「看護必要度 第2版」を読んで

看護必要度―看護サービスの新たな評価基準

看護必要度―看護サービスの新たな評価基準


 注文していた「看護必要度 第2版」が今日届いた。「重症度・看護必要度(B得点)」=「日常生活機能指標」を回復期リハビリテーション病棟の重症度評価に使用することが妥当かどうかという視点で、内容を批判的に吟味した。


 「看護必要度」に関係する評価としては、2003年に完成した「看護必要度Ver.3」、ICU入室患者の基準として作成された「重症度」基準、そして、ハイケアユニット評価として用いられる「重症度・看護必要度」基準の3種類がある。

 「看護必要度」とは、科学的根拠に基づく要員管理のツールである。「看護必要度」を正確に把握し、適切な看護師配置を評価するために用いられる。「看護必要度Ver.3」には、あわせて23のチェック項目がある。
 「看護必要度」研究は、1996年度に始められ、2002年までに患者2万1,743人に対する調査が実施され、延べ患者22万5,148人日分のデータが収集された。看護業務分類のコード化、アセスメント項目の抽出、24時間1分間タイムスタディ調査が順次実施された。調査病院は、「看護の質が高い」病院を対象に行われた。
 「看護必要度」調査では、原型評価法というアセスメント方式が採用された。これは、さまざまな状況の組合せを考え、それぞれどの程度時間がかかっているのかというパターンに基づいてアセスメントするやり方である。判断基準が明確であり、誰が評価しても同じ結果が下せるように工夫された。「看護必要度評価者指導者研修」が行われ、100点満点のみが合格とされるという厳しい試験が課せられた。

 ICU入室者の「重症度」基準は、2002年に厚労省からの依頼により実施された「看護必要度導入に関する研究」の研究成果をもとに作成された。この検討には、全国すべてのICUから収集された患者データ及び医師の入室判断基準が用いられた。「処置」に関して9項目、「看護の集中度」については5項目が選ばれた。患者スクリーニングに際してのカットオフ値は、ICUの実態を反映するような政策的な観点から決定された。

 ハイケアユニットを対象とした「重症度・看護必要度」基準の開発は、2003年度に行われた。当時、ICUがあり、より厚い人員配置を行っているハイケア病棟をもっている28病院に協力が依頼された。ICU患者、ハイケア病棟患者、急性期の2対1基準をもっている病棟という3種類の病棟の比較が行われた。その結果、モニタリング及び処置等の15項目(A得点)、患者の状況等の13項目(B得点)の計28項目が選択された。


 本書には、3種類の評価の信頼性・妥当性検証に関する記載はない。しかし、明確な判断基準があり、評価指導者に関する研修が行われていることを考慮すると、信頼性については問題ないと推測する。また、1分間タイムスタディ調査を実施していることなどから、急性期病院における「看護必要度」に関して妥当性もあると判断する。地道に真面目に行われた研究であるという印象を強く受ける。


 しかし、いずれの基準も主体は看護職である。どの程度看護師にとって負担がかかるかという視点でデータが集められている。患者の障害像を把握し、自立を目指した援助をしていくリハビリテーション医療の視点からみると、違和感を感じる。また、調査対象となった病棟は、「看護の質が高い」急性期病院のICU、ハイケアユニット、そして急性期病棟であり、回復期リハビリテーション病棟や療養病棟を対象としたデータは収集されていない。したがって、ハイケアユニットを対象とした「重症度・看護必要度」の一部分(B得点)のみを取り出して、「日常生活機能指標」と名前を変え、回復期リハビリテーション病棟の重症度評価に使用することには無理があると言わざるをえない。


 次回、FIMとの比較を通して、「日常生活機能指標」の問題点について検討をする。