回復期リハ病棟入院料1と2の混在算定認めず
m3.comに回復期リハビリテーション病棟と廃用症候群に関するニュースが載った。全国回復期リハ協 回復期リハ病棟入院料の算定は施設単位で実施 回復期リハ病棟入院料1と2の混在算定認めずより、引用する。なお、廃用症候群に関する部分は、明日触れることにする。
全国回復期リハ協 回復期リハ病棟入院料の算定は施設単位で実施 回復期リハ病棟入院料1と2の混在算定認めず
記事:Japan Medicine
提供:じほう
【2008年3月26日】
全国回復期リハビリテーション病棟連絡協議会(石川誠会長)の2008年度診療報酬改定説明会が22日、東京都内で開かれ、10月から実施される回復期リハビリテーション病棟の質の評価試行で、施設基準の評価を病棟単位で行うのか、あるいは施設単位で評価するのか、複数の会員施設から質疑が出された。
厚生労働省保険局医療課の堀岡伸彦主査は、「同一施設内で、回復期リハビリテーション病棟入院料1と同2を混在して同時算定することは認められない」と回答した。参加者からは、回復期リハ病棟について、例えば、3病棟のうち1病棟でも回復期リハ病棟入院料1の施設基準がクリアできれば、算定できるのかとの質問だったが、厚労省は、同入院料1と2の算定の混在は認めないとした。
今回の改定では、回復期リハ病棟における医師の専従要件を外して専任制にした。そのため回復期リハ病棟と外来の兼務が可能になるほか、整形外科医がリハ医を兼務することも可能になる。また、回復期リハ病棟では、地域連携診療計画の評価項目として追加された脳卒中について、急性期病院から脳卒中患者を引き受けた場合、4月以降は、地域連携診療計画退院時指導料の算定が可能になる。
その際には、急性期病院と回復期リハ施設が異なる開設主体であることが必要だが、堀岡主査は説明会で、市立病院から市立リハビリテーション病院に転院する場合は算定を認めるとした。急性期病院からの連携パスには、日常生活機能評価の記入が求められ、それが回復期リハ病棟でのリハ提供のスタートになる。
複数の回復期リハビリテーション病棟を持つところは、診療報酬改定への対応として、在宅復帰率が高い病棟と低い病棟とを分け、減収を少しでも緩和しようと考えていたはずである。押し迫ったこの時期になって、「同一施設内で、回復期リハビリテーション病棟入院料1と同2を混在して同時算定することは認められない」という解釈を厚労省は示してきた。大規模な回復期リハビリテーション病棟が、在宅復帰率を上げるために患者選別に走ると、その影響は極めて大きい。
石川会長の講演に関する記事が続く。
石川会長 「廃用症候群」の取り扱いを厳密に
一方、石川会長は回復期リハ病棟の改定について、「専従医配置の緩和などから、回復期リハ病棟を増やしていこうというインセンティブを感じる改定だ」と評価した。
試行される回復期リハの質の評価について、在宅復帰率60%という条件は回復期リハであればクリアできて当然の数値だとの認識を示した。一方で、居宅の範ちゅうから老人保健施設が除外されたことにも触れ、「老健を入れると、在宅復帰率の要件が90%にされる可能性があった」と述べた。特に、09年度は回復期リハ病棟の特別調査の実施が決定しており、「その際には日常生活機能評価の測定指標の妥当性も検討することになる」と指摘した。
全国回復期リハビリテーション病棟連絡協議会が毎年行っている調査より、退院経路のデータを示す。
年度 | 自宅 | 転院・転棟・老健 | 急変・死亡 |
---|---|---|---|
2001年度 | 64.8% | 28.4% | 6.7% |
2002年度 | 72.5% | 21.8% | 5.7% |
2003年度 | 67.3% | 25.4% | 7.2% |
2004年度 | 66.7% | 26.1% | 7.0% |
2005年度 | 66.3% | 27.3% | 6.5% |
2006年度 | 65.3% | 28.1% | 6.5% |
2007年度 | 65.8% | 27.1% | 7.1% |
2002年度を除き、自宅退院率は概ね65%である。
2006年度調査に、病棟別退院経路という図がある。この図をみると、自宅退院率60%を超えているのは約2/3である。福祉施設への退院が4.2%あることを考慮すると、自宅退院率60%をクリアできない病棟が、調査協力病院中約3割あると推定する。「在宅復帰率60%という条件は回復期リハであればクリアできて当然の数値だ」という認識は、全国の回復期リハビリテーション病棟の実態を反映したものではない。全国回復期リハビリテーション病棟連絡協議会幹部の願望とみる。
では、自宅退院率が低い病棟は、質が低い病棟なのだろうか?2007年度調査より、原因疾患別の退院先データと入院時・退院時Barthel Indexを示す。
退院先 | 脳血管系1 | 脳血管系2 | 脳血管系3 | 脳血管系4 | 整形外科系 | 廃用症候群 | その他 | 合計 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
自宅 | 67.6% | 61.8% | 52.1% | 59.9% | 75.1% | 52.3% | 75.0% | 65.8% |
院内他病棟 | 3.7% | 3.5% | 6.8% | 2.8% | 3.9% | 8.7% | 2.9% | 4.7% |
転院 | 9.0% | 13.0% | 13.4% | 12.7% | 4.0% | 9.6% | 4.2% | 8.2% |
老健・福祉 | 12.5% | 13.0% | 13.4% | 12.7% | 4.0% | 9.6% | 4.2% | 8.2% |
急変・死亡 | 7.2% | 8.6% | 7.9% | 13.4% | 4.2% | 12.9% | 4.9% | 7.1% |
BI | 脳血管系1 | 脳血管系2 | 脳血管系3 | 脳血管系4 | 整形外科系 | 廃用症候群 | その他 | 合計 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
入院時 | 48.4 | 48.4 | 35.4 | 40.6 | 58.7 | 40.5 | 63.7 | 49.2 |
退院時 | 69.9 | 68.6 | 55.9 | 61.9 | 79.2 | 54.2 | 82.6 | 69.2 |
リハ効果 | 21.5 | 20.2 | 20.6 | 21.3 | 20.5 | 13.7 | 18.9 | 20.0 |
(注)
脳血管系1: 脳血管疾患で算定日数上限150日のもの
脳血管系2: 上記脳血管系1以外で算定日数上限150日のもの(脊髄損傷、頭部外傷、くも膜下出血のシャント術後、脳腫瘍、脳炎、急性脳症、脊髄炎、多発神経炎、多発性硬化症などの発症または手術後2ヶ月以内の状態)
脳血管系3: 高次脳機能障害を伴った重症脳血管障害で算定日数上限180日のもの
脳血管系4: 上記脳血管系3以外で算定日数上限180日のもの(重度の頚髄損傷、頭部外傷を含む多部位外傷の場合)
整形外科系: 大腿骨、骨盤、脊髄、股関節または膝関節の骨折の発症または術後2ヶ月以内の状態(算定日数上限90日のもの)
廃用症候群: 術後もしくは肺炎などによる廃用症候群(算定日数上限90日のもの)
その他: 大腿骨、骨盤、脊髄、股関節または膝関節の神経・筋・靭帯損傷後1ヶ月以内の状態(算定日数上限60日のもの)
脳血管系3(高次脳機能障害を伴った重症脳血管障害)と廃用症候群では、自宅退院率がそれぞれ52.1%、52.3%と60%をはるかに下回っている。一方、整形外科系は自宅退院率が75.1%となっている。
入院時BIでみると、脳血管系3が35.4であるのに対し、整形外科系は58.7と20点以上の開きがある。両者のリハ効果はそれぞれ20.6、20.5と差がない。廃用症候群はリハ効果13.7と低い。
疾患群でみるだけで、自宅退院率にこれだけ差がある。整形外科系疾患が多い回復期リハビリテーション病棟は、入院時ADLが高く、その結果、退院時ADLも高くなり、自宅退院率は上がる。それに対し、高次脳機能障害を伴った重症脳血管障害はリハビリテーションをリハビリテーション効果が高いことが示されているにも関わらず、退院時ADLが低いために自宅退院率は目標の60%に届かない。
家族介護力が自宅退院率に影響するという文献報告は多い。しかし、全国回復期リハビリテーション病棟連絡協議会の調査では、全く触れられておらず、どの程度の影響があるか不明である。
「在宅復帰率60%という条件は回復期リハであればクリアできて当然の数値だ」という発言は、科学的根拠に基づくものとは言えない。 少なくとも、退院時ADL、家族介護力で層別化し、病棟間の比較をしない限り、回復期リハビリテーション病棟の質の評価は困難である。