被災地におけるリハビリテーション医療再建
東北関東大震災における地域の医療機関の被災状況が少しずつ明らかになっている。
仙台市内で回復期リハビリテーションを担ってきた病院のうち、東北公済病院宮城野分院も甚大な被害を被っていることが分かった。
また、東北公済病院宮城野分院(宮城野区)の建物が壊れる恐れが出てきたため、12日午前、患者30人を市バスで同病院(青葉区)に搬送した。
http://mytown.asahi.com/areanews/miyagi/TKY201103120488.html
回復期リハビリテーション病棟がある東北厚生年金病院、整形外科系の患者のリハビリテーションを行っていた仙塩総合病院に関しては、次のように報道されている。
宮城野区の東北厚生年金病院は、断水や停電、変電設備の損傷のため、医療機器が使用できない状態が続く。約380人の入院患者の退院、転院を余儀なくされている。
エレベーターも使用不能で、病院内の移動にも影響が出ている。順次、患者を救急車に乗せて、電気、水道が通じている青葉区や山形県内などの医療機関に搬送した。
予約のあった患者への投薬に対応しているが、医薬品の供給が不十分で、3日分しか処方できない。八島信男事務局長は「入院患者の食事も1日2食で、まきで調理している。早く病院機能を復旧させたい」と語る。
(中略)
多賀城市の仙塩総合病院は東日本大震災で津波の被害に遭い、一時孤立状態となった。現在も停電、断水が続く中、転院も思うように進まず、震災後、20日午前までに12人の入院患者が亡くなった。病院を運営する医療法人宝樹会の鈴木寛寿理事長は「寒い中で家族の面会も少なく、患者のストレスは大きい。亡くなった方々には気の毒なことをした」と苦悩する。
津波で建物は1階部分まで浸水し、地下の電源や自家発電設備が使えなくなった。当時、病院には200人の入院患者がいたが、水が引いた12日午後まで外部との行き来ができなかった。
http://www.kahoku.co.jp/news/2011/03/20110321t73010.htm
病院の窮状が報道されてから仙台市や利府町の病院、介護老人保健施設などが患者の受け入れを開始。18日ごろから転院が本格化したが、現在も52人の患者が入院している。発電設備など施設の復旧は進んでおらず、患者をケアする上で不安定な状況が続く。
石巻地域で回復期リハビリテーションの受け皿となっていた石巻港湾病院も著しい被害を受けた。
津波で甚大な被害を受けた宮城県石巻市の石巻港湾病院。4階の食堂や廊下に、点滴のチューブをつないだ高齢患者がぐったりと横になっている。同病院は被災後に電気、ガスが途絶え、他の病院に入院患者約120人を受け入れるよう打診したが断られた。津波で周囲は「海」となり3日間孤立状態だった。
北海道や東京の系列病院から支援物資が徐々に届くようになったが、電気、水道、ガスは使えない。全体の1割以上にあたるスタッフ約40人が行方不明の中、医師、看護師らは懸命な治療を続けている。同病院の間山文博さん(50)は「院内の高齢者は衰弱が激しく、がんなど重病を抱える患者への治療も満足に行えない」と窮状を訴えた。
http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20110318-OYT1T00101.htm?from=y10
数少ないリハビリテーション医療提供施設が、大震災でさらに減少した。当院を含め、残された医療機関も決して無傷ではない。脆弱となったリハビリテーション医療の再建を図る必要がある。急性期病床を効率的に運用するためにも、リハビリテーション病棟が後方機能を果たすことが求められている。考えられる方法はいくつかある。
まず、医師不足・看護師不足を原因として病床稼働を低下させている病院に対し、マンパワーを投入する方法である。地域の中核的機能をもっている病院でもスタッフ不足で病床を閉鎖しているところが少なくない。その中で、県南の公立刈田総合病院は、人手を確保し、この4月から回復期リハビリテーション病棟を開設する予定となっている。このことは、マンパワーさえあれば稼働病床増加は可能であることを示している。具体策として、大震災で機能喪失した病院から医療職を異動させることで人手を確保できないかと考えている。全国から看護職やリハビリテーション専門職の長期的支援があれば、この案はより現実味を増す。
残ったリハビリテーション施設が回転率をあげることも重要である。ただし、現時点では自宅損壊やガソリン不足による介護事業所の機能低下があり、退院できる環境を作ることが困難になっている。
日本リハビリテーション医学会や全国回復期リハビリテーション病棟連絡協議会では、リハビリテーション患者の受け入れに関し、情報収集を始めている。親戚がいる地域への転院なら、十分検討に値する。
震災後の不自由な生活が長期化する中で、震災関連疾患が増加することが危惧される。高血圧や糖尿病が悪化し、脳血管疾患が増えるのではないかという恐れがある。リハビリテーション医療が真価を発揮するのはこれからである。