会議や多職種連携におけるICT活用

 196回社会保障審議会介護給付費分科会(web会議)資料にて、【資料8】令和3年度介護報酬改定に関する審議報告(案)が出された。興味深い改定項目が提示されているが、その中から、今回は会議や多職種連携におけるICT活用について取り上げる。

 

 194回社会保障審議会介護給付費分科会(web会議)資料【資料5】感染症や災害への対応力強化に、これまでの分科会における主なご意見として次のような記載がある。

 新型コロナウイルス感染症対策の関係で、加算要件等における研修や会議のオンライン化等が認められているが、研修は引き続きICTの活用ができるようすることや、加算要件等となる会議等でもオンラインを認めることを前提に、見直しを行うべき。

 感染予防の観点からも、今後も、ICTを活用し、非対面で対応できる業務はICT化を進めるべき。多職種の連携・情報共有の場面や、サービス当者会議等の場面においても、ICTの活用を進めるべきではないか。

 

 【資料8】介護人材の確保・介護現場の革新にも、別の視点からICT活用に関する記載がある。代表的なものは以下のとおりである。

○  ICTを活用し多職種で情報共有するに当たっては、個人情報への厳格な対処が求められており、情報の保管場所等、その部分は十分に担保しながら、より使い勝手のよい機器やソフトの活用を検討してはどうか。

○  在宅におけるサービス担当者会議等について、利用者の状態及び介護度、サービス内容に変更がないような場合にはテレビ会議で可能とするなど、柔軟な対応ができるようにするべき。

○  ICTの活用に置き換えることで、ハードルを不用意に下げ、不要な算定をうまないよう留意することも必要ではないか。また、ICTやオンラインを活用する場合に、移動に要する費用が低減されるのであれが、単位数の適正化を併せて検討していくことも必要。

 

 介護給付費分科会の議論を経て、【資料8】令和3年度介護報酬改定に関する審議報告(案)では、ICT活用に関する様々な提案がされている。特に注目すべきは、44ページにある次の記載である。

④会議や多職種連携におけるICT の活用

【全サービス】

 運営基準や加算の要件等において実施が求められる各種会議等(利用者の居宅を訪問しての実施が求められるものを除く)について、感染防止や多職種連携の促進の観点から、以下の見直しを行う。
ア 利用者等が参加せず、医療・介護の関係者のみで実施するものについて、「医療・介護関係事業者における個人情報の適切な取扱のためのガイダンス」及び「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン」等を参考にして、テレビ電話等を活用しての実施を認める。

イ 利用者等が参加して実施するものについて、上記に加えて、利用者等の同意を得た上で、テレビ電話等を活用しての実施を認める。

 

 厚生労働分野における個人情報の適切な取扱いのためのガイドライン等内に、医療・介護関係事業者における個人情報の適切な取扱いのためのガイダンス(平成29年4月14日通知、同年5月30日適用、令和2年10月9日改正)[PDF形式:897KB]「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン」 (平成17年3月31日通達、平成19年3月30日改正、平成20年3月31日改正、平成21年3月31日改正、平成22年2月1日改正、平成25年10月10日改正、平成28年3月31日改正、平成29年5月30日改正)[PDF形式:2021KB]があるが、難解でありどのような注意が必要かがわかりにくい。 

 

 医療分野にも同様の課題がある。オンライン診療に関するホームページ|厚生労働省が介護分野におけるICT活用の参考になる。このHPにあるオンライン診療の適切な実施に関する指針(平成30年3月)(令和元年7月一部改訂)を見ると、遠隔医療(情報通信機器を活用した健康増進、医療に関する行為)は図のように分類される。

 

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 上記のうち、オンライン診療(医師-患者間において、情報通信機器を通して、患者の診察及び診断を行い診断結果の伝達や処方等の診療行為を、リアルタイムにより行う行為)とオンライン受診勧奨(具体的疾患にり患している旨の伝達や医薬品の処方等は行わない)は、オンライン診療の適切な実施に関する指針(平成30年3月)(令和元年7月一部改訂)の対象となり、医療情報安全管理関連ガイドライン(医療情報の取扱いに関わる厚生労働省総務省及び経済産業省の3省が策定している医療情報の安全管理に関するガイドラインの総称)に準拠する必要がある。この中に、介護保険分野でも参考にするように指摘された厚労省ガイドラインが含まれる。なお、遠隔健康医療相談については、本指針の対象となっていないが、「遠隔健康医療相談においても、診断等の相談者の個別的な状態に応じた医学的判断を含む行為が業として行われないようマニュアルを整備し、その遵守状況について適切なモニタリングが行われることが望ましい」となっている。

 オンライン診療の実施に当たっては、利用する情報通信機器やクラウドサービスを含むオンライン診療システム及び汎用サービス等を適切に選択・使用することが求められる。汎用サービスを利用する場合の方が注意点が多いため、本格的にオンライン診療を実施するためには専用のオンライン診療システムを利用した方が良い。最低限、オンライン診療を計画する際には、患者に対してセキュリティリスクを説明し、同意を得なければならない。少なくとも、情報漏洩、不正アクセス、なりすましなどのリスクが説明事項に含まれる。

 

 オンライン診療における指針をふまえると、介護保険分野でICTを活用した多職種連携の会議を行う際にも同様の対策が求められると予想する。事前に十分な説明のうえ同意書をとること、会議のたびに参加する医療および介護関係者、本人・家族の確認をし、記録に残すことなどが最低限求められる。使用する機器は、オンライン診療ほど厳格なものは求められず汎用サービスで構わないだろうが、セキュリティ対策を十分とったものに限られる。少なくとも、医療および介護関係者が使う機器は安全性が担保された事業所所有のものとし、個人所有のデバイスは使用不可とされるだろう。

 現在、新型コロナウイルス感染拡大が顕著となっており、多職種連携の会議が開催困難となっている。入院中の患者の場合には、要介護認定に関わる基本調査や、介護施設の実態調査も行うことが難しくなっている。厚労省から具体的な案が提示されるのを待たず、ICTを活用した各種会議や多職種連携に関するマニュアル整備を行い、介護報酬が提示された後に修正するような柔軟な対応が適当である。