なみはやリハビリテーション病院における新型コロナウイルス感染症拡大要因

 昨日、なみはやリハビリテーション病院における新型コロナウイルス感染症拡大に関する報道がされた。

 

 元になった資料は、大阪市:新型コロナウイルス感染症について(電話相談含む) (…>健康・医療>感染症・病気に関すること)にある、なみはやリハビリテーション病院における新型コロナウイルス感染症院内発生に関する現地調査支援報告についてhttps://www.city.osaka.lg.jp/kenko/cmsfiles/contents/0000490/490878/namihaya.pdfについてである。

https://www.city.osaka.lg.jp/kenko/cmsfiles/contents/0000490/490878/namihaya.pdf

 

 COVID-19患者発生状況は次のように報告されている。

 感染者は、病院スタッフ71名、出入り業者3名、入院患者59名の計133名で、うち、有症状者は99名74%となっている。PCR検査対象者全体の陽性率は41%である。最も陽性率が高かったのは、3階病棟入退院患者で90%だった。スタッフでは3階病棟看護師71%と最も高く、次いでリハビリスタッフの陽性率64%だった。

 回復期リハビリテーション病棟である3階病棟全てと2階病棟の一部にCOVID-19患者が入室している一方、4階障害者病棟はCOVID-19患者は2名発生したのみだった。

 

 感染が持ち込まれたルートは断定困難としたうえで、院内感染が拡大した要因が次のようにまとめられている。私が重要と判断した部分を赤字かつ下線で示した。

  •  原疾患の影響で、本疾患の発症の把握が困難であり、探知の遅れがあった可能性がある。
  •  サージカルマスクや消毒用アルコールなどの医療資材の不足もあり、スタッフにおける患者に接する前後での基本的な感染予防策が不十分となっていた箇所が存在した可能性、特に、ケアやリハビリ等、同じ病棟内で患者間を横断する手技や施術があった際に感染予防策が徹底されておらず、スタッフが患者間の感染を媒介した可能性がある。
  •  病棟でのリハビリテーション施術の際の接触に伴うものや、診療や清掃、社会福祉資源等の調整のために病棟横断的に対応を行うスタッフが患者間やスタッフ間の感染を媒介した可能性がある。
  •  リハビリテーション室等の中央での施術やケアが感染を媒介した可能性もある。
  •  スタッフ間での感染拡大の要因としては、密に過ごす空間(食堂、休憩室、ロッカー、スタッフステーション)において、食事や飲水の際にマスクを着用せずに会話をする等の濃厚接触があった可能性がある。

 さらに、回復期リハビリテーション病棟である2、3階と比較すると、リハビリテーション介入のない4階障害者病棟は明らかに感染のリスクが少なかったと思われることより、今回の感染伝播にはリハビリテーションの施術が寄与していた可能性は否定できない、と再度言及されている。

 リハビリテーション医療関係者にとっては、衝撃的な調査報告書であると言わざるをえない。

 

 

 リハビリテーション医学会がまとめた「リハビリテーション医療における安全管理・推進のためのガイドライン第2版」においても、次のような指摘がされている。

 リハビリテーション医療の対象者は感染症に罹患しやすく、重篤化しやすい可能性が高いと考えて対応する必要がある。

 そして、療法士は訓練室のみではなく、医療機関内の様々な場所において治療を提供することがある。このため、病原微生物を医療機関内の広範囲に伝播させる危険性をもっている。

 これらのことから、リハビリテーション医療は医療関連感染に深く関連していると考えるべきであり、十分な感染対策を実施することが推奨される。 

 

 今回の調査報告書をみる限り、基本的な感染予防策がなされていなかった状況で、リハビリテーションを通常どおり実施したことが院内感染を蔓延させてしまったという可能性が高い。反面教師とすべき事例である。

 一般社団法人 回復期リハビリテーション病棟協会のHPには、新型コロナウイルス感染対応事例(更新版)6.4 役員病院その1や、新型コロナウイルス感染対応事例(更新版)6.4 役員病院その2などの具体的な対応策が例示されている。緊急事態宣言は解除されたが、再び新型コロナウイルスの感染が拡大する可能性があると考え、警戒を怠らず準備をしておくことが必要である。