理学療法士・作業療法士国家試験の合格者が発表された。合格率は、第43回理学療法士・作業療法士国家試験の合格発表についてに記載されている。一足早く発表された言語聴覚士の合格率は、第10回言語聴覚士国家試験の合格発表についてに載っている。
受験者数 | 合格者数 | 合格率 | |
---|---|---|---|
理学療法士 | 7,997 | 6,924 | 86.6% |
作業療法士 | 5,783 | 4,257 | 73.6% |
言語聴覚士 | 2,574 | 1,788 | 69.5% |
この10年間の合格率を追ってみた。なお、言語聴覚士の場合、1999年が第1回国家試験である。日本理学療法士協会資料、藤田保健衛生大学リハビリテーション学科内にある国家試験結果、言語聴覚士 国家試験情報 2008年度(第10回)を参考資料とした。
理学療法士 | 作業療法士 | 言語聴覚士 | |
---|---|---|---|
2008年 | 86.6% | 73.6% | 69.5% |
2007年 | 93.2% | 85.8% | 54.5% |
2006年 | 97.5% | 91.6% | 62.4% |
2005年 | 94.9% | 88.4% | 55.8% |
2004年 | 97.9% | 95.5% | 68.4% |
2003年 | 98.5% | 91.6% | 42.0% |
2002年 | 95.7% | 90.6% | 53.8% |
2001年 | 96.9% | 94.8% | 49.1% |
2000年 | 95.4% | 97.5% | 42.4% |
1999年 | 93.5% | 90.6% | 87.9% |
日本理学療法士協会資料をみると、次のことがわかる。昭和41年に第1回国家試験があり、昭和49年までは移行措置があった。この間の合格率はきわめて低く、概ね10%台であり、高くとも21.6%だった。以後、合格率は漸増し、昭和58年(1983年)の82.5%を最後として、90%台をキープしていた。今回の合格率86.6%は25年ぶりの低水準となる。
作業療法士合格率はさらに衝撃的である。理学療法士と比べ、この10年間低い水準だったが、今回は80%を大きく割り込み、73.6%となった。言語聴覚士とほぼ同水準となっている。
言語聴覚士の国家試験合格率は、当初より低く、第1回(1999年)を除けば、40〜60%台で推移していた。今回も同様の傾向である。
他の医療従事者国家試験合格率をみると、今年度は次のようになる。資料は、厚労省トピックスの医政局部分にある。なお、薬剤師のみは、医薬食品局にデータがある。
受験者数 | 合格者数 | 合格率 | |
---|---|---|---|
医師 | 8,535 | 7,733 | 90.6% |
歯科医師 | 3,295 | 2,269 | 68.9% |
薬剤師 | 13,773 | 10,487 | 76.1% |
看護師 | 51,313 | 46,342 | 90.3% |
放射線技師 | 2,447 | 1,789 | 73.2% |
臨床検査技師 | 3,997 | 2,947 | 73.7% |
歯科医師国家試験合格率は、毎年のように下がっている。歯科医師国家試験の合格率では、その理由として、次のように述べている。
歯科医師国家試験は、以前はほとんどの人が受かっていましたが、最近はどんどん合格率が下がってきています。
これは、後述する歯科医師過剰問題の影響が大きいのだと思いますが、ある程度の点数を取れば確実に受かっていた今までの「資格試験」から、上位何名までを合格にする「選抜試験」に変わってきていることは間違いありません。
ここ数年の合格率は75〜80%程度ですが、この合格率は今後どんどん下がっていく可能性が非常に高いと考えられています。
ちなみに、歯科医大生のバンドとして有名なGReeeeNの4人組中、3人が今年卒業した。うち2人が合格しており、合格率は66.7%と全国平均とほぼ同じだった。
高齢社会を見越し、理学療法士・作業療法士および言語聴覚士養成校は急激に増加している。公的医療費抑制の立場からみると、歯科医師と同様、合格者数をしぼってくる可能性が高い。おそらく、今後、薬剤師、放射線技師、臨床検査技師と同じく、70%台の合格率になると予測する。既に言語聴覚士、作業療法士はその水準となっている。
合格率が低い養成校は、生き残りが難しくなってくる。入学後学力や適性を見極めた上で、進級を許さないようになるだろう。また、医療機関にとっても、卒業後国家試験に合格できるレベルの学生でないと、安心して採用できなくなる。
リハビリテーション専門職を目指す学生にとって厳しい時代が到来している。