リハビリテーション病棟患者、当院に避難

 昨日、東北厚生年金病院を訪れた。ライフラインが途絶しており、自家発電があと1日持つかどうかという状態だった。暖房は当然なく、断水状態となっていた。施設の中は散乱し、建物連結部分の継ぎ目は大きく開いていた。しかし、電話も通ぜず、実情が仙台市内ではほとんど知られていない状況だった。TVのテロップでは、このような状態に関わらず、「軽症のみ受け入れ可」といったような誤った情報が流されていた。
 医療機能喪失に伴い、計400名以上の入院患者の落ち着き先を決める必要が生じていた。軽症患者と医療必要度の高い重症患者を中心に、なんとか退院や転院させることができたが、百数十名の患者が行く先が決まらないまま残っていた。患者の食事は1日2回のみ。職員も不眠不休で働いていたが、1日1回程度、おにぎりのみという状況だった。殺気立った雰囲気が病院内にみなぎっていた。
 東北厚生年金病院は、20年以上前から仙台のリハビリテーション医療の拠点となっている。ふだんから何かとお世話になっていることもあり、残っているリハビリテーション病棟患者14名を急遽当院で引き受けることにした。本日、仙台市救急隊に応援に来ている島根県浜田市と神奈川県伊勢原市の救急車を使って計4名、さらに、座っていることができる患者10名がバスで搬送された。患者誤認をしないように、アームバンドで名前を確認しながら、回復期リハビリテーション病棟に収容した。ベッドがなく、ディルームで休ませざるをえない患者もいたが、なんとか暖房が効き、食事を提供できる環境におくことができた。
 ご家族への連絡も十分できない状態での転院であり、要介護の方からは医療情報が十分とれない方もいた。また、津波の被害にあい、ご家族自体が被災者として避難している状況という深刻な事態となっていることがあらためて分かった。
 明日からは、PT室の一部も使って、自宅に戻ることがすぐできない方を収容することにしている。かつて経験したことがない状態で、今、自分たちができることは何かを考えながら医療を行っている。