胃管誤留置、X線でも確認困難な場合あり

 胃管誤留置事故が報道された。チューブ誤挿入で患者死亡 愛知県瀬戸市の陶生病院(2008年9月26日)より。

チューブ誤挿入で患者死亡 愛知県瀬戸市の陶生病院


 愛知県瀬戸市の公立陶生病院で3月、医師が胃に入れるはずの栄養チューブを誤って肺に挿入してしまい、男性患者が死亡していたことが26日分かった。同病院は既に医療ミスを認めて遺族に謝罪しており、近く損害賠償金1300万円を支払って和解する。


 同病院によると、3月11日に30代の男性医師が呼吸不全で入院中の同市の男性患者(75)に栄養剤を注入するため鼻からチューブを挿入した際に誤って肺に入れた。チューブは肺を突き破って左胸腔(きょうくう)に達しており、男性は敗血症を発症して8日後に多臓器不全で死亡した。


 エックス線画像で挿入場所を確認した際に胃にチューブがあると見誤ったことなどが原因という。同病院は「申し訳なく思っており、再発防止に努めたい」としている。


共同通信


 胃管誤留置事故は頻発している。同種の事故の時に、当ブログでも下記エントリーとしてとりあげた。


 欧米の論文を読んでいると、確認のためX線写真を必ず撮っている。しかし、それでも胃管誤留置が分からず、栄養剤を注入し、死亡等の重大事故に結びつく例が稀ながらある。スタイレット付栄養チューブで肺損傷を生じ、胃管先端が左上腹部に存在している場合、正面写では判断が困難である。残念ながら、本例もその種の事故だったと推測する。X線写真のダブルチェックをする、初回注入は白湯のみとするなどの対応が考えられるが、忙しい診療現場でそこまで精神的余裕はないのが現状である。
 求められる医療水準からして、避けられない不幸な事故だった。和解も済んでいる。刑事事件として立件してはいけない事例であると私は判断している。