摂食機能療法対象拡大と胃瘻造設術等の減算規定見直し

 2016年3月4日、平成28年度診療報酬改定についてが更新され、告示・省令、通知が示された。膨大な資料のなかで重要と思われるものは、平成28年度診療報酬改定説明会(平成28年3月4日開催)資料等について内にある、平成28年度診療報酬改定説明(医科) III-1 通知その02III-1 通知その05、そして、III-1 通知その06である。
 今回は、摂食機能療法対象拡大と胃瘻造設術減算規定見直しについて検討する。


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 摂食機能療法対象者は明らかな拡大である。通知には、次のように記載されている。

H004 摂食機能療法
(1) 摂食機能療法は、摂食機能障害を有する患者に対して、個々の患者の症状に対応した診療計画書に基づき、医師又は歯科医師若しくは医師又は歯科医師の指示の下に言語聴覚士、看護師、准看護師、歯科衛生士、理学療法士又は作業療法士が1回につき30分以上訓練指導を行った場合に限り算定する。なお、摂食機能障害者とは、以下のいずれかに該当する患者をいう。
ア 発達遅滞、顎切除及び舌切除の手術又は脳血管疾患等による後遺症により摂食機能に障害があるもの
イ 内視鏡下嚥下機能検査又は嚥下造影によって他覚的に嚥下機能の低下が確認できるものであって、医学的に摂食機能療法の有効性が期待できるもの

 今回、イの項が追加されており、アかイかいずれかに該当すれば良い。なお、内視鏡下嚥下機能検査又は嚥下造影を実施しただけではダメで、摂食機能療法の有効性を期待できないものは対象外となる。


 経口摂取回復促進加算2(20点)が、今回追加された。経口摂取加算1(185点)の要件は、専従常勤言語聴覚士の要件が緩和された以外、変化はない。
 経口摂取回復促進加算1の対象が、「ア 他の保険医療機関等から紹介された患者で、かつ、鼻腔栄養を実施している者又は胃瘻を造設している者であって、当該保険医療機関において摂食機能療法を実施した患者」+「イ 当該保険医療機関で新たに鼻腔栄養を導入した患者又は胃瘻を造設した患者」であるのに対し、経口摂取回復促進加算2の対象は、「4月前までの3か月間に当該保険医療機関で摂食機能療法を開始した入院患者(転院及び退院した者を含む。)で、摂食機能療法の開始時に胃瘻を有し、胃瘻の造設後摂食機能療法開始までの間又は摂食機能療法開始前1か月以上の間経口摂取を行っていなかったもの(以下に掲げるものを除き、10例以上の場合に限る。)」とある。
 経口摂取回復促進加算1の対象が鼻腔栄養+胃瘻患者だったのに対し、経口摂取回復促進加算2の対象は、胃瘻患者のみとなった。除外規定を無視し、簡単にまとめると、胃瘻造設患者の「3割以上について、摂食機能療法を開始した日から起算して3月以内に栄養方法が経口摂取のみである状態」へ回復させていると、経口摂取回復促進加算2を算定できることになる。胃瘻からの経管栄養+楽しみのための経口摂取にとどまった者は回復したと判断されない。
 経口摂取のみの状態に回復できそうな患者に積極的に胃瘻を造設すると、加算がとりやすい。胃瘻を造設せず、経鼻栄養から直接経口摂取のみに回復させても反映されない。摂食機能療法の現場を理解せずに設定された加算となっている。
 

 胃瘻造設術・胃瘻造設時嚥下機能評価加算の減算要件が見直された。



 除外規定に、「意識障害等がある場合、認知症等で検査上の指示が理解できない場合、誤嚥性肺炎を繰り返す場合等」と「筋萎縮性側索硬化症、多系統萎縮症、脊髄小脳変性症又は6歳未満の乳幼児であって、 明らかに嚥下が困難と判断される患者」が追加された。
 また、経口摂取回復率35%以上達成が不可能な場合を見越し、多職種による術前カンファレンス+計画書作成と同意、という要件が設定された。多職種カンファレンスの要件は次のようになっている。

  • 医師要件:当該患者を担当する医師1名、当該手術を実施する診療科に属する医師1名、リハビリテーション医療に関する経験を3年以上有する医師、耳鼻咽喉科に関する経験を3年以上有する医師又は神経内科に関する経験を3年以上有する医師のうち1名の合計3名以上の出席を必須。
  • その他:歯科医師、看護師、言語聴覚士、管理栄養士などが参加することが望ましい。

 主治医+当該手術を実施する消化器科医師+嚥下評価を担当する医師(リハビリテーション科、耳鼻咽喉科、ないし、神経内科)の計3名という組み合わせは、妥当である。胃瘻造設を年間50件以上実施している医療機関では、この組み合わせによる多職種カンファレンスが普及するものと予想する。