を行うこととする。
(1)臨床指標に係る情報を収集・分析する人材の確保
(2)臨床指標を用いた医療の質の評価を行うためのア.からウ.までに掲げる事項
ア.以下の点に留意した臨床指標の選定
(ア) 10以上の臨床指標を選定すること。なお、選定する指標は全てプロセス指標又はアウトカム指標とし、患者満足度に関する指標以外のアウトカム指標を2以上含むこと。
(イ) 以下の例を参考に、患者満足度に関するアウトカム指標を含むこと


(中略)


(ウ)以下の例を参考に、例えば医療安全、手術等の病院全体に関する指標を含むこと


(中略)


(エ)以下の例を参考に、(イ)及び(ウ)以外の指標については、病院全体ではなく各疾患に関する指標を含んでも差し支えないこと。


(中略)


イ.ア.で選定した指標について、平成22年7月以降の各協力病院の臨床データの収集・分析。なお、臨床データの収集期間(例:1ヶ月ごと、3ヶ月ごと等)については各指標の特性を考慮して設定することで差し支えないこと。
ウ.イ.の収集・分析による数値を用いた医療の質の評価
(3)各協力病院間の連絡・調整
(4)(2)ウ.で評価した各協力病院の数値の公表。なお、公表にあたっては以下の点に留意すること。
ア.評価したものについては逐次速やかに公表すること。
イ.各協力病院ごとに個別に公表するのではなく、団体事務局においてまとめて団体ホームページ等のインターネット上に掲載すること。
ウ.(2)ウ.で評価した指標のうち、少なくとも5以上の指標については、各協力病院ごとの数値を公表すること。また、特段の問題がない限り全ての指標についても各協力病院ごとの数値を公表すること。
エ.各協力病院ごとの数値を公表しない指標については、少なくとも各協力病院の平均値を公表し、ベンチマーク(平均値と各協力病院の数値を比較)を行うこと。
オ.公表に係る社会的影響に配慮し、臨床指標の選定にあたって患者の重症度等の考慮が必要な場合等には留意事項として適宜掲載すること。
カ.アウトカム指標の数値等、医療法において広告可能とされていない事項について広告してはならないこと。
(5)臨床指標評価検討委員会の設置。なお、本委員会の構成員には外部委員を含むことが望ましいこと。また、本委員会においては、評価や公表に係る問題点の分析、改善策の検討を行うこと。
(6)国への実績報告及び事業報告。なお、事業報告にあたっては以下の点に留意すること。
ア.(2)イ.における各協力病院の臨床データを収集するにあたり、DPCデータ、電子カルテ等の利用等その具体的な方法について記載すること。なお、電子媒体を利用しない場合であっても、収集方法に関する特段の工夫等があれば記載すること。
イ.(4)エ.において各協力病院ごとの数値を公表しない指標については、その理由を分析・検討し、その結果を記載すること。


 本事業の背景について調べてみたが、よく分からなかった。内容を読む限り、診療報酬とのリンクは考えられていない。臨床データの公表を通じて、医療の質を向上させることを目標としているように思える。
 「10以上の臨床指標」という部分は評価できる。単一の臨床指標のみで、医療機関の質の評価はできない。「手術数でわかるいい病院ランキング」などという週刊誌得意の特集とは一線を画したものにすべきである。
 プロセス指標又はアウトカム指標を対象としているとのことで、スタッフ数、医療機器といったストラクチャー指標は対象となっていない。ただし、例示されている指標は、入院患者の転倒・転落発生率(分子: 1カ月間の転倒・転落件数、 分母: 1カ月間の入院患者延数)といったアウトカム指標ばかりである。プロセス指標を数値化するのは難しい。
 ホームページをみる限り、各医療団体は、前向きに厚労省の提起を受け止め準備を進めているようである。どのような臨床指標が選定されるかに興味がわく。