FIM(Functional Independence Measure)には、以下の18項目が含まれる。
# 運動項目
# 認知項目
- 理解
- 表出
- 社会的交流
- 問題解決
- 記憶
一方、「重症度・看護必要度(B得点)」=「日常生活機能指標」には次の13項目が含まれる。
- 床上安静の指示
- どちらかの手を胸元まで持ち上げられる
- 寝返り
- 起き上がり
- 座位
- 移乗
- 移動方法(主要なもの一つ)
- 口腔清潔
- 食事摂取
- 衣服の着脱
- 他者への意思の伝達
- 診療・療養上の指示が通じる
- 危険行動への対応
FIMにあるが、「日常生活機能指標」に相当する項目がないものは次の8項目である。
清拭、排泄動作、排尿コントロール、排便コントロール、移乗(トイレ)、移乗(浴槽)、階段昇降、記憶。なお、「日常生活機能指標」危険行動への対応は、FIMの社会的交流と問題解決両方の概念が含まれる。
「日常生活機能指標」には、FIMと異なり、排泄、入浴、階段昇降に関係する項目が全くない。
基準が大きく異なる項目もある。例えば、「日常生活機能指標」食事摂取では、食止めや絶食になっている場合は、介助が発生しないので「介助なし」とするルールになっている。
一方、FIMにないが、「日常生活機能指標」にある項目は次の5項目である。
床上安静の指示、どちらかの手を胸元まで持ち上げられる、寝返り、起き上がり、座位。
床上安静の指示は、医師の指示書やクリティカルパスにおける指示と位置づけられている。リハビリテーション分野では、安静度よりは活動度の指示が重視される。
どちらかの手を胸元まで持ち上げられる、という項目は機能障害評価に相当する。脳卒中重度片麻痺でも、この項目は「できる」という評価になる。
寝返り、起き上がり、座位の3項目は、基本動作として、リハビリテーション分野でもよく評価される。
ADLの代表的評価であるFIMと「日常生活機能指標」は同様の項目が含まれている。しかし、障害をもった患者の自立を目指すという目的を考慮すると、代表的ADL項目である排泄、入浴、階段昇降評価が皆無という点は致命的欠陥といえる。「日常生活機能指標」しか使わない回復期リハビリテーション病棟は、排泄自立に取り組まなくても構わないことになる。
また、床上安静の指示は、リハビリテーション評価になじまない。積極的に離床をはかり、運動療法を行っていくことが医師の指示で禁止されているのなら、回復期リハビリテーション病棟の適応からはずれる。
機能障害の一面しか評価できないどちらかの手を胸元まで持ち上げられるという項目は、リハビリテーション分野では無意味である。機能障害を総合的に評価したいのなら、脳卒中ならSIAS、脊髄損傷ならASIAなど信頼性・妥当性が確認された評価表を使用すべきである。
FIMなどリハビリテーション分野で繁用されている評価法と、「日常生活機能指標」とは、似て非なるものである。回復期リハビリテーション病棟重症度評価として使用を強制されるのなら、リハビリテーション医療は歪むとしか言いようがない。