後期高齢者特定入院料とリハビリテーション

 以前より、障害者施設等入院基本料の見直しについて、本ブログで言及してきた。中医協答申−特殊疾患療養病棟等の役割に着目した見直しというエントリーでも、特殊疾患療養病棟入院料と障害者施設等入院基本料に焦点をあてて、記述をしてきた。ここに、後期高齢者特定入院料という項目に関する記述がある。引用する。

3 後期高齢者特定入院基本料においては、算定対象から除かれる疾患や状態が別に定められているが、特殊疾患療養病棟入院料及び障害者施設等入院基本料の対象の見直しにあわせて、同様に対象の整理を行う。


4 対象となる疾患疾患の見直しについては平成20年10月1日施行とする。

3 後期高齢者特定入院料
* 改正案
後期高齢者特定入院料の対象外となる状態]
3 重度の肢体不自由児(者)(脳卒中の後遺症患者及び認知症の患者を除く。)、脊髄損傷等の重度障害者(脳卒中の後遺症患者及び認知症の患者を除く。)、重度の意識障害者、筋ジストロフィー患者又は神経難病患者等


 後期高齢者特定入院料とは、入院基本料に規定されている概念である。そこの注4に次のような記載がある。

注4 注1から注3までの規定にかかわらず、特定患者(高齢者医療確保法の規定により療養の給付をうける者(以下「後期高齢者」という。)である患者であって、当該病棟に90日を超えて入院する患者(別に厚生労働大臣が定める状態等にあるものを除く。)をいう。以下この表において同じ。)に該当するもの(第3節の特定入院料を算定する患者を除く。)については、後期高齢者特定入院基本料として928点を算定する。ただし、特別入院基本料を算定する患者については790点を算定する。


 厚生労働省より、平成20年度診療報酬改定に係る通知等についてという資料が提示された。診療報酬の算定方法の制定等に伴う実施上の留意事項について(保医発第03005001号)の別添1全体版PDFファイルページ14-17ページに一般病棟入院基本料に関する記述がある。別に厚生労働大臣が定める状態等にあるものという部分に関係する表を示す。

状態等 診療報酬点数 実施の期間等
1 難病患者等入院診療加算を算定する患者 難病患者等入院診療加算 当該加算を算定している期間
2 重症者等療養環境特別加算を算定する患者 重症者等療養環境特別加算 当該加算を算定している期間
3 重度の肢体不自由者脳卒中の後遺症の患者及び認知症の患者を除く。)脊髄損傷等の重度障害者(脳卒中の後遺症患者及び認知症の患者を除く。)、重度の意識障害者、筋ジストロフィー患者又は神経難病患者等(*1参照)  −  左欄の状態にある期間
4 悪性新生物に対する治療(重篤な副作用のおそれがあるもの等に限る。)を実施している状態(*2参照) 静脈注射、高悪性腫瘍剤局所持続注入、点滴注射、中心静脈注射、骨盤内注射、放射線治療(エックス線表在治療又は血液照射を除く。) 左欄治療により、集中的な入院加療を要する期間
5 観血的動脈圧測定を実施している状態 観血的動脈圧測定 当該月において2日以上実施していること
6 リハビリテーションを実施している状態(患者の入院の日から起算して180日までの間に限る。) 心大血管リハビリテーション、脳血管疾患等リハビリテーション、運動器リハビリテーション及び呼吸器リハビリテーション 週3回以上実施している週が、当該月において2週以上であること
7 ドレーン法若しくは胸腔又は腹腔の洗浄を実施している状態(*3参照) ドレーン法(ドレナージ)、胸腔穿刺、腹腔穿刺 当該月において2週以上実施していること
8 頻回に喀痰吸引・排出を実施している状態(*3参照) 喀痰吸引、干渉低周波去痰器による喀痰排出、気管支カテーテル薬液注入法 1日に8回以上(夜間を含め約3時間に1回程度)実施している日が、当該月において20日以上であること
9 人工呼吸器を使用している状態 間歇的陽圧吸入法、体外式陰圧人工呼吸器治療、人工呼吸 当該月において1週以上使用していること
10 人工腎臓、持続緩徐式血液濾過又は血漿交換療法を実施している状態 人工腎臓、持続緩徐式血液濾過 各週2日以上実施していること
  血漿交換療法 当該月において2日以上実施していること
11 全身麻酔その他これに準ずる麻酔を用いる手術を実施し、当該疾病に係る治療を継続している状態(当該手術を実施した日から起算して30日までの間に限る。) 脊椎麻酔、開放点滴式全身麻酔、マスク又は気管内挿管による閉鎖循環式全身麻酔  − 

*1 3の左欄に掲げる状態等にある患者は具体的に以下のような状態等にあるものをいう。
a 重度の肢体不自由者(平成20年10月1日以降は、脳卒中の後遺症の患者及び認知症の患者を除く。)及び脊髄損傷等の重度障害者(平成20年10月1日以降は、脳卒中の後遺症の患者及び認知症の患者を除く。)
 なお、脳卒中の後遺症の患者及び認知症の患者については、当該傷病が主たる傷病である患者のことをいう。
b 重度の意識障害
 重度の意識障害者とは、次に掲げる者をいう。なお、病因が脳卒中の後遺症であっても、次の状態である場合には、重度の意識障害者となる。
ア 意識障害レベルがJCS(Japan Coma Scale)でII-3(又は30)以上又はGCS(Glasgow Coma Scale)で8点以下の状態が2週以上持続している患者
イ 無動症の患者(閉じ込め症候群、無動性無言、失外套症候群等)
c 以下の状態に罹患している患者
 筋ジストロフィー多発性硬化症、重症筋無力症、スモン、筋萎縮性側索硬化症脊髄小脳変性症ハンチントン病パーキンソン病関連疾患(進行性核上性麻痺、大脳皮質基底核変性症パーキンソン病(ホーエン・ヤールの重症度分類がステージ3以上であって生活機能障害度がII度又はIII度のものに限る。))、多系統萎縮症(線条体黒質変性症、オリーブ橋小脳変性症、シャイ・ドレーガー症候群)、プリオン病、亜急性硬化性全脳炎及びもやもや病(ウイリス動脈輪閉塞症)
*2、*3 (省略)


 これまでは、3項の重度肢体不自由児(者)に該当していれば、除外規定を利用することができた。しかし、平成20年10月1日以降は、重度の肢体不自由児(者)から、脳卒中の後遺症患者及び認知症の患者を除かれる。一般病棟入院基本料を算定している病院にとっては、死活問題となりかねない。入院後90日以内に後期高齢者を退院させるための取組みが強化される。
 特殊疾患療養病棟入院料、障害者施設等入院基本料からも、脳卒中の後遺症患者及び認知症の患者が除かれた。医療療養病棟では、医療区分が低いと診療報酬が下がるため受け入れが拒否される。


 この国で、脳卒中認知症になることは、懲罰に値することのようである。後期高齢者の場合、必要性があっても一般病棟で入院を継続できない。
 除外規定の中で、最も使用しやすいのが、6項のリハビリテーションを実施している状態(患者の入院の日から起算して180日までの間に限る。)である。廃用症候群に対するレセプトコメント審査が強化されてはいるが、意識的にリハビリテーションサービスを提供することが求められる。