CHASEとVISIT

 第197回社会保障審議会介護給付費分科会(web会議)資料にて、【資料】令和3年度介護報酬改定に関する審議報告(案)が提示され、来年度介護報酬改定の輪郭が見えてきた。今回は、この中で、自立支援・重度化防止の取組の推進の部分を取り上げられているCHASEとVISITについてまとめてみた。

 

 【資料】令和3年度介護報酬改定に関する審議報告(案) の25〜37ページに、「3.自立支援・重度化防止の取組の推進」に関する記述がある。この中で、CHASE、VISITという用語が頻出用語として繰り返し出てくる。例えば、33〜34ページに次のような記載がある。

(2)介護サービスの質の評価と科学的介護の取組の推進

① CHASE・VISIT 情報の収集・活用と PDCA サイクルの推進

【ア・イ:施設系サービス(介護療養型医療施設を除く)、通所系サービス ★、多機能系サービス★、居住系サービス★ ウ:全サービス★】

 介護サービスの質の評価と科学的介護の取組を推進し、介護サービスの質の向上を図る観点から、以下の見直しを行う。

 ア 施設系サービス、通所系サービス、居住系サービス、多機能系サービスについて、CHASE の収集項目の各領域(総論(ADL)、栄養、口腔・嚥下、 認知症)について、事業所の全ての利用者に係るデータを横断的に CHASEに提出してフィードバックを受け、それに基づき事業所の特性やケアの在り方等を検証して、利用者のケアプランや計画に反映させる、事業所単位での PDCA サイクルの推進・ケアの質の向上の取組を評価する新たな加算を創設する。その際、提出・活用するデータについては、サービスごとの特性や事業所の入力負担等を勘案した項目とする。加えて、詳細な既往歴や服薬情報、家族の情報等より精度の高いフィードバックを受けることができる項目を提出・活用した場合には、更なる評価を行う区分を設ける。

 

 CHASE、VISITについては、この問題について集中的に議論をした第185回社会保障審議会介護給付費分科会(web会議)資料(2020年9月14日)の【資料】自立支援・重度化防止の推進 の14ページにある介護関連データベースの構成という図がわかりやすい。

 

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 要介護認定情報・介護レセプト等情報は、介護保険総合データベース(介護DB)として運用されている。さらに、通所・訪問リハビリテーションの質の評価データ収集等事業の情報、通称"VISIT"が2018年度から、上記を補完する高齢者の状態・ケアの内容等の情報、通称"CHASE"が2020年度からデータベースに追加され運用されていることがわかる。なお、両者とも厳密に言えば英語の頭文字をつなぎ合わせた用語(頭字語)ではない。特にVISTの方は牽強付会としか言いようがない略語である。

 VISITは、埼玉県立大学のHP内にある厚生労働省 老人保健健康増進等事業採択実績、平成30年度実績、訪問・通所リハビリテーションのデータ収集システムの活用に関する調査研究事業に、CHASEは、科学的裏付けに基づく介護に係る検討会|厚生労働省科学的裏付けに基づく介護に係る検討会 中間とりまとめに、導入に至るまでの経緯がまとめられている。

 

 それぞれの項目の概要について示したのが、以下の図である。

 

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 なお、VISITの方は、リハビリテーションマネジメント加算(IV)の要件となっていたが、算定数はきわめて少ない状況だった。理由はVISIT入力に関する負担があまりにも大きかったためと厚労省は反省している。

 

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 今回の介護報酬改定において、厚労省はCHASE・VISITの項目が見直されることになった。第197回社会保障審議会介護給付費分科会(web会議)資料内にある【参考資料3】 審議報告案にかかる参考資料 には、次のような図が示されている。

 

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 見直しされたのはVISITの項目だけのようであるが、CHASEの項目もあわせて見ると、結局のところ、ICFに沿った評価(健康状態、心身機能、ADL・IADL、参加、背景因子)を行い、運動療法を主体としたリハビリテーション、栄養改善、口腔ケアを実施し、認知症に対するアプローチもあわせて行うことが介護保険分野で求められているように思えてくる。【参考資料3】 審議報告案にかかる参考資料 にも次のような図が示されている。

 

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 厚労省は、介護保険分野でもビックデータを集めたうえで政策提言をすることを目論んでいる。項目が減ったといっても現場の入力作業はかなり面倒である。しかし、ビックデータ収集の流れは逆戻りすることはないことをふまえ、データ収集を積極的に行い、フィードバックされたデータをもとに現場の業務改善を行うくらいの気概が必要なのかもしれない。