地域連携パス転院基準とリハビリテーションの適応

 地域連携パスに関して、計画管理病院の脳神経外科Drに送付したメールをご紹介する。

 本日は失礼いたしました。
 会議のあと、しばらく他の先生と地域連携パスにおけるリハビリテーション適応について論議をしました。その結果、地域連携パス転院基準の明確化が必要という結論に達しました。この基準を満たしていれば、申し込み用紙は簡潔にでき、計画管理病院の負担を軽くすることが可能です。
 ただし、転院基準に当てはまらなくても、リハビリテーション適応がないと言いきることはできません。複雑な問題を抱えている患者にこそ、専門的リハビリテーションを提供する必要がありますし、やりがいもあります。一方、基準を下げすぎると、積極的にリハビリテーションを行うべき患者に手が回らないことになります。病棟管理を考えながら、リハビリテーション適応を決めざるをえないというジレンマが連携先病院側にあります。


 現時点における当院の適応について、まとめてみました。貴院からの転院の際、ご参照いただければ幸いです。


 管理病院に入院する脳卒中患者を回復期リハビリテーション病棟転院の必要性で次の4つに分けます。

  • 軽症群(直接自宅退院群)
  • 積極的リハ適応群(地域連携パス対象群)
  • 境界域群(個別相談群)
  • 回復期リハ適応外群


(1)軽症群(直接自宅退院群)
 ADLが自立している群です。入院の必要性は通常なく、機能障害(上肢機能障害、言語機能障害など)に対して通院でリハビリテーションを行う群です。ただし、独居で家事動作訓練が必要、居住地近くにリハビリテーションを継続できる医療機関がない、などの理由があれば、回復期リハビリテーション病棟で受け入れることがあります。


(2)積極的リハ適応群(地域連携パス対象群)
 当院では、軽症群でない場合、次の基準の全てに該当していれば、地域連携担当者の判断だけで受け入れOKにしています。おそらく、地域連携パスの転院基準もこの水準になるのではないかと予想しています。

  • 病前のADLが屋内歩行自立以上。
  • 経口摂取が可能となっている。
  • 覚醒している(JCS1桁)。


(3)境界域群(個別相談群)
 上記(1)、(2)、および、下記(4)のいずれにも該当しない群です。年齢が65歳未満の場合は(4)の該当者でも、ここに含めています。65歳未満という基準に根拠はありません。ただし、経験則から言っても、道義的な問題から言っても、若年者はどんなに重症でも引き受ける方針にしています。
 境界域群は、申し込み用紙1枚で判断することが困難であり、個別にご相談していただくことになります。電話で直接ご連絡いただくか、詳細に診療情報提供書を記載して送付していただきたいと存じます。


(4)回復期リハ適応外群
 次の基準のいずれかに該当している場合、積極的な回復期リハビリテーション適応がないと判断し、転院をお断りしています。

  • 病前より重度要介護: 起居動作要介助、自力での経口摂取不可能(要介護4-5相当)。介護施設入居者や訪問診療管理患者の一部がこの群に含まれます。
  • 発症後1ヶ月以上経った時点で覚醒レベルがJCS2桁以上: 例外は、クモ膜下出血と頭部外傷です。両者とも時間が経ってから覚醒レベルがアップすることがあります。
  • 発症後1ヶ月以上経った時点で重度嚥下障害が持続: この群も例外があります。脳幹部梗塞後の球麻痺による嚥下障害の場合には、摂食嚥下リハビリテーション療法の適応があります。一方、脳血管障害再発に伴う仮性球麻痺で、唾液誤嚥の状態(吸引を頻回に行う必要がある場合など)では、経口摂取困難な状態にほぼ留まります。
  • 全身状態が不安定: 人工呼吸器装着中、繰り返す肺炎、専門的な治療が必要な臓器不全(心不全、呼吸不全、腎不全、肝不全など)や悪性腫瘍では、リハビリテーション料以外が包括となっている回復期リハビリテーション病棟では対応困難です。


 あらためて記載してみると、境界域群(個別相談群)と回復期リハ適応外群の区別がきわめて曖昧です。本来なら、リハビリテーション医が計画管理病院に赴いて、適応の有無について判断することが一番確実なのですが、そこまでの余力はありません。患者を担当している療法士の意見を聞いてみるのも一つの方法だと思います。いずれにせよ、適応があるのにリハビリテーションを施行しないことの方が問題です。お悩みになった場合には、遠慮せず電話でご相談していただきたいと存じます。


 今後、計画管理病院の先生方の意見を参考にしながら、転院基準の明確化と申し込み用紙の統一を進めていきます。なにとぞよろしくお願いいたします。