ealry supported discharge(ESD)の効果

 ”脳卒中治療ガイドライン2009”のリハビリテーションに関する章を、”2004”と比較しつつ読み始めている。
 「1-1 脳卒中リハビリテーションの流れ」で大きく変わったのは、ealry supported discharge(ESD)の部分である。

 海外では、急性期治療に早期から退院支援を加えると(ealry supported discharge)、在院日数の短縮に加えて、ADLやQOLの向上が認められ(Ia)、さらに長期的効果もあることが報告されている(Ib)。


  次のような附記がついている。

 急性期治療に早期から退院支援を加えることは、入院期間の短縮など医療費の削減につながるが、後方連携がしっかりと整備されていなければ十分な効果は望めない。わが国と異なる社会保障制度を有する国々で検討された結果を、取り入れることについては注意が必要である。


 「在院日数の短縮に加えて、ADLやQOLの向上が認められ(Ia)」に関する参考文献としては、Langhorne P et al:Early supported discharge services for stroke patients: a meta-analysis of individual patients' data. Lancet 2005;365:501-506Langhorne P, Holmqvist LW; Early Supported Discharge Trialists.:Early supported discharge after stroke.J Rehabil Med. 2007 Mar;39(2):103-8.が紹介されている。後者の方がより具体的な記述が多く、読みやすい。

The greatest benefits were seen in the trials evaluating a co-ordinated multidisciplinary early supported discharge team and with patients with mild-moderate disability.


 ESDにはいくつかのタイプがあるが、中でもPT・OT・ST・医師・看護師・ソーシャルワーカーなどの専門家がチームを作り、定期的に協議をしながらサービスを提供するタイプが最も効果があがっている。また、発症後1週間目の最初のBarthel Indexが45/100を超える軽度〜中等度群で効果があったという解析となっている。最終的に、通常群では50%がADL自立だったのに対し、ESD群では55%が自立だったという結果となっている。


 日本で同じような取り組みを行っているところとしては、長野県松本市相澤病院の例しか思い浮かばない。なお、同病院の原寛美先生が、総合リハビリテーション 2009年12月号でESDに関するより詳しい解説をしたうえで、次のようにまとめている。

このシステムをわが国に導入し標準化するには、急性期リハビリテーションシステムから在宅リハビリテーションシステムスタッフの整備までを行う必要があるため、ハードルはかなり高く実践例はまだ僅少であるが、脳卒中リハビリテーションシステムの整備が治療成績向上に繋がることを高いエビデンスで支持していると言える。


 訪問リハビリテーションを含む在宅支援チームというのは、魅力的なオプションである。
 現時点では、回復期リハビリテーション終了後の患者の中でも、通院や通所サービスを利用できないより重症の患者を対象に訪問リハビリテーションは行われている。今後、早期リハビリテーション直後に在宅に退院した人を対象に、自宅で濃密なリハビリテーションサービスを提供するという新たな流れが生まれてくる可能性がある。