名称類似薬誤投与事件続報
徳島県で起きた名称類似薬誤投与事件の続報。朝日新聞、電子カルテ、過去にも誤入力 筋弛緩剤誤投与の病院より。
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電子カルテ、過去にも誤入力 筋弛緩剤誤投与の病院
2008年11月20日
徳島県鳴門市の健康保険鳴門病院で、誤って筋弛緩(きんしかん)剤を点滴された男性患者(70)が18日に死亡した医療事故で、同病院は朝日新聞の取材に対し、過去にも電子カルテの入力ミスや誤表示のため、違う薬を投与しそうになったケースがあったことを明らかにした。同病院は再発防止策をとっていなかった。
同病院によると、医師がパソコン端末で入力する電子カルテを通じて薬品を発注すると、薬剤師の手元には薬品の名前と分量を示した紙しか出てこない。電子カルテを導入した04年7月以降、医師の入力ミスや誤表示で、誤った薬品名が薬剤師に伝達されたことが数回あったという。
同病院は、いずれも薬剤師が「分量がおかしい」と気づき、誤投与はなかったとしている。だが、電子カルテの表示システムの改良や、医師や薬剤師の意思疎通を強化するなど具体的な対策は取られなかった。
今回、抗炎症剤「サクシゾン」と筋弛緩剤「サクシン」を取り違えた原因の一つについて同病院は、薬品名を検索する時、入力した文字を含む全薬品名がパソコン画面に表示され、毒薬や劇薬かどうかの区別までは分からないシステムだったことを挙げている。
00年に同様のミスが起きた富山県の高岡市民病院は、薬品の検索システムを改善。毒薬の場合、毒薬の検索画面を開かないと処方できないようにした。また、薬剤師や看護師には、薬剤が間違っていないか医師に確認させているという。
財団法人・日本医療機能評価機構の調査では、鳴門病院を含め、登録している全国約550の医療機関のうち、類似した名前で薬剤を取り違えた事例は、調査を始めた04年10月から07年12月までに11件あった。医療過誤に詳しい森谷和馬弁護士(第二東京弁護士会)は「電子カルテの画面でサクシンが表示された時に、筋弛緩剤だと警告も出ていれば間違いに気づいたはず。ミスが起きることを前提に、食い止めるシステムを作るべきだ」と指摘する。
医療事故が起きると、当事者や医療機関の責任を追及する論調でニュースが流される。しかし、本記事は、「なぜ起こったのか」「どうしたら防げるのか」という視点で記載されている。全く同じ事件が過去にも起こっていたこと、システムエラーが問題であること、ミスが起きることを前提に食い止めるシステムを作ることが最も大事であることが、簡潔な文章でまとめられている。
名称類似薬誤投与事故はどの医療機関でも起こりうる。電子カルテ自体の機能を生かし、同種の事故を未然に防ぐことが求められる。厚労省は、全国全ての病院にシステム再点検を呼びかける緊急通達を出すべきではないかと考える。