入院医療等の調査・評価分科会における早期リハに関する論議

 第3回入院医療等の調査・評価分科会が、2013年3月21日に行われた。第3回入院医療等の調査・評価分科会議事次第 |厚生労働省内にある入−2(PDF:5,918KB)が議論用資料である。本日、第3回診療報酬調査専門組織・入院医療等の調査・評価分科会議事録 |厚生労働省が公開された。この中で、早期リハビリテーションに関する注目すべき議論が展開されている。

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 国は、社会保障・税一体改革を目指すなかで、2025年を目標として医療・介護機能の再編を進めようとしている。


 入院医療の機能分化・強化と連携をキーワードに、急性期への医療資源の集中投入を進めながら、亜急性期、慢性期医療の再編を進めるというのが既定路線となっている。


 入院医療の適切な推進に向けた課題と論点というスライドが、資料の100ページにある。


 入院医療について論じる本分科会の対象が、I.高度急性期・一般急性期、II.長期療養、III.亜急性期等、IV.地域特性、V.有床診療所の5つであることがわかる。


 リハビリテーション医療に関わる医療者として、注目すべき部分は以下の記述である。

I.高度急性期・一般急性期について
 今後、急性期病床の担う役割の明確化を行うために、1)急性期病院における平均在院日数の短縮、2)患者の状態に応じた受け入れ、 3)入院医療の提供に関する連携や在宅復帰の推進、4)急性期病棟における早期からリハビリテーション等の検討を行うことについて、どう考えるか。


 議事録を読むと、厚労省担当者が次のような説明をしている。

 続きまして49ページ目以降がリハビリテーションのお話で、スライドの50、51は、早期のリハビリテーションを実施することでデータがいいということで早期リハビリテーションを評価したのが24年改定でございます。
 スライドの52番は救急搬送の状況でして、高齢者がふえてきていて特に軽症、中等症がふえているというのが右側の棒グラフ。
 スライドの53は、救急搬送される患者の中には肺炎といったような感じの患者さんがふえてきているのも確か。
 54番のスライドは、やはりお年寄りは栄養問題ですとかそういった問題があって、右の下の絵ですけれども、これはちょっとわかりにくいのですけれども、長期臥床すると褥瘡ができてしまうこともあって、早期離床ですとかリハビリによる介入が必要になってくるということでございます。
 スライドの55番は、左側ですけれども、論文ですけれども、入院前と入院後では急性期病院の場合はADLが必ず下がっているといったデータ、右側はリハビリテーション等の介入を行うことによって状態が維持されているといったようなデータでございます。
 これを踏まえましてスライドの56番の論点ですけれども、今後分科会で議論するべき内容としてはこの論点のところにありますが、急性期病院の平均在院日数の問題、患者像、患者の状態に関する問題、連携ですとか在宅復帰の推進に関する問題、最後に急性期病棟におけるリハビリテーションの実施といったところについて御検討いただくことになるかと思います。


 スライド50は、のFigure 2である。Very Early Mobilization(VEM)群が、Standard Care(SC)群と比し、より早期に50m歩行が自立するということが示されている。


 厚労省担当者の説明を受け、各委員が次のような補強をしている。

○武久委員 (略)
 もう一つ、亜急性と回復期のところで提供された資料を見ておりますと、亜急性も急性からの回復を期待して入るところ、在宅復帰を目指すところ、回復リハもそうで、では回復リハはリハビリして亜急性はリハビリしないかというと、ほとんど95%がリハビリしているということになると、この2つにジャンルを分けておく必要があるのかを多分提案されているのだと思いますけれども、これは明らかにリハビリが必要だということはまさにそのとおりですので、リハビリは外出しということにすれば同じように回復期の病棟だという定義をすることもできます。だから急性期、24時間以内にやるべしと、私も賛成ですけれども、それをしながらでは急性期で2カ月も3カ月もいていいのかというと、リハビリの治療が急性期の特徴ではないわけですから、やはりできれば急性期処置を終われば早目に退院してリハ専門にやるところに機能を移すのが適切で、急性期リハの方向にどんどん進むことが果たして医療にとっていいかというと問題だと。例えば平均在院日数が10日であれば、500床の病院であればとにかく1日50人の入院がある。1週間で350人の人に対してどのような急性期リハをするのか、一体何人のスタッフが要るのかと考えると、とてもではないけれども急性期でリハを行うことを一生懸命やることを追求するよりは、できるだけ急性期の手術とか処置が終わったら早くリハビリのあるような回復期に移すほうが当然効率的だと思います。そういったことも含めて議論していかれたらどうかと思います。

○高智委員 これも武久先生の意見に関連してですが、今、最後に先生が言われましたように、できるだけ入口の滞留時間を短くということ、これは賛成でございます。ただ、急性期病院における早期からのリハビリテーションにつきましては50ページの図が非常にわかりやすいと思いました。アメリカ心臓財団作成によるグラフを見ますと、発症後速やかにリハビリ対応を図ったグループとそうではなくて一般的なケアに当たっただけのグループとの間には明らかに有意な差が見てとれるわけでございます。医療サービスの迅速提供という視点からも脳卒中発症後、早期に開始するリハの有用性は明らかだと感じました。特に補助なし歩行が50メートル間で可能という成果の実例表示は非常にわかりやすく理解が進む点でも好材料だと思います。私どもといたしましては急性期からの早期リハビリについては実施することを前提として、明確な目標を据えて、この明確な目標といいますのは、今、武久先生がおっしゃったような内容ももちろん含んでいる趣旨ですが、検討のステップを積み重ねていくべきものと思います。その際には現行急性期病院と位置づけております7対1、10対1の早期リハにおける評価のあり方につきまして、多少応用問題的に掘り下げた議論あるいは検討がなされてしかるべきでないかとも思っております。
 一つの方法論でございますが、7対1の受け皿として早期リハビリとOT、PTをセットにするといった形で看護配置のあり方を検討する等の手法が講じられることも一つの方法として考えられるのではないかと思います。もちろん相手方の専門職能団体等が存在する話でもございまして、誤解のないよう事務局にも関心を持っていただくとともに、上手にリードしていただければありがたいと考えております。

○佐柳委員 超早期リハについて私も今の御意見に賛成なのですけれども、実際にもう救急で入院したその日から開始すると非常に速やかに退院まで持っていくことが可能です。1週間でも、あるいは在院日数が7対1の場合14日というところですね。仮にもしそれほどリハビリがその間途絶えるようなことがあったら、多分もう立ち上がれないような状態になると思います。やはり超早期に開始するということは急性期の必須要件だと思います。


 多様な問題を抱えた高齢者の急性期医療においてリハビリテーションは不可欠であることは、厚労省も分科会委員もほぼ同意している。問題はどのような形で早期リハビリテーションを普及させるかということになる。
 厚労省が想定する高度急性期医療においては、在院日数の大幅な短縮が至上命題となっている。入院と同時にリハビリテーション介入を行うことが目指される。武智委員の述べたとおり、リハビリテーションスタッフの病棟配置が急性期医療機関の一つの要件となる可能性がある。
 急性期医療機関におけるリハビリテーション専門医の需要が高まることが予想される。2012年度診療報酬改定において、リハビリテーション初期加算は、リハビリテーション科の常勤医師が処方する場合に限られている。専門医制度改定が進められるなかで、Doctor's fee の議論が再燃することが予想される。リスク管理をしながら、より積極的な急性期リハビリテーションを行うためのシステムづくりがリハビリテーション専門医の重要な課題となる。
 一方、疾患別リハビリテーション料に細分化したことが早期リハビリテーションの妨げとなっている。短期間の臥床でも容易にADLが低下する予備能力の低い高齢者に対応した規定は、脳血管疾患等リハビリテーション料にある廃用症候群である。しかし、入院当日に廃用症候群の病名でリハビリテーションを処方することは、査定の対象となっている。
 議事録に次のような記載がある。

○武久委員 安藤先生の今の話です。支払基金国保連合会ですけれども、安藤委員には賛成なのですけれども、ある特定の県で恣意的な減点が行われている。例えば八十何歳以上だったら、要するに療養病床とかそういうところはCTとリハビリができたかで、あとは全部丸めですので削るところがないです。高齢者であれば軒並みリハビリをばさっと削ってくるところが全国で数件あります。そういうところに対しては疑義解釈表の範疇に、きちんと算定日数の範囲内にも入っているにもかかわらず削ってくる。これは本来と違うのですけれども、安藤さんがおっしゃったので、ここで言うつもりは全くありませんが、そういうものは医療課としては、やはり全国で公平に統一して基準によって行っていかないと、あるところだけがそういうのは公平に欠けるところがあるので、そういうことがございましたらぜひ全国の基準で公平にやることもまたお願いしていただけたらと思います。


 回復期リハビリテーション病棟に勤めている医師が次のように嘆いていた。85歳を超える高齢者だと一律6単位以上のリハビリテーションを削るなどの審査がされる、大腿骨頚部骨折は実質6単位が上限となっている。回復期リハビリテーション病棟充実加算が設定された経緯が無視されている。
 早期リハビリテーションの普及のためには、一定条件を満たした施設、例えば、リハビリテーション専門医常勤、一定の経験を有する療法士数確保、チーム医療の実施、在院日数などの要件を満たしているところだと、対象疾患に関する医師の裁量権を大幅に拡大するなどの対応が必要ではないかと考える。この中で最も厳しい条件は、リハビリテーション専門医の要件である。残念ながら、リハビリテーション専門医が常勤配置されている急性期病院は、日本では希少価値にすぎない。