考察なき実態調査報告書

 厚生労働省のホームページに、回復期リハビリテーション病棟入院料において導入された『質の評価』の効果の実態調査報告書が掲載された。厚生労働省:第28回中央社会保険医療協議会診療報酬改定結果検証部会資料、平成20年度診療報酬改定の結果検証にかかる特別調査(平成21年度調査)報告について、資料(検−2−3)(PDF:1,004KB)が求める資料である。


 本報告書の調査目的は次のように記載されている。

 平成20 年4月の診療報酬改定により、回復期リハビリテーション病棟の要件に、試行的に質の評価に関する要素が導入され、居宅等への復帰率や、重症患者の受入割合に着目した評価が行われるとともに、病棟におけるリハビリテーションの実施状況を踏まえて、当該病棟における医師の専従配置が緩和されることになった。
 本調査は、この改定による影響を検証するため、平成21年7月1日時点で回復期リハビリテーション病棟の施設基準を地方厚生(支)局に届け出ている全国の全ての医療機関を対象として、回復期リハビリテーション病棟におけるリハビリテーションの提供状況や、入退棟時の患者の状況などについて把握すること等を目的として実施した。

 全体で109ページにも及ぶ膨大な報告書である。しかし、驚くことに、調査結果が羅列されているだけで、考察が全く見受けられない。在宅復帰率、重症患者率、重症患者回復率などが妥当だったのかどうか、検証されていない。さらに、本調査結果をもとに2010年度改定で、1人の入院患者あたり1日2単位以上(回復期リハビリテーション病棟入院料I)や1日6単位以上(リハビリテーション充実加算)というリハビリテーション提供要件、さらには休日加算要件が新たに導入されたが、結果をどのように解釈したか記載されていない。
 厚生労働省は、初めから検証などする気がなかった。成果主義を強引に導入したことに対する批判をかわすために、アリバイとして実態調査を企画した。報告書に載っている自由意見に対しても、誠実に回答しようとはしていない。真摯さに欠ける姿勢をあらためない限り、厚生労働省に対する不信感が消えることはない。