厚生年金関連施設、コンサートホールだけでなく病院も売却へ

 さだまさしが怒っている。

 新宿の東京厚生年金会館が今月末で閉館し、49年の歴史に幕を閉じる。同会館で行われたコンサートは約1万4500回。最多173回のステージに立った歌手・さだまさし(57)は「もう二度と『ホーム』と呼べるホールは出てこない」と別れを惜しむ一方で、日本の文化行政を「バカモノ」と批判した。さだは28日に同所で公演。29日の松山千春が最後になる。


(中略)


東京厚生年金会館 大ホール(当時2406席)にホテルや結婚式場などを併設した日本初の複合福祉施設として1961年に開館。改築を重ね現在は2062席。日本人初公演は森繁久彌さん(61年6月4日)。美空ひばりさんや吉永小百合ジェームス・ブラウンも。赤字補てんの税金投入の批判から、全国で廃止・民間売却が決まっている。本館はヨドバシカメラが120億円で落札しカメラ博物館などで利用予定。

http://hochi.yomiuri.co.jp/entertainment/news/20100327-OHT1T00084.htm


 大阪厚生年金会館の方は、急転直下、大ホールの存続が決まった。

 年金福祉施設の整理に伴い3月末に閉館する大阪厚生年金会館大阪市西区)を購入したオリックス不動産(本社・東京都)は24日、同会館の2400人収容の多目的大ホールを同規模のまま存続させる計画を発表した。同会館をめぐっては市民から存続運動が巻き起こり、大阪市は全国で初めて、都市計画で千席以上のホール機能の確保を義務付けた経緯もあるだけに、同市の平松邦夫市長は同日の記者会見で「市民とともに喜びたい」と声を弾ませた。

http://www.nnn.co.jp/dainichi/news/100325/20100325036.html


 愛知厚生年金会館(1,666名収容)は既に2008年10月31日に廃止され、分譲マンションが建設される予定となっている。ちなみに、愛知県勤労会館(定員1,488名)も今月末で閉鎖されることが決まっており、コンサートの名古屋飛ばしが危惧されている。


 厚生年金関連施設の売却を行っているのは、RFO施設機構(独立行政法人 年金・健康保険福祉施設整理機構)である。RFO機構は、2005年10月1日に設立された。300以上の施設を5年以内に廃止・売却することを目的としている。平成20年度実績及び平成21年度計画の概要等についてに、愛知厚生年金会館等の個別施設の落札結果の概要が記載されている。


 RFO機構が取り扱っている施設で最も問題となっているのは、社会保険病院・厚生年金病院である。

3.社会保険病院・厚生年金病院の出資


(1) 社会保険病院・厚生年金病院の出資及び管理・運営
 平成20 年10 月1日に、厚生労働省から63 の社会保険病院・厚生年金病院(併設される介護老人保健施設及び看護専門学校を含む。以下「社会保険病院等」)が出資されました。
 社会保険病院等については、地域医療の体制を損なうことのないよう、病院の機能維持に必要な施設整備を実施するなど適切に管理・運営を行っています。


(2) 社会保険病院等の譲渡に係る指示
 平成21 年3 月6 日に厚生労働大臣より社会保険病院等の譲渡に係る指示(以下「大臣指示」)が行われ、厚生労働大臣が選定した社会保険病院等について譲渡を行うこととなりました(現時点では、社会保険浜松病院が譲渡対象となっています)。
<大臣指示の概要>
社会保険病院等の譲渡に当たっては、年金資金等の損失の最小化を図ることに加え、地域の医療体制が損なわれないように十分配慮すること。
・ RFO は、厚生労働大臣が選定した社会保険病院等について譲渡を行うこと。
・ 譲渡の相手方は、地方公共団体、公益性のある法人又は医療法人とすること。
・ 入札に当たっては、地域医療の確保を図る観点も踏まえ総合的に判断することとし、地元の地方公共団体の意見を聴いた上で一般競争入札を行うこと。
社会保険病院等の譲渡後も維持されるべき医療機能を譲渡の条件とするに当たっては、地元の地方公共団体の意見も聴きつつ条件の設定を行うこと。


 社会保険病院・厚生年金病院には、地域医療の中核病院となっているところが多い。社会保険病院・厚生年金病院の国からの出資についてに対象となる病院名一覧がある。リハビリテーション医療分野で先駆的役割を果たしている病院が含まれている。
 民主党政権になった後、社会保険病院・厚生年金病院存続を目指し、昨年10月、独立行政法人地域医療機能推進機構法案を提出した。しかし、実質審議なしのまま、継続審議となっている。このままでは、2010年10月以降、社会保険病院・厚生年金病院の運営母体が不在となる。


 厚生年金関連施設には、民業圧迫、巨額赤字、官僚天下りなどの問題がある。しかし、マンション不況のなか、コンサートホールをつぶしてまで分譲マンションを建設する必要があるのか。医療崩壊が叫ばれている中、地域中核病院を存続の危機にさらして良いのか。文化や医療に対する政府・国会の姿勢が問われている。